日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー[U]
 「印刷品質維持・管理手法について」

  講師 知識 三富
 氏
その2
東洋インキ製造株式会社 オフセット技術部

2006年1月10日 


 
 具体的に数値管理はどのようにするのか?管理意識を高める為に生産機プレスを中心にどこに問題があるか、どこをどう管理したら良いのか、とにかく生産全体を見える体系化しミス・ロス削減し利益確保の意識をもつ事が第一歩です。管理されていない盲点として、ムリ・ムダ・ムラなどの日常業務に有ると思います。「印刷の原理原則に基づく基本的な事」「重要な位置付けだが、だれも実施していない」「お金をかけずに最小限でハイリターンな管理」という事です。実施には担当者の「やる気と知恵と行動」が重要であり、ミス・ロス・クレームが出ると予定品質と生産が達成できず品質・コスト・納期も守れない結果になります。
 オフセット印刷管理はまだまだやる事が沢山あります。

  管理すれば、コア技術も自社内部で確立できる。フォーム印刷業界でも、カラー印刷は利益が出る印刷の位置づけです。
印刷技術土台は何を管理すれば利益が出せる方向?意識を持っていっていただければと思います。
 
 
 

 プレスの数値管理の要素と項目ですが、まず感覚的要素と管理要素を可能な限り数値化する。取れるものは全部取ってしまう。自社のなかで、設備、人材等への多岐に渡る管理、実施しようと思えば何だってできる。例えとしてトップダウンで指示が有ればとにかくできる環境になります。
 どの様な内容にて管理を行えば良いのか?印刷の原理原則沿う変動要素・箇所とどのぐらい変化するか具体的数値変化量を確認する事が重要。変動要素を早く捕まえる事です。ですから、プレスのコア技術というものをとにかく立ち上げるため、まず工場印刷環境条件の中にどの様な変動要因があるか?把握方法として施策は、とにかく数値化を実施する事が一つのキーポイントにしてい

 
  ます。
 まず工場内の温度・湿度が1日のなかでどれくらい変化するか、また四季折々のなかでどのくらい変化するか、具体的に掴んで頂きたい。印刷には必要なインキ、湿し水の特性や置かれている環境や条件にマッチしているかどうか。印刷機材条件で、ブランケット印圧、ローラー圧、ゴム硬度。これはすべて印刷機には必要条件です。特に消耗品関係で劣化する内容も変動要素になります。これに機械的な不具合、メンテナンス管理が関わりトータルで管理する事が重要です。
 
 
 

 「プレスの温度データ」印刷条件・数値化として温度を軸にとらえています。これは印刷機のローラーの配列ですが、水舟や各ローラー、壺、版面、ゴム胴というのを縦軸に採り、横軸には各ユニットの胴数、その右左を放射温度計で計測致します。
 この数字だけを見ても現状把握・その状況が理解しにくい為に、エクセル表にデータからグラフに変換します。縦軸に温度を表示、横軸にユニット数、それからユニットの右左をとります。
 赤いライン、ブルーラインがありますが、この様なブルーラインになれば非常に良いのですが、この状態を説明すると1色目を右、左、2色目で温度に差が有る。この様なバラツキがあるとトラブルである品質変動の要因、利益

 
  が出ない原因がここに存在する事になります。
 この様な実機上のプレスの温度を計測し、まず現状はどうであるかということを数値化する。
水舟、メタリングロール、版着けロール、は一番重要なポイントですが、先ほどオペレーターの意識調査のデータを確認しましたが、地汚れやゴースト、過乳化、この様な状況は・どの様な事を意味するのか?この管理が手薄になるとトラブルが発生し易い方向と予測できます。
 印刷中にオペレーターの方が「今日は調子いい」「悪い」と不明確な表現の言葉が有り具体的対応が出来ないケースがある。印刷条件等を温度で捕らえ、グラフ化する事により感覚的な事でなく状況が見えてきます。
 
 
 

 それから、これも同様な計測で違うプレスの計測グラフです。このグラフを単純に見てギザギザ、山谷ありで、非常に問題がある状態です。給水関連温度・インキロール温度・版胴・ゴム胴等の状況を数値で捕える事など過去5年前から実施してまいりました。ビジネスフォーム、オフ輪、枚葉を含め様々な機械・機種の条件を実測し印刷品質安定化への必要条件が良く見えて来ました。数値化の管理手法を実践推進する事で結果的にトラブル減少や生産性向上と品質安定が出来き、CTP導入時の立ち上げが順調に行なえ条件確保も出来る様になりました。

 
 
 

 大きな要素は、ローラーのセットデータ・インキロールのニップ設定値です。
 ローラー上に白インキをまいて、縦軸に各項目及び場所と機械メーカーの推奨されるローラー間のニップの数字を並べ実測した数字が推奨されるニップ値との差。ピンクは、不適正な箇所。この表はピンク色が大半、この印刷ユニット全体が印刷条件の不安定である事が予測できます。
 昔から各印刷会社さんにプロといわれる方が在籍し常に印刷機のコンデションを、感覚や経験値・機器を使用し微調整されています。調整実施には長年の経験が必要であり早期習得には数値実測値を見てどう判断していく方法。これも一つの要素かなと思います。

 
 
 

 白インキでローラーをチェック。これは目視確認ですが、インキ各ロール状況や呼び出しロールのニップ状況です。現状過乳化傾向や色が合わないとか、地汚れ発生などの要因も、ターゲットである校正品質が安定していても、これを印刷するプレスのローラーのコンデションが悪るければ印刷品質が忠実に再現出来ない事になります。ここに利益が出せない一つの条件があります。
 徹底的管理する方策として、この様に白インキを使うというのも一つの手です。
 これも私の宝物なんですが、この様にデジカメ写真の物的証拠です。現場で即、出来る簡単な管理方法です。是非試してください。

 
 
 

 プレス周辺の給水条件も数値化できます。各湿し水メーカーが中心に添加剤の種類が数多く出されていますが、まず管理の要素として、湿し水に使用水の原水総硬度調査が必要です。印刷に適しているのか?そうでないか?を確認する意味でとても重要です。
 湿し水のH液は皆さん何のために使用するのか。それもご存じだと思います。
 湿し水は一般的に100 倍希釈で、大方、水なのですが、あまりご存じでない事が原水自体が印刷に適しているかどうか。特に原水が硬水か軟水かということがキーワードで、硬水であればローラー剥げとか、pHのコントロールが安定しない状況になり易いです。
 水の総硬度は水溶性のカルシウム、マグネシウム成

 
  分を計測することによって数値化でき、その数値が高ければ高いほど印刷に適さない。またローラーの管理が良くてもインキが良くても、この水自体の数値が悪かったら、かなりトラブルが出ます。ですから、これを数値化して確認する必要があります。
 それから湿し水の分析。これは、湿し水添加剤の定量添加や混合精度、それから現在使っている湿し水の劣化状態、全体的なバランス・安定度の良・不良も数値化できます。
 分析項目としては 湿し水の添加濃度、pH、伝導率、表面張力、粘度、IPA濃度。特にIPA濃度H液濃度が不安定であれば印刷品質変動やトラブルの原因になります。定量的に入れる装置自体が不安定等、これも非常に利益が出せない要因です。
 これらのデータをグラフ化し表で縦軸に管理項目、横軸に日時を表したまのです。おおよそ1週間くらいサンプリングを実施し測定データから、このグラフが乱れているのはご理解していただけると思います。この状況を安定させることが一番重要である事が良く理解できます。
 湿し水を分析し、今の状態がどうであるかが印刷トラブルの発生を予測できます。特に水は見えないので、この様に数値化管理されることが重要ポイントと思います。
 
 
 

 効率的に稼動させるには、印刷機の能力を最大限に発揮させる。それには、印刷条件の最適化(メカ・材料・条件)が必要です。つまり、印刷設備の日常のコンデション、印刷材料特性の把握が必要です。そして徹底した印刷条件の数値測定と把握、印刷品質管理システムと形態で、状態の変化と印刷の変動との兼ね合いがよく判る箇所を数値測定します。

 
 
 
 各ローラー及び各胴の左右側面温度、この測る事が一番重要なのですが、何を基準にするか。まず 特に工場のなかの温度、湿度が軸になりますので必ず計測していただきたいです。
 その後、停止中の温度をすべて計測し印刷稼動時の安定した所で、もう一回同様な計測実施する。温度の急激な変化のあったところがトラブル発生の最大の要因なのです。
 湿し水冷却タンク、水舟、インキ付けローラー、インキ振りローラー、壺、版胴、ブランケット胴という形で温度測定していただければと思います。
 近年、高速型のプレス対応としてインキ振り冷却装置の設定温度と工場内の温度・湿度との関係から結露発
 
  生、ローラーの冷やし過ぎによる過乳化が発生し、左右均等な印刷が出来なかったり、用紙が片伸びするという要因よる見当不良もある事も確認しています。この様な状況も機上温度測定する事により見えてきます。  
 
 
 印刷材料の特性では、印刷条件の温度が変化したらインキはどのような挙動特性か?縦軸に粘度、横軸に温度をとります。このグラフのように、温度が上昇よって粘度が変化します。
 実際、工場の温度・湿度の影響がありますが、インキローラー上の温度を確認すると、おおよそ刷り出しで24〜25℃くらい。運転中にどのくらいになるかというと、やはり30℃を超えて32〜33℃。これは工場内の温度・湿度の影響により変化します。
 ですから、停止中と運転中では温度が変化していますので、インキの転移性、流動性の変化が有り最終的な印刷物も濃度変化が発生し易い傾向です。これも重要なことかと思います。
 
 
 
 さらに、温度変化の関係で湿し水の粘度も変化しますが、水の特性によりアルコールを添加することで印刷の刷りやすさの幅が広がります。
 縦軸に粘度と、横軸に温度を設定時のグラフです。印刷のスタート時の湿し水温度はおおよそ16℃。しかし 印刷運転中の状況を確認すると徐々に温度が上昇傾向にあり、一定の温度で管理できず温度が上昇に従い湿し水の粘度が低下し条件の崩れによりトラブル発生し易い状況になります。
 プレス機構上、水舟から版面まで伝達するローラー間の温度変化により、さらに粘度が低下し水が切れPS版面では湿し水の供給不足による汚れが出てしまう傾向です。
 
   要因は水船の左右で温度差が発生し、水船の片側の温度が高い場合、高い側の印刷面で汚れが出やすい。
ですから、特性から逆に推測すると、いろいろな事が見えてきます。
 
 
 
 印刷機のゴムロールについてもいろいろあります。これは水船部の合成ゴムのメタリングロールでの説明です。新しい時のローラー温度25℃・ニップ幅が5ミリ。古くなると合成ゴムですから硬くなります。どうも水が切れ汚やすい状況になる。それは、ゴム硬度が上がる事によりロール間の面圧が高くなり水膜が切れてしまう状況になるからです。
 このロール状況は外見を見ただけでは判断できず、その為にゴム硬度計で定期的に測り使用時間、もしくは何度の硬度まで使用出来るかを数値管理していただくのも一つの手ではないかと思います。
 
 
 
 先ほど湿し水の特性を説明致しましたが、湿し水に求められる能力としては、5項目あります。
 まず1番目は非画線部の親水化。2番目に粘度。ロールの間の水の通過性の安定なのです。アルコールを入れると粘度が上がり楽にローラ
 ーの間を通り版面への給水が安定する事により汚れを解消できるのです。印刷の基本的なことになりますが、ローラー硬度と粘度との関係はかなり重要です。
 それから3番目の表面張力。これは能力としては、版面の水膜を薄くさせる。要するに表面張力というのはアルコール特性として薄い皮膜で広い面積を濡らしてくれるということです。4番目にインキの安定乳化。5番目に、防腐、防カビ。常に循環していますので汚れたり、腐敗が
 
  進みます。そのための防腐効果を持たせてあります。H液の特性を十分理解した上、使用条件に合わせる必要が有ります。  
 
 

 湿し水特性の役割のなかの、粘度と版面水量の関係を示しています。
 粘度が高い場合、低い場合を比較すると水膜が多いか少ないかになります。ただし、一定の同一条件下でテスト比較します。ゴム胴、ニップ圧、幅、水温はすべて一定にし、粘度を変化させる事より版面に到達する水量が変わる状況になります。
 オペレーターの方の仕事は見当合わせ、色合わせだけではなく、すべての箇所の管理が非常に重要になってきます。こういった基本的なことを考えながら調査し、確認していただくというのは非常に重要なことかと思います。

 
 
 
 温度による影響を話します。連続運転時に温度上昇にしたがい水の温度、水の粘度、水の通過力が変化し温度上昇の影響は版面へ給水量減少傾向で汚れ易い状況に変化致します。
 このイラスト図が初期の状態で左右の温度差が少ない左右の網点は正常なのですが、連続運転で片側が温度上昇の状態になると温度上昇側に地汚れや絵柄の絡み傾向に変化致します。
 汚れ発生直後 オペレーターは機械を止めずに継続運転をする為に、水のダイヤル値を上げ水量を多くしていきます。汚れた側の印面は最初の正常な網点状態に直ちに戻りますが、反対側面の印刷状態は水の過剰供給状態になり過乳化状態が発生し印刷濃度の低下傾向に
 
 
 

なります。
 印刷濃度低下傾向になると、そこのライン箇所へインキを足す。結果としてローラー上、版面上ではインキ過剰な方向で過乳化がさらに促進する。
 この様な状況は水船の左右の温度差によるインキの転移量とか、水の上げ具合、最終的には乳化状態の左右のアンバランスを引き起こします。詳細な状況が温度を測る事で状態変化が見えてきます。
 高速の印刷機になりますと、振りローラー関係のチラー設備が常設になりつつあります。工場内の温度・湿度との関係で極端な温度設定により結露が発生しやすくなります。
 冷却の温度の設定が低すぎる場合や、チラー装置関

 
 
 
係のメンテナンス不足問題で、循環水の腐敗とか赤さびがある場合、循環水の詰り流量低下による全く冷えないといったことが事例が多く見られます。流量低下による左右の温度差がある場合にも印刷障害が発生します。
 
 
 
 インキ、湿し水ローラー、胴表面での温度変化は印刷品質変動・(濃度変動)トラブルの主要因です。稼動印刷機からの発熱、温度変化の影響による各部の条件変動は明確に把握、判断、確認できず、見過ごされてきていました。品質・濃度変化があり、問題発生後の対応であった。変化のメカニズムが掴めていない為、発生時の判断が困難であった。生産性向上、高品質を目指すには、印刷材料の特性を最大限に発揮させる印刷環境と条件を整える必要があります。
 
 
 
 現状把握で見えてきたことは、管理死角、感覚的要素をある程度数値化できるということです。
それから印刷の変動要因を的確に把握する事が可能である。測定箇所として印刷停止時や稼動中の機上の温度、インキロール・給水ロール温度やニップ巾・面圧・湿し水分析、これにはオフセットの原理原則に基づいたある一定の安定稼動に必要法則や条件が見えてきたのではないかと思います。
 この様な技術活動を実施し効果が確認出来てますので、1から6まで主な項目にまとめてみました。

 1番目は、無色透明であるため、数値で良・不良の判
 断が容易。これは湿し水のところです。
 
   2番目は、水の劣化状況が明確になり、交換時期の判断が可能。
 3番目は、印刷品質変動やトラブル発生要因究明と関連し、問題解決が可能。
 4番目が、感覚的作業でなく、印刷必要条件が数値で表し安定稼動化の基準値の確定が出来る。
 5番目が、印刷ユニット・胴間差の状況・品質との関連し対応ができる。
 6番目が、印刷機ですから、精密機械として異常個所の早期発見が可能ということです。特にベアリングとかメタル、軸受けの高速回転部についての日ごろのメンテナンスの重要性がかなりあるのではないかと思います。
 
 
 
 数値化のデータで明確になった事、印刷環境条件を実測し数値化で確認。これは重要なのですが印刷実務者や管理者が自ら印刷トラブル発生原因を特定し問題を解決出来るようになり状況が見うるようになった。自主的に微調整や小規模メンテを自ら実施するようになった事が大きな意味がある。管理死角部や印刷の変動要因の要素が明確になり安価管理手法に必要な管理測定機器、放射温度計、ゴム硬度計、湿し水分析等、ちょっとした管理・微調整・メンテにてトラブルが未然に防げる。または印刷品質が上がる。これらのトータル管理を体系的実施している印刷会社が今後、技術とともに業績も伸びカラー化の時代にマッチする事になる事でしょう。
 印刷品質管理の一番基本的な事は数値を基に具体的
 
  管理を実施し共通な情報を共有し管理死角部を作り出さない仕組み・システム作りが重要と思います。
 印刷の諸問題の発生、要因・原因が明確、問題解決への的確な対応・処置が可能ということです。
 
 
 
 具体的に対応事例で得られた情報から問題点は、濃度変動とか地汚れ、過剰乳化、ゴースト。この問題をどのように対応・処置・改善していく明確にする。水舟の左右の温度差を限りなくなくす。それから湿し水の分析を実施し添加精度の安定化。どこに問題があるかということをどんどん処理していただく。また、振りローラーチラー装置の冷却温度の適正化調整とか、インキロールニップとゴム硬度の管理を徹底する。
 印刷の品質管理の技術確立への対応として、実務者に必要な情報、印刷資材の特性の習得やユーザー管理データ分析、社損事故、品質などを含めての分析、実務者へのアンケート調査、意識調査等、この様な技術活動を弊社メーカーとしてできる事を最大限実施しユーザー
 
  様との共通な課題解決へ向け様々な考え、悩み、解決していくというプロセスを重視し段階的に改善実施、結果として難問題の改善が自社管理技術で解決できると思います。  
 
 
 
   
   
 
 
 活動の効果として、印刷問題件数がA社では4月度、問題が59件ありましたが、3ヵ月後、7月度、それが13件に削減できた結果がデータから読み取れます。
 生産管理の効果という形で「生産フィート」は、対前年同月比のトータルで125.41%。それから「実損紙率」も刷り出しが安定し、これも対前年比、136.98%。「運転スピード」も115.44%ということで、技術改善活動の数字が確認できています。
 
 
 
 数値管理化のメリットとして、生産・管理技術向上・安定ということで、日常の品質に影響がある個所への具体的・調整、メンテナンスが可能になり、印刷事故防止と未然に防ぐ管理技術の体制が構築できます。したがって、工場内のあらゆるロス率低減による利益確保、生産性向上と印刷品質安定が構築できる事です。
 管理すれば儲かる。管理すれば利益が出せる管理仕組みを作り出来る所から数値化し、得られた数値データより状況の判断ができる内容にて数値化することがポイントと思います。
 もう一つ情報としてお伝えしたいことがあります。これはインキ供給の数値管理手法を推進できる装置です。
 
 
 
 最終的に、印刷条件を安定・固定させる個所は複数あるのですが、紹介いたしますのは最も重要でありながら、管理認識が無く管理の盲点部となるインキ壺部分への対応設備です。   
 
 
 
 印刷の不安定要因は印刷最適条件が常に一定でないからトラブルが起きるということです。
 まず温度の変化によってインキ調子が変わり転移性、流動性が変化し、最終的には印刷濃度変動の主要因になります。インキ壷供給装置の機構として、常にインキを攪拌している状態で使用し、作りたてのインキ状態に近づける。湿し水や紙粉がインキ壺へ混入することを極力少ない機構であるというのが、インキ壷の機能として印刷の品質変動の影響を防ぐことかと思います。
 
 
 
 一般的インキ供給装置というのは、柄によってインキキーを開閉します。これはインキの特性からいいますと、厚盛り、ローラー表面のインキ膜圧が厚くインキ転移については良好な状況である為ベタ印刷は非常に刷りやすいのですが、印刷柄の中間部からハイライト部はインキ膜圧が薄くなりインキ転移が精度悪く安定的に転移しない傾向であり壺の温度などにかなり影響が出ます。
 印刷は様々な柄が有りカラー印刷は主に中間部からハイライト部の2次色や3次色の掛け合わせで色表現を致しますので個々の色の再現精度が最も重要になります。個々の色精度を安定させる為に必要以上にヤレ紙を通す必要に迫られます。ヤレ紙を通し印刷品質を安定させる現在の印刷方式です。
 
   特に壺方式のスキマ制御は高品位印刷や小ロッド生産には非常に難しい。これが一般的なインキ装置(スキマ制御方式)なのです。  
 
 
 この装置は印刷の原理・原則に則す画期的・理想的な機構です。従来の方式と違い呼び出しロールを分割していますから、必要インキ量を分割でインキを転移させます。
 常にインキの壺とブレードとのスキマを一定量で開けています。常に壷ローラーを回転させ、壺のなかのインキをスタンバイ状態にして、分割されたローラーが小刻みに壷ローラーに接触し、回転移動でインキを練りローラーに持っていく機構です。このため微妙なコントロールができ、インキ過剰にもっていかない。網点の中間部やハイライト部の掛け合わせの色を忠実に再現されます。
 
 
 
 さらにインキの一定膜厚を保有し、呼び出しロールの接触した回転の円周長でインキ量を制御する機構ですので、従来の機構とは大きくことなります。
 いままでのインキキー制御というと、インキ壺ブレードをモータ駆動開閉で必要インキ量をスキマ制御で、手動や自動で制御していました。
 結果的には、インキの供給精度が高いか低いかという方向になりますので、比較テストを行なってみました。
 
 
 
 実機での検証ですが、これはスキマ制御のデータです。縦軸に濃度、横軸にメーター数をとっています。
 実際、ブルーの基準濃度値に対して、印刷通しメーター数に比較し基準濃度値に達した長さで比較しました。従来のスキマ制御の装置ではデータから確認200〜250mで基準濃度値に達しました。
 
 
 
 次に印刷原理原則に則す装置・分割接触膜厚方式にて印刷テスト実施。結果として基準濃度値に約50mで濃度値が来ました。
 
 
 
 分割接触膜厚方式を微調整し再テスト実施した結果、約10m位で基準濃値に来ました。
 これは濃度値のみ測定しています。見当合や網点の品質・ミシン目位置等の後加工条件等は考慮していません。全体的に製品にさせるには、もう少しメーター数が上がる様になります。
 
 
 
 装置の導入効果の実機検証として刷り出し損紙の低減で、刷り出し紙が不要になり本紙で印刷をスタートさせることが可能になったということです。
 それから、生産性・効率化については印刷の準備期間の短縮や作業の効率化の面にも効果が有ります。
 装置の基本性能であるインキ供給精度が高い為、色再現・リピート品の品質の安定化や管理データの色再現劣化が無く、オペレーターのスキルレス化に発揮いたします。印刷経験の少ないオペレーターの起用が可能ということです。
 
 
 
この装置の導入実績はメーカーの発表数値ですが、金属印刷業界、東洋製罐グループの全印刷機に標準装置を搭載され、実績台数1,000 ユニット。
BF印刷機業界は、金属印刷業界ほど普及はしていないが、今後、CIP3対応システムの開発により導入が進むことが予測されます。
シールとかCD印刷業界では、印刷機メーカーが標準装備している事例もあります。
したがって、高価な材料を使用している業界や印刷会社からの導入事例が多い傾向にあります。
印刷品質安定化への技術活動を目的とするユーザー訪問を実施し問題点への処置対応や改善事例をまとめて見ましたので自社印刷コア技術確立化への参考になれ
 
  ば幸いです。  本日はありがとうございました。

司会 どうもありがとうございました。
 ご質問をお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。――ございませんでしょうか。
 それでは、アンケート用紙にも残していただければご回答できると思いますので、アンケート用紙に、ご質問、ご意見をちょうだいいただければと思います。
 それから、レジュメの一番最後に「問い合わせ先」が書かれておりますが、東洋インキ製造株式会社コンタクトデスク(03-3272-5713)、もしくはフォーム工連の技術委員会のほうに、本日の技術セミナーについてのご質問、ご意見をいただければありがたいと思います。
 それでは、これで第1部の技術セミナーの発表を終わらせていただきます。
 
  ―了―  



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