■第2回:「チラシはどのようにつくられていくのか」
Aさんはいよいよ印刷会社へ交渉に行きます。 そこで、チラシ作りの工程と、どのような費用がかかるか、アドバイスを受けてきました。
しかし、その印刷会社は、DTPへの対応として設備導入の準備を急ピッチで進めてはいるが、現時点ではまだパソコンの出力環境は整っていないとのことで、もう少し待ってくれとのことでした。 話を詳しく聞くと、印刷会社や製版会社または写植 (写真植字) 会社のDTPへの対応は最近だいぶ進んできてはいるが、まだバラツキがあるとのことでした。
印刷会社の人の話では、駅前に大手出力サービスセンターのチェーン店があり、そのサービスセンターではコピーやカラーコピーのサービスから、パソコンデータのプリンターへの出力、印画紙やフィルムへの出力、写真のデジタルデータ化 (画像入力) などのサービスを幅広く行っているとのことで、そのサービスセンターでデータをフィルム出力してもらい、そのフィルムを印刷会社に持ってきてくれれば確実であるとアドバイスを受けました。
今回はとりあえず印刷会社の人の言うとおりの方法でチラシを作ることを前提に準備を進めることにしました。
まずは費用の問題です。 チラシを作る費用には大体どのような項目があり、どの程度の費用が必要とされるのか把握しなければなりません。 印刷会社の人と話し合っているうちに、チラシ作成は主に次のような工程に分かれていること、そしてそれぞれの工程で費用が発生することが理解できました。
■デザイン/レイアウト
印刷会社では発注者の要望を聞き、印刷物に再現するためのデザインを作成します。 使う色の数、印刷物の大きさなど基本的なことから、見出しや本文の文字の形 (フォント) や大きさ、価格の文字やその大きさ、全体の色使いなど大体の仕上がりイメージがこの時点で決まっていくことになります。つまり、チラシの訴える力 (訴求力) は、このデザインで決まってしまうと言っても過言ではありません。
DTPではイメージをカラープリンターで出力できるので、たとえば、見出しの文字の大きさや色使いなどのバリエーションを何種類も出したり、その変更が自由であり、その点大変便利なツールといえるでしょう。
デザインの料金は固定的なものではなく、チラシの大きさ、内容量、デザインの創造性などによって変わってきます。
■文字入力
印刷される文字を入力する費用がかかります。 印刷会社には文字を入力する専門の人がいて、驚くべき早さで入力を行っています。 文字入力に関しては、何円/1文字、何円/1ページ、何円/1冊などの決め方をします。 当然、文字数が多いほど高くなります。
■組 版
入力された文字を発注者の指定、要望にしたがって文字を配置していく作業です。 複雑な組版ほど料金は高くなります。 たとえば表をたくさん使ってあるもの、複雑な絵柄のまわりに沿って文字を配置してあるようなもの、特殊な組を要するもの (化学記号や数学の数式のようなものがふんだんにはいる学習参考書のようなもの) は価格が高くなります。
■台紙作成
製版/印刷を行うための基本的な要素 (紙面の大きさ、文字の大きさ、形、写真の入る位置、その大きさ) をレイアウト指定通りに貼りつけた台紙を作成します。 組版された結果の出力物 (印画紙が多い) を基本の大きさのものに貼り込んで作ります。 写植機で文字入力する場合には、文字入力と組版と台紙作成は一体化する場合が多いようです。
DTPにおいては台紙作成の作業は発生しません。 したがって当然台紙という物も存在しないことになります。 前記のデザイン/レイアウトの作業と製版の大部分の作業を一貫して行えることがDTPの一つの特徴だと言われています。 また、DTPではデザイン、製版の部分の作業をパソコンを使って発注者の方でまとめて作業を行うケースもあります。 レイアウト、組版した結果が台紙のデジタルデータ (レイアウトデータ) として残ります。
■製 版
印刷用の原版をつくる工程です。 印刷に使われる色数 (4色印刷、2色印刷、単色印刷など)、でき上がりの大きさ (A全、A2、A3などで表します)、写真分解※ やその点数、写真の大きさなどで料金が変わってきます。
従来の製版においてはライトテーブルでの切り抜き作業、プリンター作業等も含まれます。DTPにおいては、パソコン上でレイアウトデータに文字や平網などの色付けや写真の貼り込みを行う作業が製版作業にあたります。
■フィルム出力
DTP作業独特の形態で、発注者が持ち込んだデータをフィルムまたは印画紙などに出力する必要があり、そのため費用がかかります。 従来の製版の方法には、この出力料金という項目はありません。 値段は1版あたりの料金となります。 もちろんフィルムの大きさ、出力時の細かさ (解像度) によっても料金が異なります。
■校正刷り
発注者の指示指定通りに製版作業を行った結果を、印刷機にかける前に実際に印刷の本機で使われる印刷用紙とインクで試し刷りを行い、発注者に提出するものです。 発注者の持っていたイメージがこのとき初めて具体的に表現されます。
発注者は、この校正刷りを見てデザインや文字、写真などの修正や追加を行ったり、印刷会社の方で指定通りにできていなかった部分に、再度指示を入れ直します。 印刷会社にとっても発注者にとっても、正確な印刷物を作るための大事な作業となります。
この作業を校正といいます。
■訂 正
校正刷りを見て、最初の指示指定を変更したり、追加の指定をすると、訂正料金と呼ばれる台紙、製版などのやり直しの料金が加算されることになります。
実際に印刷機械で印刷を行う工程です。 印刷の枚数によって料金が変わってきます。 一部いくらといった価格設定ですが、デザインや製版、出力の料金は印刷部数に関係なく固定的に発生してくるので、印刷部数が多くなるほど製版にかかった一部当たりの単価は安くなっていきます。 また印刷方式によっても異なります。
印刷方式としては主に次のものがあります。
このように、それぞれ印刷物の目的、紙の品質、予算に応じて印刷方式が決められていくことになります。
■紙 代
印刷に使われる紙の種類は非常に数多くあります。 皆さんが知っている上質紙、中質紙などのほかにコート紙、アート紙などたくさんの紙の種類があります。 それぞれ紙の作り方、紙の表面の加工の仕方などが異なるために用途に応じて多くの種類が出てきました。 また、同じ紙の種類でも厚さ (印刷では斤量といって、ある面積での重さで表現します) によって料金が異なってきます。 紙の選択も目的や予算と相談して決めなければなりません。
たとえば、印刷物を郵便配送するダイレクトメールなどは、重さによって郵便料金が変わってくるので、なるべく軽い紙を選ぶ必要がありますし、逆に、写真集などでは、ある程度白色度の高い、しっかりした紙を使わないと豪華な感じが出てきません。
■加 工
印刷をしただけでは商品価値が出てきません。 チラシ広告の場合は適当な大きさに折らなくてはなりませんし、雑誌や書籍の場合は製本と呼ばれる綴じ作業があります。 また、パンフレット、カタログなどでは綴じのほかに箔押し加工や、ニス挽き加工する場合があります。 懸賞やアンケート用のハガキを差し込む場合もあります。 すべてに加工料金として費用が発生します。
■運送費
印刷会社で印刷が終わってもその印刷物を使用する場所、地域に運ばなければ意味がありません。 パンフレットなど企業が発注者の場合は発注者へ、新聞チラシなどはチラシ取り次ぎ店へ、雑誌、書籍などはその専門の取り次ぎへ運び込む必要があります。 それぞれその中継店から書店に運ばれたり、最終ユーザーの手元に送られたり配られたりすることになるわけです。 その運び込むための配送費、運送費も前もって取り決めておく必要があります。

(C) Copyright The Japan Federation of Printing Industries < info@jfpi.or.jp >