■第1回:「色が見える」(前編)
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
いわゆる、何かとなにかを混ぜたり、組み合わせたりすることで、色々な色が出来るならば、さらに美しい色を作ることが出来るに違いない。この考えの中には鉄や鉛などの金属なども、美しい金に変えられるであろうという発想も含まれていました。
「錬金術」と名づけられたこの研究には、全ヨーロッパの学者たちが熱中し、15世紀ごろまでの永い間続けられました。
もちろん、このようなことは、実現される訳はなく、総ては失敗に終わりました。現在の化学の知識では、誰も真面目に研究する人などいないでしょうが、この当時は真剣に考えてのことだったのです。
政府や教会から、錬金術の実験や研究を中止する命令がでて、おおよそ2000年にわたる、人類最大の愚かな行為は幕を閉じることになりました。
色彩を正しく理論づけ、解釈したのは、りんごが木から落ちるのを見て、引力を発見したイギリスの物理学者アイザック・ニュートンです。
ケンブリッジ大学に学んだニュートンは、学生の時に色に興味をもちはじめることになります。折しもこの時期、ヨーロッパ一円にペストが発生し、学校が休みとなり、約一年半ニュートンは故郷の田舎に帰ることになりました。
この間にニュートンは、色についての実験と研究を重ね、それまでの誰もが気づかなかった全く新しい、色彩理論を組立てました。
それは、色は物体についているものではなく、物体に当たっている光の中にあるという理論です。ニュートンは、プリズムという三角形のガラスに、太陽の光を当てて、たくさんの色の光の帯を壁に映し出し、光の中に含まれている色を分解して見せました。ニュートンは、この光の帯をスペクトルと名づけ、大きく赤、橙、黄、緑、青、藍、菫の7色に分類しました。
彼の実験は、ガラス・プリズムで分けられた色の光一つひとつを、同一の物体表面を照明して観察するもので、例えば、白い物体に赤色光で照らすと赤く輝き、赤い物体に緑色光を照らすと黒くなって見えることを見出しました。
ニュートンは、このような実験からどのような物体の色も、照明光の色によって変わって見えるという現象を発見したのです。
私たちが、雨上がりに虹を見るときの虹の色は、まさに光の中に色のあることを証明しており、ニュートンはこれらの色光こそが色の源と唱えているのです。太陽光や電灯の光のなかには、このような色光が含まれており、これが物体に当たったとき、物体の表面で色光の吸収と反射が起こり、吸収されなかった光が目に入ると、私たちは、その色光の色を、物体の色と感じとられているというのが、ニュートンの理論で、現在の色彩理論の原点となっているのです。
この理論が作られたのは、ニュートン23歳、1666年のことです。
例えば、「広辞苑」には次のように記されています。「視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。光の波長だけでは定まらず、一般に色相、彩度、明度の三要素によって規定される」。
また、「岩波国語辞典」では、「物に当たった光のうち、吸収されず反射したものを人の目が受けるとき、波長の違いで赤、黄、青、緑、紫などいろいろの色が生ずる」と掲載されています。
たしかに、ニュートンの理論によって、近代色彩理論は、「色」は光であるということが確立されましたが、光そのものがどのようなものであるか、光の性格とは何か、また色を私たちが「色」として捉え、認識するとき「目」はどのような働きをするのかなど、光、物体、そして認識する目の、三つの要素を知る必要があります。
また、色彩論については、ニュートンの理論の他にヤング、マックスウエルなどの理論、さらには、文学者ゲーテの色彩論など色に関する研究も現在の色彩学に大きな影響を与えています。
色の話の第一回目としては、ちょっと堅い感じの部分もありますが、色のお話をするときに避けて通ることの出来ないところです。次回はどうして色が見えるのかを、動物の話などを織りまぜながらもう少し、柔らかくお話したいと思います。

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