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46市場調査委員会(石井啓太委員長)は、「フォーム印刷業界の現状と課題に関する調査報告書」を2014年11月に発行した。11月20日に日本印刷会館大会議室で開催された「印刷産業関連データ活用セミナー」でも紹介し、参加者に配布された。「市場調査委員会」では2014年7月、正会員123社に対して各社が取り組んでいる「現状の課題」と「今後の事業展開」についてアンケート調査を実施し、61社から回答をいただいた。この調査から、各社の置かれている状況や、今後どのような展開が有効と考えているか等、非常に興味ある傾向を見出すことができた。2013年度の売上高は「ほとんど変わらない」が50社(82.0%)と回答し、「増加した」が6社(9.8%)、「減少した」が5社(8.2%)と、昨年度と比較して「減少した」とする会員が減少するとともに、「増加した」との会員も増え、売上は増加傾向にあったと言える。そのプラス要因では、消費税増税前の駆け込み需要や、金融関係の制度改定等の「法制度変更による特需」が28社、「得意先の業績が上向いた」が17社、「新規開拓が好調」と回答した会員が11社あった。また、マイナス要因については「価格競争」と回答した会員が40社と最も多く、次いで「IT導入、法制度改革によるペーパーレス化」が27社、「得意先業績の不振、事業縮小、倒産など」と回答した会員が22社と、半数近い会員がこの3点を挙げている。■2014年度版「フォーム印刷業界の現状と課題に関する調査報告書」を発刊経常利益は「ほとんど変わらない」が31社(50.8%)、「増加」が23社(37.7%)、「減少」が7社(11.5%)との回答があり、経常利益を向上したと回答した社数は、昨年度回答より10%以上増加し、全体の4割を占めるなど収益性の向上が鮮明に表れた。そのプラス要因は「経費削減」が34社と最も多く、次いで「売上高の増加」が18社、「高利益製品の受注比率増加」が16社と続き、人件費やコスト削減のみに頼らず、売上拡大による利益確保の割合も高くなっている。マイナス要因では、昨年同様「得意先からのコスト削減要請増加」が24社と最も多く、他の要因を大きく引き離している。カラープリンターを用いた市場については「既に導入・増設予定」と回答した会員が30社と約半数を示しているものの、仕事量が「確保できていない」との回答が10社からあり、データ・プリント事業の難しさを表している。今回の報告書の結果について、業績回復の傾向が表れ、特に経常利益が上昇した企業の割合が1.5倍に増加し、その要因も高利益製品の受注比率増という「攻め」の施策が実を結んでいると評価できる。一方、増税前の駆け込み需要や制度改定による外部的な要因が大きいことから、反動減への懸念も指摘している。そこで、業績を維持するため事業領域拡大への対応として、BPOサービス、webプロモーションの業界への進出とともに、「興味ある分野」の設問に対して、昨年は25社と最も高い割合を示していた「デーブなマルチチャネルコミュニケーションを実現するため、印刷とネット、モバイル、ソーシャル、ビデオ動画など、複数のチャネルを統合する戦略を採ろうとしている。印刷とモバイルを統合させることにより、顧客とのエンゲージメント(愛着性)や、インタラクションを可能とし、印刷物の付加価値を上げることにつながるのだ。次回は、モバイル化する世の中でのAR(仮想現実)について取り上げていきたい。PODiJAPAN翻訳協力:MitchellShinozaki