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24VistaPrintのWebToPrintAmazon.comで買い物をすると、パッケージの中に、このようなチラシが入ってくる。「今なら名刺作成が大変お得です!250枚で通常2,400円が今なら100円!」。このチラシを見たときは、「日本にもVistaPrintが上陸したか」と思った。VistaPrintは数年前に米国展示会報告で取り上げたWebToPrintで急成長している印刷会社だ。この会社は米国市場で大半の売り上げをあげているにもかかわらず、オランダに本社を置き、米国に工場がなく、日本には法人すらない。VistaPrintが狙う市場は、SOHOやマイクロビジネス企業を狙いAmazon.comとの共同マーケッティングなどによって、ネットユーザーを中心にその市場を広げている。同社は、2010年度PrintingImpression誌Top10にランクインし、北米で4番目に成長している印刷会社である。2011年度の売上げは8.17億ドルで22%の伸び。Nasdaqに上場していて、印刷会社としては株価が高く、時価総額は印刷業界では6位だ。縮小している印刷市場の中で何故VistaPrintは快挙を続けることができるのかを調べて見たい。印刷企業のジレンマNAPLのTruncale博士は、顧客の選択と集中をすることにより、印刷業者側の「取引コスト」を低減させ、営業効率を上げることにより、印刷業者の業績を改善できると提言する。しかし、多くの設備投資で巨大な印刷設備を抱えているため、それを回し続けなければ「負の資産」国際委員会■北米印刷事情レポート(2011年10月〜12月)と化してしまう。儲からない仕事でもつい流しこんでしまう事になる。博士が提唱する「顧客の選択と集中」は消耗戦を回避するための策だが、この悪循環は簡単に脱却できるものではない。「大量生産」を前提に組み立ててある印刷産業のビジネスモデルから、売上げ減少は簡単に許されなく、打つ手が狭まれてしまい、八方塞になってしまうのだ。そこで、VistaPrint社の取り組みが、印刷業の根本を揺るがすようなDisruptive(破壊的)なビジネスモデルであるのかも知れない。ロングテールを狙うVistaPrint2004年にデジタルライフスタイルを提唱するWIRED誌の編集長であるChrisAnderson氏が「LongTail」という題の記事を掲載し大きな反響を呼んだ。AmazonやEbayなどのビジネスモデルがその典型例で、「商品あたりの販管費が安いので、売り筋ではない商品をたくさん揃えることにより大きな収益を生み出す」という論理だ。今までは、統計学の「べき乗分布」の中で、上位の20%が80%の儲けをもたらすことが常識であった。しかし、ネットの時代になると、「取引コスト」を低減することができるようになったため、これまで見過ごされてきた80%の小さなニッチ商品を効率よく販売することが可能となり、大きな利益を得られるようになった。Anderson氏は、書籍、DVD、デジタル配信音楽、など商品を事例にあげ論理を展開しているが、印刷産業に当てはめるとどうなるであろうか。印刷産業のビジネスモデルが大量生産のために組み立ててあるため、「長い頭」の部分の約650億ドル規模の市場のみである。しかし、大きな案件の数は少なくなり、「長い頭」の部分はますます短くなる。一方「長いシッポ」の部分は比較的に過当競争にさらVistaPrintの売り上げ推移