■第3回:「印刷会社と相談しよう」
Aさんは、DTPと言ってもそう簡単ではないとすこし不安になってきました。 事前に印刷会社と打ち合わせておかなければならないことがいろいろあります。
パソコンを使ってデザインなどの制作から製版の製造までを行う方法をDTPとまとめて呼ばれていますが、その印刷会社の人の話では、DTPはデザインの進め方、プリンター類の使い方、写真などの画像類の取扱い方、データの完成具合などにより運用方法が異なるらしく、またパソコン自身のOSや使われるアプリケーションソフトとその使い方、バージョンによってもさまざまな問題が起きること、さらに文字にもプロ仕様とアマチュア仕様では異なる部分があるなど、実際にチラシを作る段階になって初めて知る項目がどんどんと出てきて、多少の焦りと驚きを隠せませんでした。
DTPを使えばカラープリンターでの出力とコピーが混じったものができるという程度の感覚しか持っていなかったAさんは、DTPも印刷という専門的な部分になるとさすがに奥が深いと感じ、果たして自分自身でチラシ作成ができるのか不安になってきました。
ここでDTPの概念、運用についてまとめておくことにします。
データはフロッピーディスク (FD) や光磁気ディスク (MO) などに収められており、パソコンがなくては中に何がどのように入っているのか確認ができません。 ですからこのデータの受け渡しに関する約束事項、確認事項が大変重要なこととなってきます。 また、Aさんのように自分でデータを作ろうとする場合は、データをどこまでつくるのかはっきりさせておかなければなりません。
印刷会社との確認に必要なことがらをまとめてみましょう。
■出力見本の添付
データを入稿するときは、そのデータの出力見本 (プリンターで出力したもの) を添えて入稿するのが基本的な原則となっています。
印刷会社に入ってくるのがデータだけだと、中身の詳細については表面的に判断できません。 そのデータを出力しても、その出力されたものがデータどおりの出力なのか、トラブルが生じているのかといった判断も、出力見本がないとできない状況となります。 印刷会社としては、出力が目的ではなく、より良い印刷物を作ることが目的ですから、判断のつかない状況では、出力物を印刷できないことになってしまいます。
■データ作成に使ったパソコンの種類とOS
DTPで使われるパソコンはMacintoshが圧倒的に多いわけですが、Windowsが使われることが皆無といったわけではありません。 特にWindows95が出てから一般的にWindowsの割合が増えてきています。 また会社などの事務処理はWindowsが多く、そのデータを印刷するケースも出てきています。
Macintoshの場合、OSの管理も重要な要素となってきます。 現在は7.5.○といったバージョンが広く使われていますが、古いユーザーは7.1や7.3といったバージョンを使っているケースも多々あります。 データを作成したOSと同じバージョンを使う方が無難です。
■どのようなソフトウェアで作られているのか
パソコンで使われるアプリケーションのソフトウェアは数多くあります。 レイアウトするためのソフトウェアでもQuarkXPress、PageMaker、Illustratorなどがあり、それぞれに特徴があり、個別の対応が求められています。 受け入れる印刷会社でもすべてに対応しているところもあれば、一部にしか対応していないところもあるので、事前の確認は必須項目となっています。 せっかくデータを作り上げても受け入れるべき印刷会社の方が対応できなくては何の価値もありません。
アプリケーションソフトの種類と同時に確認しておかなければならない項目に、そのアプリケーションソフトのバージョンがあります。 あまり古すぎては準備しているところは少ないでしょうし、反対に、あまりに新しすぎて発売したばかりのものは、印刷会社の方で生産活動の手段として検証ができていなくて、受け入れられない場合があります。 したがってデータを受け渡すときには双方とも使用アプリケーションソフトの種類と、そのバージョンの確認が不可欠になります。
■どんな文字を使っているのか
DTPで使う文字の種類のことをフォントと呼んでいます。 フォントには大きく分けて2種類あります。 ひとつはTrueTypeと言われるもので、パソコンの購入時にある程度準備されており、ユーザーは無意識に使っています。
もう一つのフォントは、Type1フォントと言われるものです。 DTPには不可欠のもので、高品質の文字 (ギザギザのない滑らかな文字) を再現しようとすると、Type1フォントが必要となってきます。 しかし、Type1フォントはTrueTypeに比べて高価なため (現在は1書体20〜30万円)、出力を請け負う印刷会社や出力サービスセンターではすべてのフォントを準備しておくのは負担であり、日常よく使われるフォントしか準備していないところもあります。
したがって使用フォントの確認は絶対に必要な項目となっています。 特に特殊なフォントを使った場合は確認しておかないと出力の段階で困ることになります。
■データはどこまでつくられているのか
印刷用のデータがどの段階まで作られているのか、完成度のレベルといった把握そして印刷会社との確認は、費用、納期にも関係している大変重要な問題です。
データの完成段階はおおむね以下のようになっています。
以上のように、DTPにおいてデータの完成度は差があり、制作サイドの負担は大きく異なってきますし、印刷会社の作業内容も異なってきます。 当然支払い料金も変わってきます。 また、必要とする期間も変わってくるので納期も異なってくることになります。
制作サイドでは自分の能力 (制作のパワーと技術レベル) 及びコストを勘案して、どこまでを自分たちで作り、どこから先を印刷会社に任せるのかを決めなければなりません。 印刷会社では、どの段階のデータでも受け入れることができるところが増えてきています。
■品 質
自分でデザインや組版などを行うことによって、手作りに近いこだわりの品質のものを作ることが可能です。 そもそもDTPの発生はこの部分にあったようです。 印刷会社への指示指定では伝わりにくい作業を自分でやってしまおうといった発想です。
■コスト
DTPは、制作段階でカラーないしモノクロのプリントアウトができます。 この作業は比較的安価 (会社によってはサービスでやっているところもあります) にできます。 今までですと校正刷りの段階までいかなければイメージの具現化ができず、修正を加えるのもこの段階まで待つしか手段がありませんでした。
どうしても修正代 、再製版代といったものが大きくのしかかっていたわけです。 DTPでは途中でチェックができるので、校正刷りができた時点では、修正なしとすることができます。 こうすることでDTPによるコストダウンが可能になります。
また、自分達でデザインやレイアウト、組版を行える人達にとっては、今まで写植版下作成に必要とされていた費用がいらなくなるといった効果もあります。
■納 期
DTPを使うと納期を短縮することができ、制作サイドの手元に置いておく時間が多く持てるようになります。 今までは印刷会社への入稿 (原稿類を印刷会社に入れること) は、下版 (完成したフィルム原版を印刷用の刷版に焼き付けるための工程に渡すこと) の何日前と決まっていましたが、データの完成度が高ければ印刷会社で加工する時間を短くすることができるので、許されるギリギリまで制作サイドの手元に置くことができます。 たとえば最新の記事を掲載することができるというメリットがあります。
■データ保存
DTPはデジタルデータをベースに行われています。 デジタルデータは後で説明しますが、各種の加工や保存に大変便利です。 デジタルデータを上手に保存しておくことにより、次回の印刷物作成に使ったり、他の印刷物に利用することもできます。 また、印刷物以外のメディアに使うことも可能となってきました。
また、データを入れるメディアには、最近はこの他にも種類が豊富になってきており、jaz (1GB)、PD (650MB)、MD (130MB) などが使われるケースも出てきました。 大量のデータの場合にはリムーバルディスク (移動可能なハードディスク) が使われるケースもあります。
通信環境の向上により通信での入稿といった手段も考えられるようになってきました。 パソコン通信を使ったり、インターネットを使う方法もあります。 使用頻度が高い場合は専用回線を引いて行っているところもあります。 画像データはデータ量が多くまだ快適な環境とは言い難い面もありますが、テキスト程度なら問題なく送受信が可能なので、送る距離や送るデータの容量によっては、他のメディアで送る場合よりもメリットがあります。
一般的には他人が作ったデータを触ったり修正したりすることは危険がともないます。 データの作り方は、個人差があってクセがあるからです。 データの作り方によっては、直し箇所しか触っていないのに他の箇所まで変化してしまうケースが往々にしてあります。 このようなことから、データを作った人が直すのが原則とされていますが、発注者と印刷会社で話し合って決めていくことになります。

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