「フォーム印刷市場の動向とDPSの事業の展開」

DPSを進めるための条件



DPSを進めるための条件
 ただ、DPSを進めるためにはいろいろな条件があります。まず一番大事な問題は企画開発力、提案能力があるかどうか。これが実は一番重要な問題です。先ほどフォーム印刷の中では必ずフォームをつくったらデータなり何なりを打ち出すではないかと言いました。でも、普通の15の11でも、15の10でもいいですけれども、ああいうもののリスト用紙にデータを打ち出すもの、それをうちで受注させてくれと言ってもなかなかそういうわけにいかないです。結局、DMのようなものとか、あるいは外部に出るようなものとか、そういうものについては可能性はあるわけですが、言えることは今皆さんの目に見えている商品、例えばJCBから何とかの保険のご案内がうちへ来て、それを見て、これはいいな、よしこれをうちでもやろうじゃないか、と。そこまではいいのです。「実際にJCBにこの注文をもらいに行け」と。「よそが10円だったらうちは9円でやるからぜひください」と。そういうのが一番この商売ではまずいやり方です。
 なぜかというと、結局DPSの仕事というのは、それぞれの能力があるかないかということが、もう皆さんの目に見えている商品です。外に出てきた商品というのは既に開発が終わって実用化されて動きだしている商品です。これははっきり言って、それをみんなで競り合っても値段をたたいてやるだけで何のうま味も出てこない。それこそみんながせっかくいい商品だ、DPSはいいんだと言いながら引っ張りっこして共倒れになるのと同じです。だからこそ、開発力のない会社には無理だと書いたのです。
 皆さんの中でアメリカでもヨーロッパでも、何度も行かれている方がいっぱいいると思います。私も今まで何十回だかいろいろ行っている中で、アメリカなどではもう30年前からコンピュータレターというのはゴロゴロあった。あの当時ですから、プリンターの活字も大きかったしレーザープリンターなんかなかった時代です。それでも15の11、15の10でも9でも、大きなものにカラー刷りであって、宛て名を入れて下側に割引のクーポンがついていて、そこに名前が入っていて、お客さんに送って、例えば雑誌なら「1年間これで割り引きます」とか、「50ドルの割引券がついています」と。そういう商品というのはたぶん外国へ行かれた方は幾らでも見ているはずです。
 私もそうやって見て、コンピュータレターというもの、あの当時はプリンターの能力も低かったのですが、そういうものが山ほどあるのになぜ日本ではこういうものが動かないんだろうというのがまず一番先の疑問でした。日本でこういうものを使っていたところはどこかというと、リーダースダイジェスト、アメックスだけでした。皆さんもたぶん気がつかれたと思います。あれはもともとアメリカの会社ですから、恐らく向こうから直輸入で持ってきたのでしょう。
 今皆さんのところに、例えばJCBから来る、アメックスでもダイナースでも、あるいは保険会社でもいいですが、「こういう新しい保険ができました」と、名前と住所まで全部印字してあって、判子だけ押してくれればすぐ申し込めますよという形のものがいっぱい来るようになったでしょう。でもこれは結局そういうものを企画をして、ユーザーに持っていって、こういうシステムでやりませんか、やったらこういうふうなマーケットをつくれますよという提案をしてつくってきた商品なんです。決して天から降ってきたわけでもなければどこかから分捕ってきたものでもなくて、そういう商品だからこそ、いわばおいしい商品だということが言えるわけです。それをみんなで引っ張りっこやって、これならいいだろう、と。
 ただ言えることは、例えば日本生命でこのシステムがうまくいったから、第一生命へ持っていってもうまくいくだろう、と。ここまでは使えるかもしれません。しかし、この業界の反省しなければいけないところは、取るためには価格競争でメリットを出すというのは、何を出すか。値段を下げればいいだろう、と。これが一番悪いことです。これをやっていったのでは、DPSなんていう仕事は結局やればやるほど足が出てくるような仕事になります。当然のことながら先発メーカーは、既に表へ出ているような商品というのは過去の商品で、現に次の商品の開発をやっているわけです。これがどんどん続けられるところではこういうマーケットは無限に伸びるということがいえます。
 先日もセミナーの中で、「DPSがいいといわれていて投資をしていこうと思うけれども、そんなに無限に伸びるとは思えない。つまり、売上の中で何パーセントかいったらもうそこでストップしてしまうのではないか。どのぐらいまで伸びると考えたらいいでしょうか」という質問がありました。それは、やり方では無限です。ただし、外に見えているものをかき集めてきて、それに対してうちも挑戦していこう、そのお客さんのところへ行って何とかもらってこいという発想をするのだったら、DPSの仕事は残念ながらやらないほうがいいです。それでは決して勝てません。どこまで行っても二番煎じ、三番煎じで無理です。確かに最初はそこそこ採算がいいかもしれません。お互いにそういうやり方をして引っ張っていったら、伸びるマーケットも伸びなくなります。ですからこの仕事が難しいというのは、新しい仕事を自分のところがつくれるかどうかということです。つくれる自信のあるところは私は大いに進めるし、どんどんやるべきだと思います。ただし、自信がない中途半端なものだったらやめたほうがいいような気がします。
 現実に、先ほどのトッパン・フォームズの例ではないですが、あれだけ伸びているわけです。マーケットがどんどんできています。ただしトッパン・フォームズさんは、自分のところでこういうものをどんどんつくって、ユーザーに提案をして仕事をつくっているのです。だからこそマーケットが伸びている。それだけは間違えないでください。みんなの目に見えているものをただ分捕ってきてやろうというのではなくて、これはトップメーカーのつらさもあると思いますけれども、二番手、三番手は、そういうのを皆さんが見ていれば、ここにこんな仕事もあるんだ、ということはたぶん気づかれると思います。だから自分の会社が自分のところのオリジナリティーを加えながら、どうやってここの部分に挑戦していくか。ここはひとつ皆さんはじっと自分の会社で、胸に手を当ててお考えになられたらいいのではないでしょうか。
 この仕事の中では、この間、ダイエーOMCのトラブルがありました。結局難しいのは、どんなものでもそうですが、例えば請求書だとか宛て名が入っていて、しかもDMのようなものなら、まだだれのところへ間違えていっても問題は起こりません。でも、請求書とか金額の入ったもの、内容の明細などが他人のところへいったときには大変なことが起こります。
 ですから、データについて、あるいは郵便なり何なりが届くまでの保証ということ、これができますか。それからトラブルが起こったときの補償、賠償の問題。今は非常にこれが問題になっていますが、実際に会社との相対の契約ですから、それぞれの会社でそれぞれ条件が違うわけです。保険会社へ持っていって損害保険会社でどういうレートで受けてくれるかというのを相談してみたのですが、なかなかやっぱり難しいです。条件によっては幾らでも変わる。
 昔でしたら、私も記憶がありますが、お菓子か何か買って「ごめんなさい」と言って謝りに歩いたということがあります。今はそういう時代でもなくなってきました。これは印刷業界そのものの信用失墜もあるし、先ほど言ったように、情報処理の業界、印刷の業界、いろいろな業界がみんなここをウォッチしています。そうすると、印刷業界に任せるとこんな中途半端なことをやるんだからやめたほうがいいですよという宣伝にも使われかねないです。結局、自信を持った仕事ができるかどうか。これはデータの管理の問題とか設備の問題とかいろいろな問題がありますが、やはりこの難しさは十分承知の上でないといけないだろうと思います。
 当然、こういうものをやるためにはいろいろな設備があります。もともとのデータというもの、これはインターネットを使う、あるいはデータベースを使う、自社でプログラムを開発する、データの入力をする、あるいはデータをユーザーからもらう。いろいろな形のものがあります。しかし、いずれにせよ、データを処理するというシステムが自分のところになければ、まずできません。宛て名打ちだけだから、まあ、いいやといっても、宛て名打ちだけでも、エクセルのデータを一つもらっても、CVSのデータをどんなふうに処理するか。これ一つだって少なくともパソコンのパの字も知らない人ができる仕事ではありません。やはりそういうものはある部分では必要になってきます。
 それからプリンターです。これもDPSを皆さん単純に考えているところが多くて、プリンターだけ買えばいいんじゃないか、プリンターで宛て名を打てばいいじゃないか、と。もちろんプリンターで宛て名打ちというのも大事な仕事です。ですから、昭栄の折り機にサイテックスの小さいのがついているのはご存じだと思います。あれなどは、オフセット屋さんあるいは製本屋さんが折り機で折りながら一緒に宛て名を入れていってしまうというシステムです。これはフォーム印刷で使っているサイテックスの大きなものではなくて、あれは6240というモデルですが、1インチかそこらの5240という小さいシステムがあるんです。こんなものであっても宛て名の印字ぐらいはできるんです。それもこの中の一つと考えれば、そんなものでもできることはできる。
 ただ、フォーム印刷がやるとすれば、折り機にサイテックスをつけて宛て名を打てばいいというレベルではありませんから、やはりあるレベルのプリンターが必要になってくるのではないですか。フォームの業界の中でいうと、一番そういう意味では東レのプリンターというのが台数が多い。ほかの富士通とか昭和情報とか、そういうものですとやはりどうしてもウィンドウズで全部処理するわけにいきませんから専門の方が必要ですけれども、東レのプリンターなどの場合は、ウィンドウズになっていますからだれでもプログラムがいじれるというメリットがあります。
 用紙の後処理については、当然のことながらフォームで用紙を印刷した後には、バスターで切るとかカッターで切るとか、あるいは圧着はがきのようなものであればシーラーでシールするとかいろいろあります。シーラーでもいろいろな形式のものがあります。ODPである、バスターである、リタッチャーである、カッターである、シーラーである、こういう処理というのが必要になるわけです。
 ブッキングの帳票などでもまずカッターなりバスターがあって切って、それをブッキングして綴じるというようなことになりますが、やはり郵便の封筒に入れるとかの前に、用紙をプリントした後で何らかの処理をするというものが必ず必要になってきます。
 用紙を切ったり、あるいは何かをやった場合、その次にどういうものが必要か。メーリングインサーターと書きましたが、封かん封入機というようなものです。これはオンラインのものとオフラインのものといろいろあります。かなり大型から小さいのまでいろいろなものがありますが、封筒に入れる。そして封筒に入れるにしても、フォームを1枚切って折り畳んで入れるだけじゃなくて、そのほかにチラシを入れる、何を入れる、同時に3枚、4枚、5枚はさみ込んで入れるとか、封筒に入れるとか、こういう機能を持っています。ですから、これは何枚ぐらい入れるか、あるいはスピードがどうか、値段の高いもの安いもの、オフラインのもの、オンラインのもの、それはさまざまな種類があります。
 それから、封筒に入れてラベリングマシン、チェッシャーのような機械でラベルをつくっておいてプリントアウトしたラベルを張るというもの。あるいはダイレクトに封筒の上に宛て名を印字するもの、あるいは窓あき封筒に入れれば下に入っている宛て名がそのまま上から透けて見えますから、そういう形で使う方法、そうやってラベルあるいは宛て名を印字した後で郵便番号の照合をする、そして番号別にそろえて結束して局に出す。一つのDPSの中でのDMのようなものに限定しますとこんなようなラインで仕事は流れています。ですから、それぞれのところがどんなものをどんなような形でやるかということによって、実は予算も大きく違います。
 こういうふうな後処理の設備については、データビジネスメジソンにいろいろお話を私どもで聞いたのですが、シーラーとかリタッチャーは皆さんおなじみだと思います。ブッキングマシンもやっていますから。大体3000万から4000万ぐらいの規模。結局、名寄せといって、例えば電話の請求書のように1枚のもの、2枚のもの、3枚のもの、4枚のもの、人によって明細書の枚数が小さくなったり大きくなったりする。こういうようなものですと、また特殊な機能を持ったシステムが必要になるわけです。
 ただ、単純に1枚もの、2枚ものぐらいでしたらともかくとして、やはりデータの入った中身と宛て名を間違えてほかの人のところへ明細が行ってしまったら、これはただで済まないわけです。そうなってくると二重三重に、ただ封筒に入れればいいのではなくて、それをどの部門でチェックをしているかとか、封筒に入れる前にもう一遍データのチェックがある。インサーターのものですと、脇にOMRで、バーでマークをつけまして、マークで1枚、2枚、3枚、4枚と、それを読みながら入れていくというシステムが大体一般的です。しかし、やり方によってはここで大変なお金のかかる部分があるわけです。
 ハードとか単純なフォームに上に名前だけ入れればいいというようなものは比較的単純ですから容易でしょうけれども、それ以外の、データの処理をする、あるいは今のような請求書みたいなものも扱うというようになってくると、これはなかなか人海戦術でできる分野ではありません。その部分をある程度設備に変えて信頼のおけるシステムをつくらないと、ちょっと怖すぎる。仕事としては中途半端な仕事はやらないほうがいいと思います。それなりの覚悟を決めておやりになるならば、そういうものをお考えにならなければいけないと思います。
 もちろん私どもでも単純な、宛て名だけ打てばいい、番号だけ打てばいいというようなものはやっていますが、そういうものと今伸びようとしている可変データを出力しながらDMにかわるようなものを送るというものになりますと、情報処理のシステムとしてもかなり高度なものが必要になりますし、コンピュータそのものの能力も非常に大きなものが必要になります。こういったインサーターとか、こういったシステムも二重三重にそういうもののチェックも必要です。ですから飛躍的に設備という部分、人間の教育というところも非常に必要になってくるのではないでしょうか。
 設備というのはお金を出せば買える。では、環境の条件というのはどんなものだろうかと考えてみましょう。まず一番の問題はセキュリティの維持というものです。これは当然秘密データを扱いますから外に漏洩しないということがまず一つ。個人データを扱いますからプライバシーの問題。そのデータが外に漏洩しない。セキュリティと同じですが、同じセキュリティであっても、会社の中でも個人データを扱うということで、扱う担当者以外の人の目には触れないようにする。
 例えば皆さんが銀行に新しく預金を申し込む場合に、今はATMのカードでお金を下ろします。そうすると暗証番号を書いてくださいと言われます。今の場合、普通は4けたで書いて、これも銀行の中では、たぶん皆さんも気がつかれると思いますが、今まではここに4けた番号を0000と9999以外を使ってくださいと書いてあって、「はい」で済むでしょう。銀行によっては、その紙をもらったときにシールを渡されて、目の前で番号を書いてあるそこに「シールを張って渡してください」という銀行もあります。念の入った銀行では、表からシールを張っても裏返すと裏から見えてしまうので、「裏側にもシールを張ってください」と。
 どういうことかというと、このプライバシーのデータは、銀行の窓口の女性といえども目にしない、見せないということです。ですから、DPSの仕事をやっている場合に、セキュリティの維持ということとプライバシーの維持ということは、イコールであるけれども、目的がちょっと違います。ただ、いずれにしても必要な部署の人以外には一切見せない。今は銀行でもそういうプライバシーの問題で、「銀行員でも暗証番号をお伺いすることはありません」なんて書いてあるでしょう。にせ者が銀行員を装って番号を聞いて何かやるということが起こってからですけれども、ある銀行では「お客さんが書いたら裏と表にシールを張って見えないようにして出してください」と、既にそんなことも行われています。ですから、銀行員といえども、役席かだれかわかりませんが、そのデータを入力する部署では当然シールを開けるでしょうけれども、そこへ行くまではだれの目にも触れないようにする。
 前にもお話ししたことがあると思いますが、保険会社の保険に入るときに、病歴に過去3カ月以内に入院したことはありませんとか、マルをつけますが、保険会社によっては、そこに大きいシールを張るようになっている会社が出てきています。皆さんは、「入院したことが過去3年以内とか何カ月以内にありません」ならそれでいいです。女性なんかは下のほうに「妊娠していますか」とか、そんなことも書くようになっているわけです。あれを外務員の人が平気で「はいよ」と渡して、ああいうのはプライバシーのものでよく問題にならないなと思っていたら、やっぱり案の定問題になってきて、そういうデータを全部隠しましょうという動きというのが出てきています。そういうふうに考えれば、データを扱う部署というのはどこにどんなデータがあるかどうかわからないわけです。
 データを持っているゼンリンという会社があります。あの会社の今一番高いデータを買うと、各個人の家の家族の学歴から就職先から、入っている保険の会社から額から、もちろん取っている新聞、車の履歴、何年型の何色のどの車か。そういうものまで実は全部データとしてあるそうです。それはただし高いお金を出さなければ買えないんだそうですけれども。なぜ学歴から取っている新聞から収入から、そういうものまで全部補足できるんだろう。もちろん一つのデータでそんなものは補足できるはずはありません。でも現実に今、消防庁とか警視庁とか、ああいうところがデータとしてゼンリンから買っています。110番でも119番でもやって、ピッピッピッとやると画面にバッと出て、道路状況からどこの家かも全部わかるようになっています。あれは当然そういうデータがあるということです。
 今はインターネットで皆さんもやっていると思いますが、地図の検索ができます。何丁目何番地何号とやるとバーッと出てくる。実際にときどき、遊びではないけれども、みんなでやるんです。一番今すごいのは、インターネットでは無料ですから名前は入っていませんが、何丁目何番の何号とやると家が1軒特定できるでしょう。自分の家をやってみてください。家の形まで全部出てきます。私の家は今ないですが、前に庭先にちっぽけな物置があったんです。つぶしてしまったんですが、それはデータが古いんでしょうね。家の形がちゃんとあって物置まで出てくる。ですから、あれに個人データの名前と何かが入れば、すべてそろってしまう。でももう既に公開情報でそんなものが公開されているんです。そこまできています。
 そういうものがどこから出ているかはわかりませんけれども、少なくとも皆さんがクレジットカードの申し込みをするとか、懸賞に応募するときにあなたの講読している新聞が何とつけるかとか、あるいはあなたの趣味は何ですかとか、そういうことからわかります。名簿図書館というのがありますが、あそこの名簿だけではなくて、皆さんの中ではDMを扱っている方がいっぱいいるからデータをお持ちだと思うけれども、どんなデータがいっぱいあると思いますか。例えばニキビが出て困っている女性の名簿とか、はげていてはげを気にしている人の名簿とか、当然ゴルフの会員権を持っている人とかヨットを持っている人とかなんていうのは別として、コンプレックスを感じている人の名簿とか、太り過ぎ、やせ過ぎ、そういうリストがあるんです。どこから出てくると思いますか。よくテレビコマーシャルで、はげている人にかつらの何とかは何番にすぐ電話してくださいとかやっています。ああいうところから拾われているんだと思いますが、そういうものもリストになっているんです。皆さんが例えばDMをやって、はげている人にかつらを売ってやろうと思ったら、そういうリストはないかと聞いてみてください。絶対に出てきます。
 つまり、それはたまたま懸賞かもしれない。あるいはかつら屋さんに電話したリストが残っているのかもしれません。あるいは七五三などの場合だったら、いわゆる母子手帳の入手経路からまず追いかけていくわけです。母子手帳の発行から追いかけていって、子どもが生まれた、名前を追いかけて、生年月日を追いかけて、それが七五三になって、中学の入試になって、高校になって、何とかになって、ずっとその名簿が追いかけて歩いているわけです。
 そういうふうに考えてみれば、こういうところからデータが漏洩するというのは一番簡単なことなのです。だからこそ、こういうものをやる以上はこういうもののセキュリティあるいはプライバシーが漏洩しないということを自分のところの絶対の条件にしなければいけないのです。
 ISO-9000 、9001、9002あるいは環境の14001 もそうですが、別に9000を取ったから偉いとか、9000を取ったからうちはこういう仕事ができるとかというのではないのです。9000とか14000 を取るということは、自分の会社は管理できるだけの能力をもっていますということで、少なくともあるレベルまで達していますという証明にはなるのです。ですから、そういうものも一つの道具です。
 プライバシーマークというのもあります。これは既にこの中で取られている方がだいぶいらっしゃるようですが、やはりデータをどこに保存するか。印字している処理している部屋の出入りをどういうふうに規制するか。あるいはそういうものの処理についての管理基準がどうなっているか。そういうものをずっと突き詰めていって、そしてこういうものができてくるわけです。
 一番最後に示した情報処理サービスの安全対策実施事業所というのは、去年の10月に変わったようですが、こういうふうなものも、うちはISOがあるからいいよ、プライバシーマークがあるからいいよではなくて、二重にも三重にも四重にもやって、「うちはこういうことでやっていますから自信を持って仕事をやれます。ですから、ぜひ仕事をやらせてください」というものが出てきませんと、やはり安心してユーザーが何でも任せてくれるというところまでいかないわけです。
 先ほどゼンリンの話をしましたが、どうやってそのデータが集まるのか。皆さんが懸賞をやるのに講読している新聞を書いてくださいとか、年収もマルをつけてくださいとか、恐らく無意識にああいうところへポッポッと書くかもしれません。でも、そういうものが一つずつデータベースの中に積み上げられていくと、間違いなくその人の人格が全部浮かび上がってしまうのです。ですから、懸賞のはがきであれ、応募のものであれ、ああいうものが結構高く売買されています。
 以前、クレジットカード会社の古くなってデータ入力の終わった用紙がスクラップで出て大問題になったことがあります。今はそういうことはないでしょうけれども、クレジットカード会社とか電話会社でも、データを入力するところまではいいのです。データを入力した後の入力済の用紙です。これは指定業者に当然任せて処理しているはずですが、やはりそういうところから漏洩したりします。皆さんも経験があるかもしれませんが、配送の車が途中でトラックから1箱落としてしまったというようなことがあります。今はそんな話はあまりないでしょうけれども、昔あって、それが警察に届けられて大騒ぎしたことがあります。
 今はそんな杜撰なことをやっていたのではもう通らないでしょう。やはりそういうことまで考えて、自分のところの出入りのくず屋さんからスクラップの処理屋さんから、そういうものまで全部コントロールができて、なおかつ全く問題がないような形のものを組み立てておく必要があるということです。これは大変なことでしょう。それほど大規模にやるかやらないかは別としても、やはりそれなりの覚悟がなければそういう個人データを扱うことは難しいということがいえるわけです。
 これで時間になりましたので、何か質問がありましたらお受けしたいと思います。