日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録


プリプレスの現状と展望(CTP) 後編

講師 斎藤光隆 氏 (株)モリサワ営業三部カスタマーサポートセンター課長補佐

   村辻博見 氏 (株)モリサワ営業三部トレーニングセンター係長     

平成13年11月21日 東京・茅場町「鉄鋼会館」

 



 モリサワの村辻です。どうぞよろしくお願いいたします。
 前半、CTPの版につきましてご説明させていただきましたが、ここでフロント部の編集についてお話させていただきます。実際のCTPの導入の前に、CTPを導入していただく上で必要不可欠なことというのは、やはりプリプレス側のデジタル化です。完全デジタル的なデータをつくっていただくことによって、スムーズにCTPに移行していただけると思います。
 昨今のパソコンの普及で、フロント部はかなりデジタル化が進んでおりますので、その分は非常に移行しやすい環境にはなってきております。ビジネスフォームのフォーム系の編集としましては、シンプルプロダクトさんのWAVE、あるいはミック・データサービスさんのiPRO等をお使いのお客様が多いかと思います。私どものほうもフォント以外にもいろいろな商業印刷用の編集ソフト等をご提供しておりますが、私どものMK-700というソフトでおつくりいただいているユーザーさんもおられます。
 一般的なプリプレスの編集ソフトでは、商業ではマッキントッシュを中心としたアドビさんのイラストレーターやフォトショップ、クォーク等のソフトが非常に多くはなっておりますが、MK-700は各メーカーから特化した編集ソフトということで日々、いろいろバージョンアップ等をさせていただきまして、時勢に合ったものをおつくりしております。私どものMK-700を中心に、どういうふうな工夫をしたり、また今後どういうふうな方向性に行くのか、その辺をご説明していきたいと思います。
 従来、どうしても専用システムといいますとハード、ソフトをセットでご提供する場合が多かったのですが、私どものほうも従来は、ハードもこちらでご提供するハードをお使いいただいて、システムとしてご提供してまいりましたが、やはり最近、印刷のほうではマッキントッシュが中心で進んでおりますが、一般的なウィンドウズマシンを使ったものも多くなってきておりますし、実際、ビジネスのほうではウィンドウズが主でございますので、ウィンドウズマシンを使った編集ソフトということでご用意しております。
 最近、私どももソフトでご提供する方向に進んでおりまして、ハードはユーザーさんでご用意いただいてソフトでご購入いただくという、専用ソフトではあるのですが、ソフト売りというものも始めております。
 やはりメンテナンスの面でユーザーさんのほうでハードをご購入いただいてソフトだけご購入いただくというのもいいのですが、やはりハードではトラブルも出てまいりますので、サポートも含めまして私どものほうでも一応推奨のハードはご用意しておりますが、特にスペック的にはどうというのはございませんので、ソフト的に見ていただければいいかと思います。
 専用ソフトの特徴としまして、先ほど文字のお話も出てまいりましたが、やはりそれが一番問題になりますし、今後とも組版的、データ的には進みましても文字の問題というものはやはりついてまいりますので、特にこのシステムではウィンドウズを使っておりますので、私どものほうでマッキントッシュでご提供しているPSフォントは使えませんので、ウィンドウズ専用のMK-700という編集ソフト上で使っていただく専用フォントというのをご用意しております。そういう書体もご用意しておりますし、当然1アプリケーションで全部つくっていただこうということで、図形処理やそういうものも標準で装備しております。これらをつくったものを、従来専用のソフトということで出口部分も専用のRIPでないと出ないという時期もございましたが、やはりオープンな時代ですので、どのメーカーさんのRIPあるいはワークフローRIPでも出していただこうということで、標準的なPSで吐き出そうという工夫もしています。そしてマック、ウィンドウズが混在するフロント部に白由にデータでやり取りしていただこうというようなリンク機能もつけております。
 書体のほうも専用書体をつけてございまして、マッキントッシュでご提供しておりますモリサワのフォントは現在のところ48書体、当初の明朝ゴシックからかなり増えておりますが、従来私ども手動写植でたくさんのフォントをご用意しておりますので、そのデジタル化は既に進んでおりまして、現在のところ152書体のデジタル化が済んでおります。ただし、マッキントッシュ版としてリリースさせていただいておりますのは、まだ3分の1ほどの48書体にとどまっておりますが、ウィンドウズ版でご提供するMK-700上ではそれに先行しまして152書体のフォントの中からお選びいただいて使えるという工夫をしてございます。
 その書体といいましても、やはり先ほどからお話がありますようなJISというコードの制約を非常に受けておりますので、JISの場合6,830字の中でうまく工夫をして組まないといけない。ですから似た字は一つのコードにまとめて簡略化している。ビジネスの世界であればそれで十分事足りるんですが、やはり印刷物をおつくりいただく場合、人名や地名で同じ字であっても点の位置が違うというだけで、それは代わりのもので代用するというのはなかなかいきませんし、そういう意味で拡張しまして約1万67文字、約4,000字ほど字を増やしてございますので、例えば常用・当用の違いで、「洗濯」の「濯」の字でも多少字形が違っておりますが、こういうものも標準でお入れしております。
 ただし、昨今OSに依存しないオープンタイプというものもそろそろ市場に出てこようとしておりますが、なかなかまだ普及というか、一足飛びにいかないというのは、日本の漢字というのは、これで十分だという字数あるいは字形がなかなかまとまりませんので、どこまで外字を持っていれば十分かというのは非常に難しゅうございます。やはり私どもの編集でもかなりの字は、従来は外字でないと打てないという字も標準では入っていますが、これだけでは足りませんので、やはり作字というのはどうしても必要になってまいります。その場合、スピーディーにつくってスピーディーに出さないと非常に問題がございますので、このi-glyph700というソフト上では既に標準で入っております字を呼び出しまして、それの必要な部分だけを抜取りまして一つの字にしてあげる。一例で「ア」を例に挙げてございますが、普通の「崎」という字と、例としまして「競争」の「競」という字の似たような部分を組み合わせて一つの字をつくる。この字に対してコードを割り振りまして実際の文章中でもお使いいただこうというふうな工夫をしてございます。
 その辺の組版も、最近は、一般的な商業印刷の場合であれば、特に最近ウィンドウズDTPのようにワードや一太郎を使った専用のソフトでなくても、あるものであればつくってしまえるような環境にはなってきております。ただし、すべてがそういう汎用的なソフトで全部組版ができるかというと、やはり細かなところで専用のソフトでないと生産性が上がらない。あるいは素人目には同じように見えましても、やや細かなところで違う。ましてフォーム系であれば、線一本の精度も問われますので、その辺の精度の高さのものを数値編集をしてつくらなければいけない。従来のDTPソフトのように見た感覚でデザイン的につくるというわけにいきませんので、フォーム系では特に数値どおりにきちっとした寸法のものを仕上げるということで、計算上きちっとしたものをつくっていただこうというような工夫をしております。
 当然フォーム系であれば、単位がインチになりますので、専用ソフトの場合は単位のところも白由にポイント級数、ミリ、インチということで切り替えることができるようになっておりますし、すべてが統一するのではなくて、文字部分は級数指定をしまして、座標系にはインチを使っていただく。インチの場合も横縦何分の幾つということで、事細かな数値単位が設定できるようになっておりますし、やはり作業する場合、白紙の台紙上で作業をされるよりは、グリッドといいまして、細かな等間隔の枡目が出たりしたほうが作業性が良うございますので、それもこういうふうなグリッドというダイアローグから任意の台紙をつくるということもできます。
 あるいは表組をつくる場合もマウスを使ってランダムにつくるのではなくて、ナビゲーター的なダイアローグを使って、基本的な表を早くつくりまして、そこから細かな指示をしていくというふうなことにしてございます。
 一般商業用の場合はイラストレーターを使ったりいろいろソフトの組み合わせで一つのものを組み上げますが、いろいろソフトを立ち上げるとそれだけメモリも使いますので、いくら操作性が統一されているといいましても、やはりソフトによって若干操作性が変わってまいります。1アプリケーションで完結したいということで、そういうふうな作図機能等も文字組版以外に作図機能も1ソフトでやっていただけるような機能を持っておりますので、あえて線画だからといってイラストレーターで書かなくても、ソフトの中で書いていただくというふうなこともできるようになっています。そのような形で、フォーム系のものもナビゲーターを使っていただいてつくっていただこうということもできるようになっております。
 問題になりますのは、フロント部でそういう形がスピーディーにつくり上げられましても、それを完全なデータとして外に吐き出すために、先ほどお話ししましたようにJISコ 一ド内の文字であれば問題はない。私どもも非常に楽なのですが、どうしても外字という部分の問題を含んでおります。それが全社的に統一されるというのはなかなか時間がかかります。それを期待して待っておりましてもお仕事は待ってくれませんので、やはりその辺をより早く出すということで、私どものほうも従来はコードですべて吐き出しますので、JISコード外の字はメーカー独自のコードになってしまいますので、例えばモリサワの編集ソフトを使われると、他メーカーさんのRIPではそこの文字が飛んでしまうとか、根本的に出せないとか、そのようにフロント部はよくても出口部分が違うものをお持ちであれば出せないという時期がございました。しかし、昨今はパソコンのパワーが上がりましたので、その辺で最近はJISコード外の字というのは、当然ソフト側で区別がつきます。すべての字をアウトラインあるいはビットで送りますと負荷がかかりますので、極力JISコード内の文字はコードで吐き出します。JISコードではないものだけフロントのパソコン側でRIPの代わりをして出してしまおうというふうなことをしております。ですから、文字化けのない状態でいろいろRIP等に出していただけます。
 例えば「祗園祭と森鴎外」。従来のパソコンであれば「祇園祭と森鴎外」しか出すことができませんが、旧字「祗園祭・森鴎外」を出した場合、線を引いたところだけはRIPに送る場合はコードで吐き出さずにリッピング処理をして送る。ですから、RIP側にダウンロードする必要はございません。字をつくったからといってRIPのほうにフォントを入れるのではなくて、オペレーターの方は意識をせずに、そのままプリンターやRIPにお出しいただきますと、JISコード内の字はコードで送りまして、それ以外のものはビットで送るということで、出たものを見比べていただくと何ら遜色なく出せるかと思います。
 つくられたものを、先ほどお話ししましたように1ソフトで全部つくる。ちょっと矛盾しますが、やはりイラスト等は別ルートで、イラストレーター、デザイナーの方が書き込まれた、あるいはホテル関係のフォームのイラスト等はデザイナーの方はフォトショップ等、あるいはイラストレーターを使っておつくりになったというものとリンクさせるために、ウィンドウズマシンとマックというのは基本的には通信できませんが、通信できるようなソフトをご用意いたしまして、マッキントッシュで構築されたシステムの中にもウィンドウズが入りましても何ら違和感なく結びつけていただけるような、例えばPCMACLAN、マックとウィンドウズ双方向に通信するようなソフトを入れることによって、特に違和感なく使っていただけるような組み合わせにしてございます。
 それによりまして、従来のシステムに編集システムとしてウィンドウズが入りましても、あるいは出口部分にいろいろメーカーさんのRIPやセッタが存在するかと思いますが、それに対しても何らフォントの心配もなくお出しいただけるようなシステムになってございます。
 後半のCTPに出される場合、当然、単ぺ一ジで完全デジタル化がされましても、やはり植版されたり、あるいは印刷機によってクワエが違ったり、あるいは版サイズが違いますので、つくったものをその印刷機に合わせてスピーディーにお出しいただくために、当然、ぺ一ジのもの以外にもこのような面付けというものが必要になってまいりますので、私どもではSheet Worker Proという面付けソフトをご用意いたしまして、こちらで植版していただいたり、あるいは版サイズを指定した中に目的のおつくりいただいたデータをつけるという形にしております。これも専用の面付けソフトではなくて、PSファイルを面付けできるソフトになっていますので、取り立てて私どものシステムでつくったものでないと面付けできないというのではなくて、あくまでもPSファイルであれば面付けができるという形になっております。
 そのようなことで、フロント部はかなりデジタル化が進んでおりまして、後はフィルムに出すのか、プレートに出すのか、簡単に言えばその違いになっております。数年前にイメージセッタが普及したころのように、アナログからデジタルに移行するときと違いまして、既にフィルムセッタ等でフロント部はデジタル化されておりますので、実際に私どももフォーム系のお客様のほうでCTPを導入いただいて立ち会わせていただいた経験も何社かございます。その場合、正直なところこちらが心配するほどCTPを入れることによっての立ち上がりにトラブルがあるとかはなくて、逆にフィルムセッタ等を入れたときのように、出ないとか、例えば線画だけ出して、またアナログ工程でどうこうするとか、そういうことはなくて、本当に前がデジタル化が進んでおりますので、そのままフィルムの代わりにセッタに出すという感じで非常にスピーディーに上がっております。
 どちらかというと前工程の方は、フィルムに出るものが版に出るということで、非常に喜ばれるというか、一歩前進したというイメージをお持ちですが、印刷側の方から見られると、従来の版では上がってくるものはプレートで、ましてご白身でいいものを刷っているという白負がございますので、表向きはそう喜ばれないのですが、実際、入ったところの機長さんなりに刷り上がりのお話をお聞きすると、非常に見当精度はいいということです。前から言われていることですが、やはり言葉で聞くより実際ご白身の会社でお仕事されているものをCTPに出されて、出力されたものをごらんになられると、非常に網点の精度もよろしいですし、やはり一番は見当精度がいいということで、刷り味が全然違うということはお邪魔したお客様すべてがおっしゃっております。その辺の効果はやはりCTPを入れていただく上での一番のメリットではないかと思います。
 そういうことで、後半は再び斎藤からもう少しCTPを導入される上でのRIP等のお話を続けさせていただきたいと思います。
 では後半を進めさせていただきます。
 もう一度CTPのほうへ戻りまして、ビジネスフォーム印刷と商業印刷の違いは何かということです。用紙、インキ、版の断裁機・曲げ機の三つが非常に違うといえます。
 用紙は、上質紙、ノーカーボン紙がほとんどで、一般商業印刷のコート紙、アート紙というのはありません。上質紙、ノーカーボン紙ともに紙粉が非常に発生しやすく、版の耐刷というところで非常に大きな悪いファクターになります。
 インキに関しましては、普通の油性インキとノーカーボン用の減感インキ、UVインキというのが大きく使われております。この辺も一般商業印刷とはちょっと違うところでして、この耐溶剤性が、フォーム印刷でどういう版を使うかというときの選定条件になると思います。
 一番大きいのが、版の種類が多い。ビジネスフォーム用にCTPを導入された事例というのはあまりよくは知りませんが、版の種類として15種類、20種類あるということで、一つのCTPの版はそんなにありませんので、勢い、出した版をマニュアルでカットして、その後、版の曲げ、クワエとクワエじりをマニュアルで曲げてしまうというような工程が必ず必要になってきます。
 それを受けまして、ビジネスフォーム印刷で刷版に何を要求されるかということをまとめました。PS版と同等以上の耐刷というのがまず一つのポイントです。普通のPS版は大体10万枚というのが目安になっておりますが、やはりこれと同程度の版面強度、耐刷力は望まれます。三菱製紙さんのa-2400という版材は、そこまで耐刷がありません。5万枚というのが公称ですが、フォーム用で刷られますと、紙粉がたくさん出ましてそこまで持たないのですが、わかった上でお使いということで、10万枚目安と書きましたが、そこまで持たない版は版でお使いになるというようなことはされているようです。
 無処理のプレステックさんの版は、やはり耐刷は公称10万ですが、そこまで持ちません。持たないというのを覚悟されてお使いになられる。プレステックの版というのは、スマメがございませんで、保水性というのが非常に弱く水を大量にあげないといけない。その辺の印刷適性もわかられた上で採用されているというところがございます。
 画像の再現力、解像度ですが、やはりこれもPS版と同等以上ということを求められます。画像の再現力に関しましては、PS版よりどのCTPの版もいいです。ハイライトからシャドーまで上回っておりますので、これは問題なくクリアできていると思います。
 版サイズの種類の多さは、現場を見せていただくと、サークルカッターで切られているのですが、インタビューを実際にさせていただく限り、それで大きな問題にはなっていないということです。しかし、実際の運用で私どもはちょっと確信は得ておりませんが、そういったサークルカッターでの断裁とマニュアルでの曲げ加工を伴うということです。その辺の精度がどうかなというところがございます。きっちりと曲げあるいは断裁の精度を出すということが非常に重要かと思われます。
 耐インキ特性は、UVインキ、減感インキのインキ特性。インキ特性というのは、若干乗りにくいようです。普通のPS版にしましても乗りにくいようですが、それとともに溶剤に対する耐溶剤性というのが求められます。先ほど言いましたようにコダックさんのがサーマルですが、溶剤性がありませんので使えない。セレクトをされてしまうかと思います。現状でビジネスフォーム印刷に採用されて実績のある版というのは、富士フィルムさんのサーマル、三菱化学さんのサーマル。これは耐刷性、耐溶剤適性もクリアしておりますので、問題なく使われております。

 先ほど申しましたa-2400は、耐刷性はちょっとないのですが、その辺はご理解されてお使いになられています。プレステックの版というのも耐刷性と水の乗りというのをわかられた上でお使いになられているというようなビジネスフォーム業界様向けの導入事例がございます。

 あと、青色レーザのガリレオの版というのは、AGFAさんはこれからテストしていきたいということをおっしゃっていました。まだ実績がございませんので、何とも言えないのかなと思います。
 CTP出力した版の扱いは、バーニングという熱処理がありますが、熱処理で非常に耐刷性は増します。これもできる版とできない版がございます。富士フィルムさんのネガサーマル、フォトポリマー系というのはベーキング工程可能ですが、ポジのサーマルというのはできないという制限があります。そういった仕様というのが細かくありますので、耐刷性を増すという意味では、実際に採用されるときのポイントにはなるかなと思います。置版ですが、普通のPS版と同様にガムが使えますので、どの版もガムを引いて保存されるということです。取り扱いに関しましても、あまりストレスをかけたりするといけないというのは普通のPS版と同じです。特にPS版より弱いとか強いとかということはございません。
 在版フィルム、デジタル置版というお話ですが、アナログフィルムのデータをどうするかという問題になります。それをデジタル化するにはコピードットというスキャナーの機能でデジタル化するしかありません。在版フィルムの扱いに関しては、牛乳のパッケージとかいろいろあるパッケージ印刷でも、非常にアナログのフィルムが在版フィルムとして多いです。この業界では積極的にコピードットでデジタル化していこうという動きがあります。非常に版のサイズが大きいので、どのサイズのコピードットを使うかというのもテーマになっています。
 ビジネスフォーム業界さんもアナログのフィルムが非常に多いのですが、これは、パッケージ分野、印刷分野のように積極的にコピードットでデジタル化しようというよりも、共存させていこうというような動きではないかと思います。デジタル化したいというご意向はあると思いますが、積極的にはパッケージ分野をデジタル化しようという動きはないように思います。
 インキ・キーの情報は、刷り出しを早くするためのインキ・キーのコントロールは、1色、2色の印刷機でももちろん必要です。そういった場合、リョービさんとか大日本スクリーンさんから、その印刷機に合わせたインキ・キーのゾーンを表示できるインキ量表示機能がついたソフトがございます。インキ・キーの数やレンジとか、モトローラーの計数とか、いろいろ設定できるようなソフトがございます。こういったもので表示したものをもとにインキ・キーの調節をされるというのは刷り上がりを早くするために必要ではないかと思います。
 次に一つ重要なRIPの技術をちょっとお話しさせていただきます。
 CTP導入でいろいろメーカーさんは、普通のイメージセッタの置き換えでCTPを考えてはいけない。ワーク量を考えたRIPを使ってむだのない工程でCTP化しないといけないというのをおっしゃっていました。そういった切り口でワークフローRIPというのが販売された時期がありました。それは一理はありますが、直前での直し、ぺ一ジものでたくさんぺ一ジが来まして、その間の一つのぺ一ジを差し替えたい、あるいはある一つのジョブの中のある部分を変えたい、そういった修正、変更がどんどん出力の途中でも入ってくるというのはわかります。
 それに対して、大もとのデータに戻らずに、出力をうまい具合に省力化してかけたりというようなことが、ワークフローRIPの開発の根本にありました。それとともにジョブチケットというか、全部自動処理させてしまいたいということがありまして、ジョブチケットで印刷の自動処理をしたいという思想があります。その二つの思想でワークフローRIPというのが提唱されて、いろいろメーカーさんから開発されて出されております。
 もちろんその思想は正しいのですが、イメージセッタ時代のシンプルな出力機に特化したRIPが悪いのかというと、決してそうではございません。出力に特化した部分だけ非常にコンパクトで小回りが利いて、フットワーク軽く出力できる。なおかつ価格的にいいますと、ワークフローRIPは非常に高いので3分の1ぐらいのコストでRIPが導入できる。メリット・デメリットがありますが、そういった違いがあります。そういう違いを踏まえていただいて、CTP導入のときはどちらを選ぶかというようなことになると思います。
 ワークフローRIPの種類というのは、AdobeさんのExtremeの技術をフルに使っているPDFワークフロー型と、Adobe Extreme技術のPDF変換部分を使用して独白の中間ファイル出力を可能にしたものと、2種類あります。
 前者のExtremeをフルに使われているというのは、PDFべ一スで全部処理されますので処理が早いです。後者のほうは、もう一度PDFをPSに戻して自社のRIPでリッピングをかけるというむだな工程を踏んでいますので、こちらは時間がかかります。しかし、RIPの技術というのは従来から持たれている技術ですので、非常に安定しています。こちらのほうの製品的にはApogee、Brisque、Celebra、Trueflwoなどがございます。前者のほうではクレオサイテックスさんのPrinergyというように、大きく二つの流れに分かれております。
 結局どちらのRIPがいいのかということになると思いますが、フィルムセッタの置き換えで十分だということです。コンパクトな容器が求められるというところにはシンプルRIP。シンプルRIPは私どものRIPにもありますが、私どものRIPやスクリーンさんのADのRIPとかございます。そういったRIPをお使いになられて出力に特化されてコンパクトに出されるというようなやり方があるかと思います。印刷の無人化というのを考えられて処理の自動化を前提にされるような出力のトータルの中核をなすようなものに考えられる場合は、やはりワークフローRIPというのは一つの選択肢になると思います。どちらでどうかというのは、その辺のチョイスがあると思います。
 ビジネスフォーム業界様ですと、サクサクとコンパクトに出されるシンプルRIPがよろしいかなと思いまして、後のほうのシステム図にはそういった一例で図を描かせていただいております。
 大事な校正ですが、やはり1RIPでフィルムなりCTPに出すものと校正に出すものというのは、同じRIPを通っていくべきだと思います。そうはそうですが、どういったデータが渡せるかというと、このRIPから、例えば校正のカラーのレーザプリンタですが、TIFFなどは非常に化けの少ないデータで渡されると、DDCPとして使えると思います。完全な色調を見られる校正はないと書きましたが、そのとおりだと思います。オフセット印刷でウェットなトラッピングがかかってくる表現というのは、レーザプリンタでもできませんし、ケミカルのデジタルコンセンサスとか、ああいったものでもできません。2次色、3次色の掛け合わせ、グレーというのが問題になるところというのは、まず本機でオフセット印刷しないとできないと思います。そういう意味で、そこまでの校正を求められるときには本機でしないといけない。

 どのレベルで校正を切るかというのは、コンセンサスによるでしょうが、ビジネスフォーム業界様ですと、そういった非常にグレーの部分が色のシビアさをスキップできるかなというところもございますので、TIFFで1RIPでカラーレーザプリンタで出すというのが一つの選択肢になるのではないかと思います。
 私どものケーススタディーで、一般商業印刷向けにCTP化された会社さんの課題といいますのは、CTP化して非常に精度も上がって工程も省けたが、依然として本機での校正を要求される。ここまででいいという校正で取り決めたのだが、やっぱり本機で出してくれというような要求をされる。修正が頻繁に入る。困ったものですが、CTPで工程を短くして材料を安くしているのですが、その辺のメリットが吹き飛んでしまいます。この二つが取り決めとはかかわらずに入ってきてしまうと非常に困った問題ではあります。
 入稿データに不備が多く、直しを無料で要求されるということもあると思います。商業印刷向けですと非常に使用するソフトの数も多いし、ハードの種類も多い。OSの違いも多いということで、ソフト・ハードの絞り込み、検証するところが多いです。「入稿データ作成のルールづくり」と私は書きましたが、ハードルは結構あると思います。いろいろ規制をしないと絞り込みはできない。入稿データの作成のルールづくりというのはなかなか難しいと思います。
 次に、そういった問題もありますが、成功した会社さんからのアドバイスということで、まとめました。
 何といっても、出力までの時間が短くなり、かつ予想できるということで安心感があります。これはどの会社さんもメリットとして感じられているところだと思います。
 これからCTPを導入されるというところに多いのですが、フィルムのラインも安心のために置いておきたいということで、何かあるとフィルムで出してやろうという保険みたいなことを考えられます。しかし、導入されてうまくいかれたところというのは、やはり導入したらそれで行ってしまおうということで、フィルムはもうやめようとスパッとした思い切りよく取り組まれているところがあります。それが大事だということです。強い信念でCTP化してしまう。フィルムはもう出さないというような信念が必要かなと思います。
 なぜ保険がいるかというのは、やっぱり機械の信頼性ということになると思います。私も夜中にショールームのほうでCTPで出力していて、もしこれがとまったらどうしようかなという不安もなきにしもあらずですが、その辺はやはり機械のほうの安心感が大事かなと思います。そういったところのメーカーさんを選ばれるというのが結局は大事かなと思います。
 それから、フィルムですと、フィルムで出したものを白由に動かして版を焼けるというところがありますが、版にしてしまいますと固定されてしまいます。固定されたものを固定された印刷機にかけて、印刷範囲が決まります。決まったところに紙の位置が決まりますのでずらしようがないわけです。その印刷機と印刷範囲と、版と画像の位置、紙の位置というのは、明確に図面で書けていないと何度もやり直しになりますので、その辺の寸法表、図面化というのは大事かなと思います。これは私もそのように思います。
 それとCIP3は不可欠というご意見です。やはり刷りだしにCIP3の有用さというのをご理解されているようでなければいけないものという認識をされております。
 最後のほうに、ビジネスフォーム業界様向けのCTP化ワークフロー図ということでまとめてみました。ポイントはシンプルRIPということで、ワークフローRIPはちょっと合わないのではないかと私は思います。シンプルRIPでコンパクトにサクサク出されるのがいいのではないかと思います。
 横にコンパック、ProLiant、これはデジタル置版のためのサーバです。シンプルRIPですと何にでもいいのですが、カラーのTIFF等で信頼性のある化けないデータで校正をされる。インクジェットプリンタなりレーザプリンタで出される。出力は菊半までのCTPをセットアップされればどうかと思います。菊全までのサイズというのは全くいりませんので菊半までということです。サーマルであろうがフォトポリであろうが何でもいいと思いますが、ラインに入れられて、あとは手動での現像機までの搬送ということになると思います。一番大事な版カット、版曲げということは、マニュアルでつきまとうのですが、こういった工程を経てオフセットヘ進んでいくというような流れになるフローが考えられます。
 最後に「提言」ということで、数少ないですが、ビジネスフォーム業界様がCTP化を導入されたところをケーススタディーで見せていただくと、やはりCTPでの精度の良さということをメリットとして感じられています。あと、印刷の標準化ということにトライされようとしております。版の精度だけ上がっても印刷の精度が標準化されないといけないということにお気づきになられてトライされているという非常にメリットを享受されているというようなところが見受けられます。
 商業印刷に比べまして、色校で劇的な省力化というのはあまりないかと思いますが、逆に商業印刷で、その辺うまいこと省力できるであろう校正の部分で、いつまでも校正を引きずっているようなことですとCTPの効果はなくなってしまいます。その辺のややこしいところをスルーできるということをむしろ逆手に取って、そこはそれでいいんじゃないかということで、もう少しCTP導入に積極的になられてもいいかなと思います。
 フロントの編集の部分では、やはり使えるソフトというのか幾つもありません。ないということはつくられたデータの安定性というのが非常にいいかと思いますので、この辺も検証が楽かと思います。その辺も難しいところをスルーできるというようなアドバンテージみたいなものがあるかなと思いますので、材料の省力化ということと、精度が上がるというその辺に絞られてCTPのシステムを組まれてもいいのかなというご提言ができるかと思います。
 以上、まとまっていたかどうかわかりませんが、技術的なアドバイスをまとめさせていただきました。なお、CTPの機械の比較表などは、お出しできる資料はお送りいたしますので、ご入り用でしたら、お申し出ください。以上で私どものお話は終らせていただきます。ありがとうございました。

−了−

プリプレスの現状と展望

〜ビジネスフォーム印刷のCTP化について〜

2001.11 「株式会社モリサワ」

 

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