日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー[T]
「フォーム印刷におけるフルカラー化の実践」

講師 細井  功
 氏
その2
ジーエーシティ(株)
マーケティング&インフォメーション部マネージャー

平成17年11月28日 於 トッパンフォームズ1階ホール


   その左のグラフはデジタルデータ用のデータです。アナログでいえば、横軸がフィルム上刷版の網点パーセントということになります。それに対する印刷物上の濃度、網点面積率。それをドットゲインで表します。
 網点の形状により、こういう素直な山型になるのがベストです。あるところは急に下がってくるようなトーンジャンプに注意することで、きっちりと把握していくということが重要です。
 これはよくご存じのことだと思いますが、印刷というのはインキ濃度=用紙上に乗っているインキ皮膜の厚さを意味しますが、それとあわせてインキが印刷機でプレスされて潰され横方向に広がる。そういうものを「ドットゲイン」というように呼んでおります。

   ドットゲインは網点の周囲の長さに比例して太る。そういう理屈でいきますと通常網点というのはゼロから100 %ですが、50%のところが、周囲の長さが一番長くなる。ということは、一番太りやすい部分にあります。
 60%になりますと、今度、網点が小さくなってきますのでこの周囲をみていると狭くなるということです。シャドウ側にいこうと思うと、ドットゲインが下がってくるということです。
 先ほどのようにプレスされ出てくるドットゲインと、視覚的に、光学的に見えるドットゲインと二つありまして、それをあわせて一般的に「ドットゲイン」と呼んでおります。
 
   
   基本的には入射光で入ってきたものが反射し、その反射してきた反射光を見ています。実際にはインキの部分だけでなく、印刷物上にはない紙白のところのにじんだ部分から反射しているものも認識されています。そのように視覚的、光  
 
  学的に捉える光学的なドットゲインという考え方があり、それをあわせた数値もドットゲインとして表現されています。
  このへんは一般的な話ではあるのですが、網点面積の計算は、濃度計のベタ濃度と網点濃度を比較する、マーレーデイビスという式を使って計算されているものがドットゲインとして評価されます。 実際こんな形でやられます。
 このユール・ニールセンというのは、「n」という数字がありますが、用紙のファクターを入れていかなければいけないということで非常に変動要因があるので、一般的にはマレーデイビスの式であらわされています。
 
   
   網点コントラストです。これは「K値」という形で表現されています。単純にベタ濃度から75%の濃度を引いたものをベタ濃度で割ったものがK値で表現されます。
 これだと非常に高い盛りで印刷していった場合、この75%の濃度はこよなくベタ濃度に近づいてきますのでパーセントの数値が小さくなってきます。それをベタ濃度で割りますので、K値としては非常に低い数値であらわれるわけです。
 例えば、1.83なんていう形ですと、75%の色濃度が非常に上がってきますので、全体としてK値というものが下がってくる。通常、アートコート系の紙ですと、だいたい0.45ぐらいが適切であるとされています。
 
   
   こんな形で表現できるかなと思います。
 次に、グレイバランスというところが重要になってくるのですが、それを表すのは、L* a* b* (Lスター、aスター、bスター)という数値です。これは国際基準でL* a* b* というものが決められておりまして、色を3次元の空間で表そうという形です。
 
 
   ちょっと前後してしまうのですが、a* とb* のところに、色相という色めを与えて、L* というこの縦軸に明るさをあらわす。色として3次元のどの位置にいるかというものをL* a* b* というような形で表現しています。
  〔3―16〕これはa* b* の平面のところです。+a* という方向へ進むとマゼンタ、b* の方向ですとイエロー、−a* になりますとグリーン方向、−b* になりますとブルーの方向というような形で、センターに近いところはグレーゾーンを表しています。
  〔3―17〕色の差をΔE(デルタE)というもので表現しています。a* 色とb* 色を距離の値としてあらわしているのがΔEです。a* とb* がどれくらい離れているかというもの
  を表現するときに、ΔEというものを使っております。
  では、ΔEはどんなものかというのは、いろいろな研究機関や機械メーカーなどが出しておりΔEが少なければ 少ないほど色の差は少ないということです。 例えばこれはFOGRA(スイスの研究機関)です。0.2 以下は「目に見えない」、0.2 〜1.0 というのは「非常に少ない」、3.0 というのが「少ない」、3以上になりますと「かなり差が出てくる」というような評価です。
 これは、ハイデルベルグのΔE管理です。2〜3.5 というところが真ん中くらいで、1以下は「非常に小さい」、5以上は「かなり差がある」という評価です。
 
 
   さらに 国際基準も設けられています。ISOの規定ですと、ΔEが1以下で人間の目では差を見分けられないレベル。ΔEが1.6 〜3.2 は、離れている2つの色の差が見分けられないレベルということで、まずまず合っていますよと。3.3 以上になりますと感覚的には同じ色として判断されるレベルになります。
 よくΔE=3以内というような形でお聞きになったことあるかと思います。そのへんはこういうような見方からきています。
 グレーバランスはどういう形で表現されているかということです。これは、先ほどのL* a* b* のa* b* の表面のグラフです。例えば、そのときのドットゲインのバランスがどうであったかを見るときに、シアン、マゼンタ、ブラック
 
  はほぼ同じような形で、黄色だけ非常に低いカーブになってしまった場合は、グレーバランスとしては、+b* のほうがイエロー成分になりますので、こちらの部分が十分足りていないということで、全体的なグレーのバランスは中心から下側のほうにずれていきます。そのため全体的に青みの強い印刷物になってしまいます。
 
   
   ですから、理想的には、中心のゼロ〜100 %までのところのだいたい60%までくらいまでは、中心の2から3くらいに入っているくらいのグレーを整えていかないと、印刷物としては非常にバランスが崩れている形になるということです。
 トラッピングは印刷条件やインキの持つ特徴によって若干変わりますが、色濃度で違うのですが、だいたい65〜90%のところに入っていないとトラッピングとして異常な数値になるということです。
 
   
   レッド、グリーン、ブルーというようなところです。
 だいたいこのくらいのバランスできていれば、トラッピングとしては問題ないと考えられます。
 先ほど言ったように、L* a* b* のa* b* の、これはマゼンタ、シアン、イエローと、2次色のレッド、ブルーバイオレット、グリーン、これを0〜100 %まで、この図表にプロットしています。図表の外形を結んだ六角形の大きさが印刷で表現できる色領域ということになりまして、濃度にアンバランスが出ますとその形が崩れだします。あわせてここの2次色の通っている線が移動して異常な数値を示すので色を捕らえる上で、カラーガモットが非常に重要な特性になってくると思います。
 
   
 
   この様に フルカラー印刷の場合には今までになかった管理が要求されてきます。先ほどお見せしましたが、標準的なチャート、いろいろな管理要素が把握できるチャートを作っていただきまして、まず現状印刷の状態というものを把握していかなければいけないのです。
 その次に、印刷機側の整備というものをきっちりやっていく必要があります。その上ではじめて4色の印刷基準というものを確立する、という流れが必要です。
 これができれば、標準的な印刷物からプリプレスサイドへの基準を反映させていける。例えばその一つはスキャナーの設定であったり、プロファイルを作ってみるというようなこと。あわせて管理手法を確立していく。
 そういうような手順を踏みませんと、なかなかカラー印
 
  刷というものがうまく立ち上がらないと考えております。
  繰り返しになりましが、印刷機の整備というのは非常に重要なファクターです。このあと知識さんのほうでお話があるかと思うのですが、このへんをきっちりやって、是非うまいカラー印刷を確立する流れを作っていただければと思います。
  印刷機の整備、その他の諸々のいろいろなところがあるかというようなところをざっとまとめさせていただきました。
 整備項目として、水のコントロールをしっかりやられてなく、水が過剰に入っていけば印刷物の網点そのものが崩れていく状況になりますので、しっかりした湿し水の管理もしていきましょう、よということが重要だということです。
 
   
 

 スキャナーのグレーバランスというものを決定していく。
 プロファイルのチャートを使ってDDCPのほうへ反映していきましょう。
 結局、バランスのとれた標準印刷物というものがあって、校正、スキャナカーブ、プロファイル、品質基準というものへすべて流れていきますので、「バランスのとれた標準印刷物」の部分を最初に作らないかぎり、カラーマネジメントの4色印

 
 
  刷というものはなかなかうまくいきませんよ、ということがまとめになります。
  最後に、今、油性のほうで話がかなり出てきているのですが多色印刷の持つ可能性についてです。
 これは、いままで4色で再現できなかった色を7色で再現していこうというところです。一つは、印刷の品質を上げたい。もう一つは特色インキを削減していきたいという考え方です。特色インキですと色替を行わなければいけないということで、その回数を削減していきたい。さらに 特色になりますと品質管理が非常に難しくなるということで、簡素化された品質管理を実現していきたいというところです。
 
     
 
   一般的な4色の色が再現できる領域に、若干鮮やかな色相のグリーン系とオレンジ系インキの2色をプラスして、いままでの領域よりも広まったような形で色表現範囲が増えていきます。
 ハイファイ印刷と呼ばれるような7色。これはグリーン系とオレンジ系と、ブルーバイオレット系のインキ、3つを加えて一挙に刷ってしまうというようなことで表現範囲がさらに広まってきます。
 今、丸ポッチであらわしているのは、パントーンのところにある特色の色をこのようにabであらわしています。いままで4色の再現できなかった範囲は、全部特色インキで対応していたのですが、これを極力特色インキの数を減
 
  らしていく流れ、あとは、7色にすることによって印刷で表現できる色領域を増やし、印刷物の品質を上げ差別化を図っていこう、という流れが今ちらほら出てきているというのが実情です。
 カラーを進めると、将来的にこういうことのBF業界のほうに関連してくるであろうと考えております。
 
   
 
   このへんは少し専門的になりますのでざっと流しますが、4色から6、7色になるので、モアレが今よりもっとシビアな形で出てきます。そういうことでスクリーンの組み合わせを考慮しなければならない。
 ベタ濃度、ドットゲインによる色調の変化が出てきますので、そのへんを考える。あとは色間の見当精度をどう向上させるかです。
 いままで 特色インキを使用してベタで表現され滑らかな印刷でしたが、175 lpi を4色なり6色で表現していきますと、従来のベタの色合いが、網点が見えてしまうという現象があります。そこで、FMスクリーンという非常に細かな特殊な網を組み合わせ、目視レベルでは特色インキと
 
  変わりのないベタ表現ができます、という技術が必要になってきます。
 角度という概念がないFMとの組み合わせということが必要になってきます。さらに いろいろな組み合わせが考えられますが、版への出力はCTPが必要になってくるということだと思います。
 
   
   FMになりますと、網点が非常に小さくなりますので、版そのものが受容できるインキ量が限られてきますので、印刷上の注意が必要になってきます。
 あと、インキ皮膜そのものが薄くなります。通常のインキ濃度では薄くなってきますと、色相そのものが若干変わってきます。そのへんに関しましてはジーエーシティでいろいろやってありますので、何かあればいろいろとご質問していただければと考えております。
 FMとAMでは色相が変わってきます。
 
   
   
   
   ドットゲインというものがバラついていますと、見えてくるものが変わってくるということで管理が必要です。
 〔スライド4―10〕同じインキを使って、条件が変わってくると、カラーのスペース(色の表現領域)が変わってきてしまうということで、当然、印刷管理というものが非常に重要になってきます。
 〔スライド4―11〕多色印刷については情報提供で専門的なことも入れてあるのですが、基本的にはインキ種類による発色、濃度/ドットゲインの印刷条件による発色、というものがそれぞれ異なってきますので、この組み合わせをしっかりしていく必要があります。
 話があっちこっちいったりして申しわけなかったのですが、フルカラーを取組んでにいくときには、管理要素が非常に大きくなって、それをきっちり管理していかないと、なかなかフルカラーをクライアントに安定供給できないことになります。
 これで講演を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
 



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