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14トピックス「策定・運用推進メンバー」を組織し、従業員や地域の商工会議所、取引先などとコミュニケーションを図ることで、サプライチェーン全体にわたる共通認識を構築する必要がある。また、BCPに定めた各項目の発動基準も別途検討しておかなくてはいけない。「初動対応の後、顧客・協力会社への連絡のほか、地域貢献活動などやるべきことは多い。BCPを運用するサイクルは、自社事業の理解とBCPの検討にはじまり、策定したBCPを企業文化として定着させ、定期的に自社の現状と照らし合わせて診断・維持・更新し常に最適化する流れになる」と眞崎氏は語る。このたびの東日本大震災が企業の事業継続に対する認識を変えたのは、その被害規模がまさに想定外のものであったためだ。眞崎氏は「BCPは一定レベルのリスクを想定して対策を立てるもので、一般には想定外のことは起こらないものとして整理されてしまい、対策など立てない状況にあった。あまりに高いリスクを想定して訓練を繰り返しても、周囲に不安を与えるだけという見方もあったほどである。今だからこそ想定リスクのレベルは適正かどうかがシビアに問われるようになった」と企業の変化を示唆する。中小企業庁が出している「中小企業が緊急事態を生き抜くために」というガイドラインでは、『体制や対策は決めたところでどのような地震が来るかはまったくわからないので、実際にはあってないようなものだ』と考える経営者の危機意識を例に、『事業継続計画はそれぞれの企業の経営者が自ら考えなければ意味がないし、従業員がその内容を理解していなければ役には立たない』と示している。眞崎氏は、この中小企業庁のガイドラインを基に「BCPはガイドラインの手順に沿ってチェック項目を検討すればいいというものではない。BCPで定めるべき内容は企業ごとに異なるほか、継続的な見直しと従業員への周知や教育・訓練が必要となるため、どの企業にも通用する完璧なBCPなどは存在しない。経営者自らが自助、共助、公助の3点から自社の緊急時のシナリオやステップを考えていくしかない」と、経営者自らがBCP策定に参加し、主導的に取り組んでいくことの重要性を説いた。まずは自社の現状把握から事業継続と向き合うBCPの普及が日本で遅れていた背景には、中小企業向けの事業継続というテーマを得意とするコンサルタントが少ないことや、事業継続に関するセミナーに参加しても実際に自社に帰ってBCP策定に取り組めるケースが少ないことが挙げられる。眞崎氏はこれらの問題点を指摘し「コンサルタントを見つけたからといって、任せきりで策定したBCPも有効なものとは言えない。BCPの多くの部分は自社で策定することができるため、まずは自ら自社の現状把握に努めてBCP策定に取り組み、技術的な部分について専門家を活用していくといった手段で事業継続と真剣に向き合ってほしい」と呼びかけた。印刷出版研究所発行「印刷新報」より