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INFORMATION31たが、市場で急速に立ち上がったのは、ここ2年間であるとあらためて認識した。WilenDirect社の上級副社長PaulCaravello氏は、「フルカラーのバリアブルプリントにおいて、ここ2年間で起こったことは、これまでの30年間よりも多い」と話す。初期に産業用インクジェット機が生産していたのは、需要の少なかった請求明細や利用明細書、文章中心のプリント、オフセット印刷物への追刷りなどが主力であった。しかし、ここ数年で大きく変わった。ワシントン州EverettのK&Hインテグレイテッド印刷社の社長であるDarrenLoken氏は、昨年で終わった2年間を印刷業界から振り返って見ていると、彼は「インクジェットが爆発した」と気づいたという。しかし、業界とそれを支える市場に火を点けるのは単なる技術だけでは困難だ。パーフェクトストーム(破滅的な事態)あまり好ましくはないが2008年を振り返ってみよう。我々はその時に大きな再編を見据えていたのを記憶している。グローバル経済は停滞し、前向きな会社は生き残りをかけて変革しようとしていた。結果として、新しい経済を発展させるための、出版、マーケティング、広告費用は、どこでどのように行われるかが見直されたのだ。ターゲットを絞ったマーケティングは、紙メディアにおいても、電子メディアにおいても、同一内容の発信よりレスポンス率は優れているのだ。ただし、紙メディアを正しく行うためには、「より困難で、よりコスト」もかかる。しかし、事実は、多くの事例が示すように、投資対効果を考えれば紙メディアのコストは高くない。そして、我々はニーズを掴んだのだ。もうひとつの要因はターゲットを絞り込んだマーケティングで、先ず「よいデータ」が必要である。メーリングリストは昔から存在しているが、効果の高いターゲットマーケティングには、単に名前と住所以外にも、様々な情報を必要とするのだ。大手企業が成長し、顧客データを維持していく中で、インターネットを受け入れ、さらに、モバイルを受け入れることにより、データ分析が主流となった。よって「よいデータ」が容易に入手できるようになり、そして、このデータはインターネットやモバイルだけでなく、紙メディアにも利用可能なのだ。WilenDirect社のCaravello氏は、彼の顧客がいかにデータを中心に考えるか、そして、顧客の準備が整った時に「バリアブル印刷を提案する」と語る。新しい技術がアプリケーションを広げたこのシリーズと“Drupa2012”のシリーズにおいて、産業用インクジェット機の技術的進化と、その制限についてハイライトを当ててきた。しかし、制限の多かったバリアブル印刷が、品質要求の低いアプリケーションから、高品質を求めるDMとマーケティングアプリケーションに移行するのを確認した。ここ3年間のいくつかの進化によって、これは可能となった。進化は主にヘッドの制御の改善、より良いインク、さらに、インクジェット用紙の選択枝が増え、専用用紙のコストも下がった事による。最新の産業用インクジェット機がもたらす真価は、より幅広いアプリケーションに対応できることである。K&H社が選挙の投票用紙への印刷が受注でき、産業用インクジェット機を探していた。そして、このプリント設備で商業印刷目的にも利用可能なものを望んでいた。そこで、彼らはCanonOceColorStream3900を選択し、昨年7月に設置した。Loken氏は最初にインクジェット機を設置した時には、太平洋岸北西部におけるインクジェット用紙の供給は、現在とは大きく異なっていたという。問題は、彼らが北西部において最初の産業用インクジェット機を導入した会社であったことだ。新しい技術に最初に飛びつくのはなかなか難しいことだが、プラットフォームを確立することによって得られる高い評価と、長期的な利益で苦労が償われるのだ。ワイオミング州EauClaireにあるDocumation社の社長であるMartinAalsma氏によれば、1年半から2年前にHPのインクジェット技術が強化され、所有していた2台のHPT200をT230にアップグレードし、モノクロからカラー印刷が可能になった。彼はこのアップグレードによって、アプリケーションの幅を広げるとともに、HDNAや他のHPの新技術によって、顧客の多様な品質と、生産性の要求に対応できると考えている。WilenDirect社は、産業用インクジェットの導入は初めてではない。10年に渡ってKodakのプリントヘッドをオフセット印刷機に搭載してきた。この追刷りによって、彼らと顧客はバリアブル印刷によってどんなことが可能になるかというアイデアを根付かせ、WilenDirect社は2年前のProsper5000を導入した。そして、彼らと顧客は95%をバリアブル印刷に移行した。同社は最近KodakProsper6000を購入し、スピードと生産能力を増強し、さらに品質を上げた提案を行っている。