日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録


やさしいEビジネス      
前編

―業種別事例に見る印刷業とEビジネスの共存―

講師 堀田和雄 氏 日本ユニシス(株)asaban.com事業部 事業部長

平成12年11月15日 東京・茅場町「鉄鋼会館」

 

 本日は、序盤にEC、エレクトロニック・コマース、電子商取引と訳されますが、これを語るときに避けて通れない、しち面倒くさい言葉があるわけですが、この辺を少し触れます。その後、IT革命というふうにやたら言われていて、だれもが、半分以上はわからないという不思議な言葉について考察をしたいと思います。そして、リアルとサイバーを組み合わせた事例をお話させていただきたいと思いますが、現実の仕事を、エッセンスを切り残して、インターネットのよさも組み合わせて、手もかからないような非常にすてきな事例があります。これは参考としてお話しします。その後、2つほど私どもが直接関係をしている事例についてお話しをしたいと思っています。よくセミナーに行きますと、特にコンサルタントの方のよさと悪さですが、猛烈に数の多い事例を、ヘッドライン主体にざっと流すことが多いわけですが、むしろわからないほうを増幅することが多いと思うんです。ですから、いろんな例というのは、根っこのところは同じですから、2種類ぐらいを根幹からお話ししてみたいと思います。
 いずれにしましても、きょうの主題もそうですが、きょうでいきますと、印刷メディアは電子メディアとどうなるか、電子メディアは印刷メディアにとってかわるかとか、必ず言われますが、例外なくどの業種でもやはり言われていることです。こういう社会現象に結論というのは無益ですが、必ず現状とそれからサイバーの融合以外にないというのが基本的な見方ですし、私どももそう思っています。ですから、例示するケーススタディも必ず新旧の融合だという哲学でお話し申し上げたいと思います。結果的に印刷メディアがどうなるかといったことを、レッスンプロが教えるような、ああいうものというのはあり得ませんので、いろいろお話しした中で、次に何が見えてくるかをそれぞれお感じいただければ私の役目は終わりだというふうに思います。ですから、型にはまったことは無益だということで、若干散漫になりますが、そういう趣旨でお話し申し上げます。
 EC、電子商取引ですが、この出だしから何ですが、私どもは電子商取引という言葉遣いを、非常に好ましく思っていません。電子取引なんです、「商」という字を入れてしまうものですから、すぐに受発注とか、こうなるわけですが、違うんです。とにかく、従来方法でも構わないわけですが、制限をずっと取り除くという方法にしかすぎないわけです。日本も電子商取引というふうに訳してしまったものですから、だいぶ時間がかかったというふうに個人的には思います。言葉遣いで非常に著名なのは、生命保険という略です。非常にそのとおりだと思いますが、実は生活保険であったわけです、生活保険の1つに生命に保険をかけた。ライフインシュアランスを生命保険と訳してしまったものですから、大事な命にある掛け金で補てんするのかということのほうが先行してしまったんです。同じように電子商取引も単なる電子取引だというふうにおとりいただきたいと思います。
 皆さんが、世の中はECと言ってるものですから、ここでもECと使います。図1にB
to BとB to Cと書いてありまして、もちろんご存じだと思いますが、これから整理をするという方のためにレベルを合わさせていただきますと、ビジネス・トゥ・ビジネスですから企業と企業、すなわちネットワークでやるときに、自分も相手も特定者だということになります。特定者が企業と企業ですから、受け取りとか、ものを言うときに、既存のシステムとか環境があるわけです。その辺を電子でやろうとするためには、かなり広範囲なことを、手続きを組むことが必要になるわけです。そのために概念に言葉がついております。専門の人以外には要らない言葉ばかりを書いてありますが、コンピュータ業界ではこれはやっきになって追いかけている言葉になります。


 このEDIというのも、実はもともと大昔から存在します。エレクトロニック・データ・インターチェンジですから、文字どおり、ネットワークを通じて電子化されたデータを、インターチェンジですから、企業と企業、企業と相手に対して送るということだけなわけです。この発端は、製造業ではありませんで、実は広告代理店業界なんです。広告代理店がクライアントの求めに応じて、コンテとかいろんなものをつくろうとするときに、電話ではなんなんで、かつファクスでもなんだといったときに、ある特定の通信回線をデザイナー部門に送ってみた。これがざーっとはやってきたわけです。はやってきましたけれども、下流工程にいる人が非常に被害を受けていまして、おつき合いする上流工程の企業は気持ちよく送り出すわけですが、下流のほうは、端末ばかりおつき合いするんで、よくありますけれども、鋳物工場に行っても多端末現象になっているわけです。非常に機能は少ないんですけれども、端末ばっかり並ぶわけです。これは全部そういうことなんですが、最初はそういうふうに始まって、端末がたくさんあるやつを複数個に整理できないかと。整理できるためには、端末のハードウエア性能をよくするんではなくて、皆さんとやっている電子取引の手続きを標準化すればかたまるわけですね。ということで、このEDIという言葉も昔からありますが、きょうもまだ発展途上だという言葉があります。Eビジネスと言ったときに、EDIというのはもともとあったものですから、存在する、まあパートナーになってます。
 それから、CALSという言葉もありました。これも何の略かというのはここではやめておきますが、生産・調達・運用を支援するときの哲学みたいなものをつくったわけです。これも広範囲にコンピュータとデータを使って、目的の人に必要な物をタイムリーに配るという意味の話なんです。湾岸戦争のときに、戦争の結果のほうが注目されておりますが、情報処理業界ではむしろ運用のほうに焦点が当たっていまして、あるXデーに広大な陣地を開き、その後の後方支援から全部システム化したわけです。あの手際のよさで証明されたのが、このCALSという運用・調達・生産を支援するコンセプト、それに基づくシステムというのがあったわけです。これは国防総省がつくったわけですけれども、そんなことばかりは要らないものですから、だんだんこの技術を民間に転嫁しようと。国防総省の場合は、軍事物資を調達するということにほかならないわけですが、この辺を全部一般商用にしようというところで、これを一生懸命出してきた。民間に出すだけでは困るものですから、クリントン政権のときに、スーパーハイウエーを引いたわけですが、実は中身というのは、このCALSという考え方をECという名前で置きかえてきたわけです。それで今こんなような状態になっています。
 それからSCM、サプライ・チェーン・マネジメントという言葉も、実は大昔からあります。サプライをチェーン、ですからもともと生産業者がいて、流通をつかさどるのがいて、オーダー主に届いていくところを効率化しようという話なものですから、もともとある。もともとあるものを、インターネットを利用してもっとうまくいこうといったときに、やっぱり名前が要るということで、こういう言葉になってきています。
 それから、CRM、カスタマー・リレーション・マネジメントという言葉もありますが、これも
10年以上昔から言われております。この辺全部、ごらんいただくように、不特定多数が大勢でもって、ある規約でもってやりとりするようなことばかりなわけです。基本的には標準化というものがずっとされている。情報技術ではなくて、取引の習慣の標準化に時間をかけているわけです。ですから、通産省対商務省みたいな感じでずっと発展が来ています。
 そして、ASPという言葉もはやってきておりまして、アプリケーション・サービス・プロバイダという略になりまして、私の担当している事業部もここの分野の事業です。これは後でお話しします。
 それから、バーチャルカンパニーという言葉も、企業対企業取引の中に必然的に生まれてきた言葉です。一般的には、バーチャルカンパニーというと、文字どおり仮想企業と訳しますが、この仮想企業というのは実は違和感があるんです。実際の経済行為を行うのに何で仮想かという、言葉の違和感があるわけです。本来は、CALSとか、ああいう世の中で大勢で仕事をしようとするときにこそ生まれた言葉なんです。Aという企業がもともとあります、Bという企業ももともとあります、業務提携をするんで、広範囲にコンピュータでデータのやりとりをすることに決めたといったときに、コンピュータの仕様も違えば、しまい込んでいるデータベースのデータの内部形式も違いますし、そういう合併とか提携をするためにシステム化というのをしていませんから、ばらばらなわけです。ほっておきますと、力の強い企業が弱い相手先に対して、おたくのコンピュータを捨てなさい、自分に合わせませんかという流儀しかなさそうに思うわけですが、そんなことをしたら意味がない。A社とB社とやるんだったらCという中間のモデルをつくろう、これがバーチャルカンパニーと言われた必要性なわけです。それを、その辺の解説を抜きに仮想企業とやってしまうものですから、ECの時代というのは非常にふわふわして奇怪だという印象が非常にあると思いますが、実際には相談するときに、必要極まりなくて、このバーチャルカンパニーという概念がありました。こんなようなことが話を非常にわかりにくくさせています。
 それから、下のほうはB
to C、ビジネス・トゥ・コンシューマーですから、特定の人と不特定多数でやりとりをするという意味になります。当然、不特定多数を相手にしますから、ここの言うバーチャルというのは文字どおりで、ネット上に開設したショップです。そのショップを大きくしたのがモールだ、モールを大きくすると日本じゅうだということになります。そういうショップもモールも、ここにありますように、パソコンから本から、昨今は例外なく何でもやれるというぐあいにはなってきてると思います。
 そして、下の段、基礎分野というのがありまして、この基礎分野の技術が、きょうのようなセミナーをやるに至る大きな内容です。基礎分野ですから、Eビジネスをやるために出てきたんではないわけです。電子決済、ここには電子マネーというふうに書いてありますが、もともと命の次に大事なマネーあるいは、人によっては命と同格ぐらいの人もいると思いますが、そこに電子という名前がつく以上は、通用なんかしないわけです。ですから、こういう言葉をどんどん解いていかないといけない。ですが、基礎分野とこういう名前、電子決済とか、電子マネーがあるというゆえんは、もともとEビジネスとは関係なしに、不正とか盗難をどうやって防止するか、そういう観点で昔から研究開発されている一群があるわけです。それがこのネット取引の時代に花を開かせてきたということになりまして、Eビジネスを学ぼうとするときに、端から端まで随分いろんなものがあるなという印象になります。
 それから、認証公証という世界も、一般の取引では当たり前に行われておりますが、これをネットでやる以上は不安が大きい。実は今だって不安が大きいわけですが、今思ってるその不安と課題を、ネットにしたときに完璧にしようと思うからこうなるわけです。ですから、基礎分野の技術者が主体を持つと、ややこしいままになってます。あとはセキュリティも同様です。
 この辺、米国と日本の進め方の差がありまして、米国は、こういう基本的なコンポーネントがおおよそよかろうということになりますと、許可をするんです。だからグランドデザインができるとやらせる。そうしますと、歯抜けだらけなんで、これは結局民間会社の訴訟が起きるわけです。訴訟を通じてきめ細かくすればいいという基本的な考えがあるわけです。日本においては、その辺で出発してしまいますと、当局の検討不足、ゆゆしき問題だというふうに、だれも言いませんが、そういう態度になっているわけです。ですから、相当もんでくるわけです。米国のほうは、グランドデザインができたらやらせてしまいますから、ボーダレスというのは最初から来るわけです。日本のほうはかためてやりますから、ボーダレスにもかかわらず、担当業界にあとのフォローを任すわけです。ですから、いい面もありますが、その生い立ちに随分差があります。
 次に、図2は社会面、生活面の情報化というタイトルになっております。これは、年じゅう新聞・雑誌等で言われているちょっとしたことをやたらまとめただけです。ですからクエスチョンマークがついています。

 基本的には情報住宅がありそうだと。書斎に入ってみますと、在宅勤務だし、研究執筆は電子配信と電子図書館で用が足りそうだと。金融商品の取引も当然書斎でやりますし、行政に対する手当てもワンストップサービス化が約束されていますから、やがてそうなってくると。子供部屋に入ってみますと、ネットゲームとか、オンライン学習とか、まあそこそこになると、求職活動ははいずり回らないで自宅でやるんだろうと。それから、老人部屋って、ちょっと暗いですが、そんなのにいきますと、オンライン保健で、最近の情報を見たり、電子医療とか、介護システム、好きなペースで見られる電子美術館、音楽の受信、電子囲碁、ネットの上で知らない人と対戦しようというわけです。それから、お好きな人はまだ生涯教育にいそしみますし、きわめつけはバーチャル仏壇というビジネスがあります。自分の宗派を名乗るとそれが出てくるわけです、そういうようなことを言ってます。居間に行きますと、インターネット対話、1メートルぐらいの距離ですがLANを引こうというわけです。それから、当然ホーム映画館もあるし、ショッピングもできるし、サービスの予約も、育児システムもあるし、育児もレシピがあるわけですね。それからコミュニティって、井戸端会議は、外に出るよりはずっといいわけです。それから、キッチンに行きますと、インターネット冷蔵庫とか、電子レシピがあります、等々、やたらめったらこうくるわけです。
 人によってはあこがれの時代かもしれませんし、人によっては生きた心地がしないような気がします。いいと言えばいいし、無秩序と言えば無秩序ですし、こういうふうに言われているなということになります。
 次に、IT革命とか、Eビジネスという言葉について、少し触れたいと思いますが、図3にありますように、これだけはやっているのに、だれもがいまいち未消化だという、非常に不思議な言葉だというふうに映っています。企業のあるビジネスプロセスをインターネット活用で合理化することだと思うねと。これはまあ大体普通だと思うんですが、しかし違うんだと。この言葉は、現状の延長線を指すのではありませんで、全く新しいビジネスに移行することを、「革命」という名前がついている以上はそうなのではないのかなというふうに気づき始めている人が多いというふうに受け取っています。

 これを少しブレークダウンしようとしたのがこの絵になります。全く新しいビジネスに移行しようということですから、とにかくバランスシートを開いたときに、左の黄色の円にかいてありますように、在庫はゼロを目指してむちゃくちゃ圧縮してみる。それから、人件費も猛烈に圧縮する、情報処理投資は極端にふやしてみる、そして利益を出すと、これらはえらく変わるわけです、いい悪い抜きに変わるんだと。この辺ぐらいのギャップがないと、革命と言ってはいけないんではないかというふうにとる人が多いです。
 これを実現しようとしたのが、右からの絵になりますが、そういうことを希望すると言った場合に、したがって、そこの社長の戦略をだれかがかためないといけないと。これはただ重いですから、これを具体的に現状の業務を前提にかために入ると。したがって、業務プロセスというのはそれなりにあるわけですから、それを刷新しようとしたときに、おおよそ主要な技術というのは少し知らないといけない、それからソフトをやっぱり幾つか装てんしないと話にならないということで、企業のデザインをしてみないと始まらないなということになります。
 同時に、右のほうにすこし飛び出てかいてありますが、ものすごく細かくやっていくわけですね、人間をとっちゃうわけですから。したがって、「ビジネススキーム用提携契約は」と書いてありますが、本来であれば1つの課がやるようなことを、ばらんばらんにあっちこっちやっていくかのごとくなりますから、当然雰囲気としては運動会のバケツリレーのようになるわけです。それをネットでやろうということになるわけです。したがって、細かなものの前工程、後工程を準備して、相手先との契約なんていうのはひな型がありませんから、ここでうなるわけです。
 それから、さらに法制度も要ると。時々アルバイトを雇うといったときに、請け負い契約になるのか、その労務の契約形態から始まっていささか気になるわけです。相手先企業とやりますので、その算数というのはどうやってつくるのかというのもあります。そういうことで、今までやってきた経験はありますけれども、スタイルが変わってしまう。それから、さらに右下のほうになりますと、人を抜かして電子でやりますから、必ず経済行為をやる以上は対象物品の電子カタログがなければ何もできないものですから、カタログというものをやっぱりつくると。そうすると、あっちこっちで通じるカタログにするためには、商品コードというのは、自分と相手先で通用しているコードだけでいいかといったら、そうでもなさそうだと。そうすると、山のようなコードを満載して、一々対応表をつくるかどうかというようなことでもって、このコードづけ1本とっても大変なことになっています。そうこうしながら、ビジネス設計もする、システムの設計もする、これを1人か2人でやらないと始まらないと見たときに、当社ではだれができるのかしらといったところで、この頭を痛めているというのが、きょう現在の1つの小ばなしだというふうに感じています。
 一方、製造業においても、Eビジネスみたいなものに対して、わしもやるぞというふうに人が出てきています。いろいろ製造業の幹部の方がおっしゃってることを、ざっとインタビューすると、こんなことになります。このまんまでは景気回復を待つ前にぐあいが悪くなってしまいそうだ。一方では、力のあるバイヤのほうは、電子調達システムというのはあっちこっちで、雨後のタケノコのようにつくり始めているわけです。したがって、この電子調達システムというものに自社もサプライヤとして参加しなければ、受注そのものがチャンスとして来ないわけですから、入らなくてはいけないなと。無理して、そういうパソコンとそこで必要とするソフトを入れて、オペレーションのトレーニングをするんだと思いますが、しかし、サプライヤ側に入ったとしましても、安くなければ買ってもらえないという理屈がふえてくる。そうすると、やらないとぐあいが悪いし、やっても価格競争ということで非常につまらないなということが印象としてあります。
 次に、考察としましては、汎用品を製造するから価格競争に巻き込まれてしまうんで、特注品にかえてしまうかということで、製造業については、こんなことも1つのきっかけで、原点回帰をするかという人が非常に多いですね。そうすると、次にラインですが、そうであるんでしたら、今のように無理して大手の系列に入っていく必要というのはないじゃないかと。だったらわかった、ビジネスモデルの刷新をするか、こういう順序もありそうです。
 今後大変なのは、その会社が今あるがごとく、昔のように、屋敷を抵当に入れて、そのお金でここで必要なITを買おう、私に必要なITはどこに売ってるんだという感じになるわけです。この辺から、やっぱり必要なものは最低限学ばないといかんなということも受け取っています。
 引き続き、ネット革命とか、新しいチャネルですとか、それからいろいろな言葉の中でもって幾つか考察を深めたいと思います。まずは、Eビジネスというのは幾つか類型があるものですから、こういうものは一体この言葉の氾濫の世界で何を意味するかといったあたり、それからEビジネス、IT革命、ネット革命というこの一群の言葉の意味をもう少し深めたい、その言葉が持つ本質も考えてみたいといったことをお話ししたいと思います。
 まず、Eビジネスの類型というものですが、最初に少し触れましたけれども、B
to B、企業対企業間取引、B to C、企業対不特定多数、コンシューマ取引、B to to C、企業対企業の果てにコンシューマが出てくるというスタイル、B to G、一般企業と政府官公庁、そして最近ではB to Eという言い方がはやっています。ビジネス・トゥ・エンプロイです。これは、企業対企業ではあるものの、もう一側面は、その企業の中にいらっしゃる社員を個人市場としてとるわけです。
 ここで少し触れておきますと、コンビニとかあの辺が非常に利便性が高いと言われていますが、さらにそれを企業内に持ち込むということなんです。例えば、企業対企業ということでいきますと、例えば、生活とか貯蓄にかかわるものをいいますと、大体どこの企業でも、ある貯金をする。ですから、住宅を買うと、そのローンにはもともと制度があって、利子補給をするとか、いろいろなことが福利厚生にあります。ああいう企業の制度と、それから、新たにその企業がその企業にご紹介する商品を買ったときにその補てん制度をだれの手もわずらわすことのないようにセットしてあげるようなサービスをしたり、ある画面を見ていて、企業の中の保護されたこととは別にして、個人として買っていくといったようなことも、商品を勧める側からすると一網打尽にしようということです。ですから、職場にいながら、自分の貯蓄ですとか、運用ですとか、あるいは困ったときの相談ごとみたいなものを、その場でやってしまおうというわけです。本当は勤務時間中にそういうものというのは感心しないというのが一般論だと思いますが、そんなことを言ってられないなということがあります。ソニーさんなんかは、毎週何曜日かに、ファイナンシャルプランナーがある時間来るんです。それで、申し込んでおいて、ある時間は、その人が自分の個人の生活において相談をする。そのかわり、あとは一生懸命働きましょうなんて、どんどん変わってきているんですね。
 そういうことに焦点を当てた電子商取引というのはものすごくはやってきています。今はやっているのは、旅行代理業ですとか、生命保険とか、損害保険とか、この辺が対象商品としては、第1順になっているものですから、非常にはやってます。
 このB
to Eとか何とかという言い方が、1カ月たつたんびにどんどん深まってきています。どんどんこういう類型が深まるといったことは、どういうふうに理解すればいいかというのは、この図4の意味になります。右のほうに書き出してありますように、とにかくそれぞれ、現行の今の世界があります、これはリアルビジネスというふうに名乗っております。そのリアルビジネスとサイバーの融合が進むといったことを言ってまして、ですから、お互いが影響を与えながら補完しあうということにほかならない。何かが何かにとってかわるということでは絶対ないということを意味していまして、社会現象だというふうにとります。

 そして、Eビジネス、IT革命、ネット革命という言葉ですが、国家予算
8,000億円もついて、今やだれも口にしますけれども、定義というものはやっぱり未消化だ、個人個人の受けとりになっているということで、かつてないぐらいややこしいことになっている。その本質というのは一体どういうことかというふうに考えると、基本的には、情報を活用しようとするときの集権とか主体が、顧客サイドにシフトしてしまうといったことを指しています。ですから、商品をつくった場合に、メーカーが一番詳しいのが当たり前ですが、実はメーカーが詳しいのは自分の商品だけなわけです。ですが、消費者サイドが上回ることを知った場合には、それが主体を持つわけです。このシフトするといったところが革命たるゆえんで、IT革命とか、ネット革命という言葉はここでついています。
 したがって、情報・通信技術が革命だとは言っていません。この辺は日進月歩で当たり前なんですね。そういうことで、この情報活用の集権/主体が、顧客サイドにシフトするということに実に深いものがあるというふうに実感しています。ですから、Eビジネスと呼ぼうが、IT革命と呼ぼうが、何と呼ぼうが、みな同じことを言っていまして、相手先が強くなるということになります。したがって、各企業は今までコスト削減をさらにするためにプロセスを変えてきたわけですが、今度はコスト削減ではありませんで、情報活用の主体が顧客に移るんであれば、そのためのプロセスをまた見直さないといかんなということで、ここに新たなBPRが要るというふうに言われています。
 この新たなBPRのところのみをEビジネスというふうに言ってます。この辺、一生懸命言いたいのは、IBMさんですね。ですから、Eビジネスというのは、IBMがつくって今や国際普通名詞になっていまして、地平線のかなたのお酒屋さんが、銘柄を知っていくような感じのことをよく伝えますけれども、実はそういうことではなくて、顧客に情報活用の主権が移るから、その準備をするといったことが、てんやわんやの雰囲気になっているというふうに今理解をしています。

(次号へつづく)

 

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