日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録


ユビキタスコンピューティングの
実現に向けて
 中編


講師 越塚 登 氏 YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所・副所長

    東京大学情報基盤センター・助教授

平成 15年11月6日 労働スクエア東京




ユビキタスの応用―ICタグの利用を中心に ―

 こういったタグを 使って、どういうことをいまいろいろなところでやりたがっているかということです。
 いま日本は小さいコンピュータをつくる技術はありますが、日本に欠けているのは、これをどういうことに使っていくかというような利用側の実験が結構少な い。海外は、口悪くいえば、技術もないくせに一生懸命実験をやります。そういうところは、我々もよく見習ったほうがいいと思います。いま国では、特に政府 中心になってこういうものをどんどん利用していこうと予算をとって進めています。
 どんな使い方がいわれているか。一番期待されているのがSCM(Supply Chain Manage-ment)、流通です。流通に使って、どういうことをするかというと、例えば、箱にタグをつけて、この箱に何が入っているかという情報をこ のタグのなかに保存しておく。ネットワークにももちろん保存しておいてもいいのですが、タグに入っているとしますと、これは同時に複数読み取れますから、 ゲートみたいな読み取り機をつくって、入荷するもの、出荷するもの、すべてをひゅっと通してしまえば一度に入出荷管理ができます。
 あと、携帯型の読み取り機もありますが、そういうものでやっていくと、どこに何があるかという管理ができる。そうすることによって、保管管理、入出荷管 理、ロケーション管理など流通関連業務の迅速化、効率化ができるようになります。
 特にこのアプリケーションが一番期待されているのはアメリカです。いまオートIDセンターなどが中心になって、こういうものをウォルマートなどがかなり やろうとしています。しかし、それは比較的表向きの話で、本当は彼らがねらっているのは何かというと、効率化することだけが目的ではありません。
 日本以外は非常に治安が悪いですので、流通過程における盗難が非常に多いらしいです。ずっと前に聞いた話ですが、工場を出荷してからお店に入るまで 10%くらい盗難されると聞いたので、私は、いままで講演のなかでは、そう言い続けていたのですが、実際は違ったみたいです。
 きのう、たまたま会ったサンマイクロからもらった資料では、20%だそうです。20%がサプライヤーとストアの間で盗難されている。それだけではなく、 今度お店に入って、お店に並んだもののなかのトータルセールスのうち、紛失してしまうものが何%かというと、これが3〜6%の万引き率です。ないしは、お 店の人が盗んでしまうそうです。これは、どこの国ということは書いていないのですが、たぶん米国の話だと思います。
 そういうふうになってくると、例えばカードを100円にしてもつけて、一個一個どこにあるということがきちんと把握できて、盗みが20%から10%の半 分に減っただけでも相当経済効果があります。ですから、アメリカの流通でこれをつけるというのは、経済的にもビジネス的にも非常によくわかります。しか し、日本でこれをやってうまくいくかというと、日本で20%もなくなるというのは私は聞いたことがない。基本的にはそんなになくならないと思います。
 ですから、アメリカでこういうアプリケーションが非常にいま期待されていて、これにずいぶん力を入れていますが、そういう裏事情があるのでこれをやられ ているのであって、これでアメリカの流通ですごいやっているからといって、日本でもこれは最先端のものだから導入してみようといって入れたら、たぶん全然 割が合わないと思います。コストが全然ペイできない。
 もう一つ同じ例があって、これも流通の一種ですが、航空機手荷物のスマートラベルもそうです。これもアメリカで最初にやろうとしていたものです。航空機 のラベルにこれをつけて仕分けを自動化しようということです。仕分けを自動化する効率だけを追求していたわけではなく、空港の職員がなかをこじあけて盗み をするのを防ぎたかった。逆に、そういう目的があったから労働組合に大反対されてつぶされてしまったらしい。
 ですから、このユビキタスのものというのは、日本以外の国ではかなり性悪説に立ったアプリケーションに結構考えられています。
 ただ、日本などでは、環境問題とか安全性などにも使えます。先ほどの流通でいうと、モノのライフサイクルを考えると、工場でつくられて、流通してお店に 並んで、消費者の手に渡って最後破棄されるという全体の流れのなかでICチップを使おうということを考えると、例えばゴミのリサイクルのときでもこれを使 えます。
 それは、どういう成分でできているかということをチップのなかに全部入れておいて、最後焼却炉で燃やそうというときに、これは燃やすとダイオキシンが出 ると思ったらぽっと捨ててくれるとか、そういうふうにゴミがリサイクルできる、リユースできるという情報を伝えるということに使うことも考えられます。
 それから盗難の例などを考えると、日本などでは盗みが多いところではありませんが、日本でも関係するかなと思ったのは、偽造品です。WHO(世界保健機 構)の推定している統計だと、世界中に流れている商品のなかで偽造品、日本で考えたらブランドものの偽造とか考えますが、それが全製品のなかの5〜8%が いま偽造品だそうです。
 これは、なぜWHOがこんなことをやっているかというと、彼らの調査の目的はブランド品のではありません。メインの調査は薬です。薬の偽造品が、アジア では特に多いらしいのです。その偽造した薬が品質が悪く、その品質の悪さによって死者がかなりいま出ているそうです。薬の偽造というのは世界的にはかなり 問題になっている話です。それでたぶんWHOが調べているのだと思います。
 薬の偽造、日本も薬の闇マーケットがたくさんあると聞きますが、そこでは品質はたぶん問題ではないはずです。中国などの統計だと、何万人、何千万人の規 模で粗悪品によって死者が実際に出ているという話です。そうすると工場を出荷するときは、タグをつけて、どこの工場でどうやってつくられたかということを 全部そのなかに保存しておく。そうやって流通させることで、偽造品と偽造品でないものをきちんと見分けたい。そういうニーズも非常にあります。
 日本などでの応用を考える場合、どちらかというと、盗難を減らして効率化をするというよりは、食べものにつけて食品の出所をちゃんと明らかにするトレー サビリティとか、健康とか安全性などに利用していくのがいいのかと私などは思っています。流通という観点でいうと、流通だけで使うのではなく、製品がつく られる工場で、流通過程で、販売過程で、消費者で、廃棄するところで、というような長い製品のライフサイクルのなかでバリューチェーンをつくっていくとい う応用も考えられるのではないかと思います。
 もう一つ、タグを普及させるときに問題になってくるのが、値段です。あらゆるものにつけようと思ったら、値段が安くならないと困る。5円以下、ないしは 1円くらいになってくれないと普及しないとよくいわれています。いまバーコードはいろいろなものにつけられるようになりましたが、あれは安いからつけられ るのです。これ1個100円もしたら、あらゆるものにはつけられない。100円のものに100円のものはつけられません。
 ですから、これを安くしたい。しかし、安くするためにはたくさん数がでなくてはいけない。数が出るためには安くなければいけない。もうニワトリが先か、 卵が先かで、ちょっとどうにかしてくれという感じです。
 そうすると、最初の突破口を開くためにどうしなければいけないかというと、おそらく単価の高いところから攻めていって、単価の高いところから応用をじわ じわ拡大していくしかない。そういったときに、単価の高いところで、私たちは半分冗談、半分真剣なのですが、ワインなどがいいと考えています。
 ワインの高いものなどは10万円します。100万円するものもあります。それでいて、買ったはいいけれど、なかはどうなっているかわからないというよう な、とても結構ギャンブリーな商品です。しかし、中身はどうかというのは、輸送過程でどれくらい揺れたかとか、どういう温度だったのかとか、日にあたった とか、あたらないとか、そういうことで中身はある程度推測できるので、だったらセンサーとチップをワインにつけておいて、輸送過程の記録を全部とって、売 るときにそれが見れれば、このワインを100万円で買うかどうかという判断ができます。あけてテイスティングする必要はなく、かなり確率は上がるのではな いか。
 それも、たぶん今度解禁されるボジョレーヌーボみたいな数千円のものだとあまりペイしないかもしれませんが、ロマネコンティとか、10万円くらいのもの になったら、1,000 円くらいまでのコンピュータだったらつけてもいいかなと思いますね。そういうように単価の高いものをやっていくのには、ワインなどもいいアイデアかなと思 います。
 それを薬につけるのも一ついい考え方でしょうし、あと我々などが実験したものですと、博物館とか美術館の展示品につけて展示物の管理に使ったり、それを 展示場でギャラリーに見せるときに、カード読み取り装置をつけて、半分ゲームみたいなものですが、読み取り装置で情報が見れるとか、そんなことがありま す。
 あとは回転寿司もあります。回転寿司のお皿の下にチップをつけておいて、いまお皿の色で分けられていますが、色を見なくても、ちゃんとリーダーに乗せれ ば値段が全部わかる。国の委員会に出席すると、この話がよく出ていたので、1回いってみたいと思っていたのですが、池袋にありました。これは宣伝している わけではないのですが、「海幸の街」というところがそうみたいです。小泉首相がいかれて、非常に感動して、お気に入りだそうです。
 それから社員食堂に適応したものもあります。やはり社員食堂にお皿の裏につけている。あと、社員証を電子マネーにしておけば、社員食堂のレジのところが 無人化できる。そういうふうにやられているところもあります。
 卵の温度管理に使っているものもあります。しかし、卵は単価が非常に安いので、やはりワインくらいが本当は現実味があるのではないかと思います。
 同じような技術で、実際に実用化してよく使われているものがETC。これは道路の分野です。JAFのカードやETCのカードに小さいコンピュータがつい ていて、それとゲートのほうについているものと通信して料金を落として、前にある窓をすっとあけるというものです。これは、かなり現実に使われている、小 さいコンピュータの利用例です。あとスイカなどがあります。
 本の分野ですと、万引き防止のためにICタグをつけるような研究がいま厚生省のなかで行われています。先ほどのゴミのライフサイクルというのがありまし たが、単に万引き防止だけですとペイしないので、書店では、在庫管理とか、棚卸しや検品の省力化などに使われます。でも、万引き防止が大きいようです。
 いま本屋さんの万引きが非常に多い。なぜ多いかというと、万引きした本を処分する場がいま増えているということです。それは別に本だけではなく、何でも そうみたいです。この前、テレビでやっていましたが、泥棒がそうみたいです。空き巣に入ったときに、昔の空き巣は現金しか持っていかなかったのに、最近の 空き巣はモノを持っていくのが6割で、現金が4割で、モノが増えているということです。
 何でモノを持っていくかというと、昔はモノを持っていっても売れないし、足がついてしまうのでやらなかったのが、いまインターネットオークションという 便利なものがあるので、あれで売りさばけます。ちゃんと現金化できる手段があるのでモノを持っていくわけです。ですから、盗んだものを現金化する手段を抑 えることは、万引きとか盗難を減らすより非常に重要だそうです。本もそうで、一番問題になっていたのがブックオフといわれる、中古の本を買う大きなチェー ン店です。万引きしたものをそこで売りさばく例が非常に多い。
 ブックオフとしても、そういう本を買うのは本意ではないので、本を持ってこられたときに、この本は盗んだ本なのか、それともちゃんと買った本なのかとい うことがわかるようになっていれば、「これは盗んだものだから買わない」ということができます。そのために、本にちゃんと出荷するときからチップをつけて おいて、お店で売ったときに、これは売ったよというデータを書く。
 そういうものを書くときには、ちゃんとお店しか書けないように暗号や認証できちんと防御しておけば、盗んだもので自分で書こうと思っても書けないという ふうになっていれば、中古店に持ち込んだときに、「これは売られたとは書いてないですが、どういうことですか」ということができます。その時点で身分証明 書の提示を求めたりして、そこで現金化を抑えることができれば、万引き防止にも間接的につながっていくだろう。そういうことで非常にいま期待されていま す。
 ですから、万引き防止という意味だと、本だけではなくてあらゆるものです。たぶんブランドものなどにもつけたほうがいいでしょう。それはブランドの真贋 判定だけではなく、盗まれたものか、そうでないものかを区別するときにも非常に有用なものだと思います。
 ただ、それだけではあれなので、こんな付加価値サービスをつけてみてはどうかというのを私たち研究所でよく実験しています。例えば本とその読み取り機が あって、本についているチップに読み取り機を当てると、その本の情報がぱらぱらと読める。これは、本というよりもDVDなどのほうがいいかもしれません。 DVDにつけて、お店で端末に持っていってヒュッとやると予告編が見られるとか、そんなサービスができると思います。本の場合、本のなかにはタグが入って いて、その数字をキーにしてデータをネットワークでとってきて、それを表示するという例があります。
 こういったものをつけているような例はいまたくさんやられています。例えば米国のひげ剃りの会社、ジレットなどでは、流通過程を効率化する、ないしは盗 難を減らすという意味で製品にチップをつけるということを実験しています。ベネトンは、衣服につけてブランドの真贋判定から、流通から、アフターサービス から、そういうことを目指しています。
 イタリアのメルローニは、ICタグを読み取れる家電製品を来年に発売予定ということですが、こんなのを出して売れるのでしょうか。どこかの研究所がやる ならわかるのですが。確かにICタグが読み取れるような家電製品、洗濯機とか冷蔵庫などがあれば、例えば大根にシールがついていて、この読み取り機が冷蔵 庫についていれば、大根をこのなかに入れておけば、賞味期限などが自動的にわかる。
 私たち自分でこういうものをやっていて、紺屋の白袴みたいで何ですが、こういう機械をつくったので、デモで大根につけてみようといって、おもちゃの大根 ではつまらないから、本物の大根にそれをつけて記者会見をやったのです。しかし、そういう冷蔵庫が少なかったので、腐ってしまって、研究所のなかは数日臭 い匂いが漂ったのですが、ちゃんとそれを管理するものも一緒につくればよかったわけです。
 そういうことを考えると、やはりそういう家電製品があるとやはり便利なのかなと思います。ですから、そういうことが普及すれば、読み取れる家電製品は非 常にいいのではないかと思います。
 こういったアプリケーションのもう一つのもので、いま私たちは、食品のトレーサビリティという実験をやっています。それについてお話ししたいと思いま す。
 トレーサビリティとはどういうものかというと、その食品がどういうものかという情報を見ることができることを「トレース」といったり「トラック」といっ たりします。「トレース」というと、消費者のほうから流通情報、生産情報に遡って参照できます。大根を手にしたときに、この大根は誰が売ったのか、どこを 流通してきたのか、誰がつくったのか、つくったときにどういう農薬をかけたのか、ということが端末からすぐにわかります。
 「トラック」というのは、その逆で、生産者が自分の生産した食品について最後の消費者を辿ることができる。ですから、大根を出荷したら、その大根を最後 は誰が食べたのかということが生産者の側からわかります。
 これは、目的が違いまして、トレースのほうは、消費者が自分が食べるものはどんなものかということを知るときに非常に重要な機能ですが、トラックは、牛 肉で、例えば売ってしまった、みんな食べてしまった、狂牛病だったといったときに、食べたのは誰か、探さないといけないのですが、いまはその流通過程がメ チャメチャなので、誰が食べたかというのはわからないです。そういう意味で被害の特定ができないのですが、これをやっておくことによって、あとで問題が あったときに被害の特定をすることができます。普通の工業製品だったら回収することができます。
 ただ、これをやるときはどちらも注意しなければいけないのは、特にトラックのほうがそうですが、生産者が最後、事故があったときにトラックするという目 的に使ってくれればいいですが、自らのマーケティングのために使われると、ちょっと消費者としてはそんな機能はほしくないと思います。こういうシステムに は、プライバシーとかセキュリティーなどが非常に重要になるというのは、そういうところにあります。
 そのなかで、いま私たちはこのトレースのほうに着目しまして、消費者が生産段階と流通段階の情報の記録をとることができるようなシステムをやろうとして います。
 例えば大根にタグを張っておきます。そうすると、消費者は端末でその大根の生産地、生産者の顔、メッセージなどを受け取ることができます。「この大根 は、私が大切に育てました。とれたて、新鮮、無農薬。いまが食べごろですよ」というようなビデオが出てきます。あるいはレタスでも、情報がきちんとデータ ベース化されていれば、お店で端末を
ピッとやれば、「値段85円、生産地茨城県です」というような簡単な情報が出てきます。
 これをやるときに実に難しいのは、読み取り機(端末)をつくることが難しいのです。私たちの研究所は、こういうものをつくることは一番最先端だと思って います。ほかでこういうことをやっているところにいかれて、これより小さい読み取り機で読み取れるものがあるかといったら、たぶん見ることができないと思 います。こういうのは、圧倒的に日本の技術力が強くて、アメリカにはこんなものはないです。アメリカ人にこういうのをやっているのを見せたら、よだれが出 そうなくらい「ほしい」ときっと言うにちがいないです。
 そういう食品のトレーサビリティをいま、よこすか葉山農協さんと一緒にやっていますが、これをやるとき農協さんに、こんなことやりたくないとメチャク チャ反対されました。なぜかというと、農薬を間違えるそうです。一番多い間違いが、例えば12月1日に出荷する場合、農薬は、残留してしまうので出荷する 日から1週間遡ってかけてはいけないそうです。しかし、いつ出荷するんだったかなという感じになって、3日前だけどかけてしまったとか、出荷は3日後だし いいかということで出てしまったという例があるそうです。
 あとは、農林水産省がある意味一生懸命やっているのですが、農薬にどういう問題があるかということは日進月歩だそうです。こういうふうに使ってはいけな いというガイドラインは毎月変わっていく。毎月変えているところまでは農林水産省は非常に偉いのですが、それが末端まで伝わらないそうです。それで、本当 はだめといわれたのにまだやっているというケースが結構あるということです。
 そこはどこに問題があるかというと、情報伝達のインフラが、まだ農産業分野では確立していない。それが確立していないのに、逆にそれを公表するようなト レーサビリティだけやられてしまっても、農家としては困る、と。情報がこないのに、だめだという情報を出せといわれても、わしらはどうしたらいいのという のが正直なところで、いま私たちの実験でいっているのは、その情報が流れてくるというところのインフラとトレーサビリティをペアにしないとだめだというこ とです。
 どういう農薬をかけたかという記録もタグを使ってどんどん簡単にとっていくのですが、そのときに、この農薬をこういうふうにかけてはいけないというやり 方のガイドラインが毎月改定されていますので、それを自動的にコンピュータに入れてやって、それと違っていたら警告を出すというような、ワーニングシステ ムと記録するシステムとを1個のシステムにして、やっと農家の方には納得していただき、それだったらやる価値があるということでやっていただいているとい うことです。
 ですから、トレーサビリティといっても、消費者からみると非常にいいのですが、現実にできるためには、こういう仕組みのなかで参加する一部のプレーヤー だけにメリットがあるのだとやはりうまくいかなくて、生産する人、流通する人、販売する人、消費する人、これが全部に何らかのメリットがある形でいかない と、やはりプロジェクトは成功しません。
 そういう意味で、一番これでメリット、恩恵が何もなかったのが実は農家の方だったので、農家の方にも何とかメリットがある形のシステムにしたいと思っ て、いま私たちはやっています。つまり、生産情報を、現場でどういう農薬をかけたとかという記録をとるだけでも大変なので、そういうところを自動化できな いかということで、生産履歴情報の自動取得システムもユビキタスの技術で小さいコンピュータを使ってやろうということです。
 そういうのを今年やっておりまして、(参照「システム構成概要」)システム全体としては、生産を支援するシステム、流通を支援するシステム、お店で販売 を支援するシステムといったものから成り立っています。
 いままでこうやっていくつものアプリケーションをご説明してまいりましたが、やはりいろいろなアプリケーションを考えていくと、端末やチップをつくるの も重要ですが、こういうラベルをどうつくるかというのは非常に重要です。
 先ほど申し上げましたように、タグをどう貼るかということで、これを丸めてしまったらだめだとか、いろいろ細かいことがたくさんあって、そのへんは現場 でいろいろノウハウをためないといけないわけです。
 1枚、2枚張るならいいですが、これをお店で何万枚も張るとなるとどうしたらいいかとか、そのへんの張る手間とか、張る人の労働のやり方までも考えて、 しかも読み取りできる形で、精度もよくするというと、どうするかというのは、非常にたくさんのノウハウが必要です。

システム構成概要

 そういったノウハウで一つなるほどと思ったのは、お店の商品に全部タグを つけておいて、レジにゲートをつくって、そのゲートのところをかごでバッと通ると、商品の合計がピッと出てくる。バーコードを一個一個やらないで、ゲート にかごを通せば全部出てくるという実験をやりました。やたら問題がありました。
 どういう問題があったかというと、アンテナの方向によって読んだり読まなかったりするのです。縦になってしまうと、こちらから電波がきても読めないで す。そうすると結構レジを通すと読み落としがあります。そして何個読み落としがあったか、読み落としているのか読み落としていないのかもわからない。
 そのなかで、これは特許を取られていると思いますが、アイデアだなと思ったのは、このチップのなかに、何グラムのものに張ったかという重さを全部入れて おくそうです。そして読み取ったときにその重さも全部読み取って合計して、それがかごの本当の重さと違っていたら読み取りミスがあったということになり、 では、もう一回やってみようということになる。そういうちょっとしたアイデアなのでしょうが、現場だといろいろな問題があるので、そういうことを今後は一 つ一つ実験をやりながら解決していかないとだめなのではないかと思います。
 そういうところで、きょうここにいらっしゃるような方々のお力をいろいろ借りてやるようなことも今後いろいろ増えていくのではないかと思っています。
(次号へつづく)





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