■第5回:「デジタルデータを活用しよう」
Aさんのチラシ制作は、回を追うごとに順調になり、効果も出てきました。 しかし情熱はこれで留まることなく、もっと売り上げを伸ばすことはできないかと考えます。
すると印刷会社の人に、使い捨てにしない再利用の方法があるので考えましょうと言われました。 Aさんのお店のチラシに掲載される商品の大半は固定化されていて、新しい種類の商品の割合は多くありません。 そこで毎回使う商品の写真と文字を整理して、再利用する目的を明確にして保存し、簡単に使えるようにしようではないかということになってきました。 いわゆるデータベースと言うものです。
データベースは、最初はその制作に費用が発生しますが、2回目以降はそのデータベースを有効活用することによって、通常発生する費用よりもコストを抑えることができるとのことでした。
Aさんのチラシでは、データベースを作れば写真の取り込みが一度で済み、商品の説明文、スペック、価格など変化するものは少ないので、その都度入力する必要がなくなるとのことです。 なによりもチラシ作成のたびに発生する原稿整理、写真と説明文との照合といった準備作業を大幅に省略できるので、Aさんにも印刷会社にも恩恵があるとのことでした。
Aさんは印刷会社に依頼してAさんのチラシ専用のデータベースを作ってもらうことにしました。 印刷会社では、毎回Aさんのチラシ制作を担当しており、チラシの特徴、商品の使われ方などが把握できているので、データベースをどのように構築すればAさんの要望に応えられ、チラシ制作に効果的なデータベースが作れるかおおよその見当がついていました。 そこで、早速システムの設計をはじめました。
その仕様書はAさんのほぼ満足のいくものであり、印刷会社でもチラシ作成に十分効果が期待できるとのことでした。 次にデータベースの構築に取りかかりました。
チラシでの写真やテキストの再利用に的を絞ってデータベースを作ったので、その利用は比較的安易で、次のような効果が現れてきました。
Aさんは地域に密着した経営を目指していたので、小学校の遠足や運動会などのイベント用の特別セールをしてみたいと前から思っていました。 しかし、1つの学校を対象にしたチラシでは印刷部数も少なく、費用が割高になりそうで踏み切れなかったのです。 しかし、データベースができたので、そこに入っている材料を使えばそんなに割高にはならないだろうと相談に行ったわけです。
印刷会社では、DTPを使えばその完成データから直接印刷する方式があるとのことでした。 チラシ作成のようにDTPデータをフィルムに出力して、校正刷りを出したり、さらにそのフィルムから印刷用の刷版を作り印刷機械にかけるといった方式ではなく、DTPデータを専用の印刷機械にかけて印刷する方式です。
デザインのカンプや校正刷りの代わりに出してもらっていたカラープリントの出力と同じような方法です。 印刷機械での印刷よりは品質は若干劣りますが、カラープリントよりも品質は良く、印刷部数もある程度の部数ならばプリンターよりもコストメリットがあります。 この印刷方式をオンデマンドプリントと言い、DTPデータがあれば随時必要な時に必要な量の印刷が可能になります。
いつものチラシよりもサイズを小さくして、写真やテキストはすべてデータベースに入っているものを使うことでコストを抑えるようにしました。 いつものように印刷会社のデザイナーにデザインしてもらい、データ類はデータベースを使いDTPの完全データを作りました。
そのDTPデータをオンデマンドプリントに対応しているところに持ち込まなければなりません。 しかし印刷会社の人の話によると、Aさんの住む地域にはオンデマンドプリントに対応するような大きな印刷会社はないとのこと。 その代わり、東京の印刷会社で対応できるので、そちらで印刷しようということになりました。
早速AさんはチラシのデータをMOに入れて、同時にプリントアウトを出力見本として、営業の人に渡しました。 数日してその印刷物であるチラシがAさんの元に届けられました。
このようにAさんは 『○○小学校運動会用セール』 という地域限定の小部数のチラシを作るのに成功しました。 その効果は思っていた以上で、予想以上の売り上げを出すことができました。 この方法でAさんは、近くの学校だけではなく、この店に買いに来るお客様の地域全部に、地域限定のチラシを配り、大きな売り上げをあげることができました。
このチラシの企画を考え、検討しはじめてから驚くほど短い期間でチラシができたことが成功の要因です。 特にDTPデータを送ってからは予想以上の早さでした。
印刷会社の人の話ではMOを送るのではなく、通信で送ればもっと早くできるとのことでした。 しかし今回のようにデータの中に写真が入っている場合は、データの通信も時間がかかるとのことです。
店内のポスターや商品案内 (POP) にも印刷が使えそうとわかると、Aさんは積極的に活用するようになってきました。 もちろん、そのデータは印刷会社に預けてあるデータベースです。 データベースのデータを活用して店頭のPOPや目玉商品の案内なども、従来の手書きから、印刷データを利用したカラープリントとなり、だいぶ見栄えが良くなって、店内のセンスアップにつながっているようです。
印刷会社の人の話では、データベースの中身を使えば、商品をカタログのように集めたCD-ROMもできるとのことでした。 今、よく話題となっている電子カタログの一種です。
データをCD-ROM用のフォーマットに加工して、さらに検索プログラムを付加することにより、商品を検索でき、写真やスペックを調べることができるようになっています。 CD-ROMには写真やテキストはもちろん、音声や動画も収めることができるので、作り方によっては色々なものが効果的に作れるとのことでした。
CD-ROMはパソコンに入れて使います。 最近のパソコンは標準的にCD-ROMドライブがついていて、簡単に楽しめるようになっています。 CD-ROM1枚の容量は600MBと比較的大きいのでカタログや辞典、図鑑などに電子出版として使われています。 印刷会社では、通常の印刷以外にもこうした電子メディアにも積極的に対応しているところが多く、数多くの実績を残しています。
Aさんは今回のCD-ROM化の提案は、主旨は理解できるが、一商店でをつくるのはまだ時期尚早として見送ることにしました。
Aさんの住んでいる地方では、郷土色豊かな特産物が数多くあります。 その特産物を一定の地方にとどめておくことなく、全国に知らせる手段があることを知らされました。 インターネットです。 インターネットを使えば商品の紹介を写真で実物を見せることができますし、スペックや特産物の説明文も入れて詳しく紹介することができます。
Aさんは地域に愛着のある郷土愛の強い人なので、なんとかこの地方の特産物を、訪れてくる観光客だけではなく、全国に広めたいと考えていたので、さっそく前向きの検討に入りました。
しかし、今までのチラシ印刷のように、こちらから一方的にお客様に送り付けて、足を運んで貰うのを待つといった性質の方法とは異なり、こちらのサービスに気付いてもらってアクセスしてもらわなければ効果が出ません。 また、現在はまだ特定のグループ内でしか決済の方法がないとのことなので、販売の契約や料金の回収をどのような手段で行うか、解決しなければならない課題がたくさんあることに気付きました。
ただ、Aさんは今までのように、黙ってお客が来てくれるのを待つ商売では将来が先細りになると真剣に考えていたので、お客の地域が限定されない、日本全国、さらには世界を相手に商売ができるこの通信販売の手段を簡単にあきらめる気にはなりません。
さっそく、地域の商店の人達にも声を掛けて、賛同した仲間でインターネットの効果と将来性についての勉強会を始めました。 また、きっかけを作った印刷会社の技術者を呼んで、インターネットの現状や運用方法の事例研究も始めました。
現在、Aさんのグループは自治体をも巻き込んで、なんとか全国に 『我が町あり、この特産あり』 を知らせようと、必死に取り組んでいます。

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