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26VistaPrintのマーケッティング戦略同社のマーケッティング支出は売上げの約22%計上している。印刷業界の常識では考えられない金額でネット印刷通販の中でも突出している。同社はLTV(生涯価値)マーケッティングが基本で、一度開拓した顧客を囲い込みリピートオーダーを確保していく戦略である。主に名刺で顧客を引き付け1社の新規顧客を獲得するのに約22ドルから25ドルを使う。Amazonで購入すると「名刺が無料!」というチラシが入ってくることは前述した。このような積極的なマーケティング活動により2011年度だけでも740万の新規顧客を獲得している。同社のサイトをアクセスすると、無料で名刺を印刷することができる。送料は別なので、日本で名刺を作成すると送料込みで実際は859円(米国では3.99ドル)となる。オーストラリアで印刷され、シンガポールから発送される。先のセミナー報告者もVistaPrintに名刺を発注したが、貴方も試して見ては如何でしょうか。(その後のVistaPrintからの商品の紹介対応も凄い)無料名刺の裏面にはVistaPrintの広告も入り、新規顧客の約20%が口コミや名刺の裏面を見た人だという。「名刺が無料!」を中核としたブランドマーケッティング戦術は成功している。同社のウェブサイトの集客数は群を抜き、年間のユニークビジター数は約4400万人である。VistaPrintが無料の名刺にこだわって、顧客を引き付ようとする理由はいくつかある。最も大きな理由は、名刺に記載される情報そのものが貴重な顧客データとなることだ。名前、企業名、住所などがあれば、かなり高度なデータベースマーケッティングが可能となる。もうひとつは、クロスセルだ。名刺に記載される情報は、封筒、レターヘッド、ハンコ、アドレスラベルなどにも使うことが可能。無料名刺を編集したあと、チェックアウト時に、かならず「レターヘッドはいかがですか」「住所ラベルは必要ないですか」などと聞いてくる。新規顧客を獲得した後は、既存客に積極的にマーケティングを行ないリピート率を最も重要と見ており、2010年度のリピート率は67%と高く、今後は75%〜80%に上げていく計画だ。このようにVistaPrintほどのディレクトマーケッティングを展開している企業は新種の印刷会社である。VistaPrintのグローバル戦略同社は世界の120カ国に販売展開をしており、22言語のウェブサイトを設けている。2006年では、売上げのほとんどが米国であったが、現在では米国以外の売上げ比率が46%となっている。その成長は高く去年は41%。うちアジア太平洋地域の成長が著しく50%を越えている。VistaPrintは米国で目を見張る実績をあげてきたにもかかわらず、米国の印刷業界誌にはあまり取り上げられない。VistaPrint社のまとめVistaPrintはW2Pというツールを活用し、印刷業界の常識を次々と覆していった。これにより、印刷業者が「取引コスト」が高くつきすぎて敬遠してきた市場の案件を取り込むことを可能とし、同時に顧客には印刷物を作成する手間を省くことにより「作業コスト」を下げる利便性を提供した。加えて、製品を絞り込むことにより、プロセスの高度な自動化と効率化を実現し、きわめて小さな仕事でも大量生産の設備を使いながらも、高い利益を出せることを可能にした。極論すれば全世界の250枚単位の名刺ビジネスを表4リピート率