■第2回:「色が見える」(後編)
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
時折、犬が信号のある横断歩道を、あたかも信号の色を理解して渡っているように見受けるときがありますが、犬をはじめとする動物など、生き物も色を認識しているのでしょうか?
その前に、色を認識するためには、どのような光でも良いのか、ということを知らねばなりません。太陽光や蛍光灯・白熱灯などどのようなものでも、光のあるところであれば色を見ることは出来ますが、どのような光でも同じに見えるわけではありません。
誰でも経験のあることの一つに魚屋さんの店先に並べられた沢山の白熱灯、これは魚を新鮮においしく見せるための工夫です。蛍光灯を点けている魚屋さんはあまり見かけません。
また高速道路のトンネルに設置されたナトリウム照明の下では、彩り豊かな美しい絵本もくすんだ色が大部分となり、楽しい絵本にはなりません。このように光の種類によって色は異なって見えるのです。
太陽光や電灯光などの光は、その性質として真っ直ぐに進むのではなく、海岸に波が押し寄せてくるように幾重にもつながり、うねりながら進んできます。
紫、青緑、黄色や橙、赤などの色光は、それぞれの色の波となっていて、大波や小波のように波の大きさの違いが色光であることが確かめられています。この波頭と波頭の間の長さを波長といい、光学測定器などで精密に測定すると、多くの色がそれぞれの波長で色光の帯を形づくっていることが分かります。
この380nmから770nmの範囲を人間は「色」として判断している部分で、「可視光領域」いわゆる色を見ることの出来る範囲となります。(“nm”はナノメーターと読み、1mmの100分の1を表します)
また可視光領域の限界や境界には個人差があり、日本工業規格では色として紫色光の下限は360〜400nmで、赤色光の上限は760〜830nmに存在するとしています。

紫外光よりもっと短くなりますと、病院などでお世話になるX線、もっと短かくなりますとガンマー線などがあります。ガンマー線の波長はなんと100億分の1_b以下になります。
反対に赤色光よりさらに長くなりますと、これも色はありませんが、熱エネルギーを持っているので、赤外治療やコタツなどに用いられる赤外光となり、さらに長くなると電子レンジなどに用いられるマイクロ波となります。
また、日頃楽しんでいるラジオやテレビの放送波も、可視光線の仲間で、これらはヘルツ波の領域ともなりますが、波長は200bから3キロメートルにもなります。
したがって私達が色として捉えている可視光域は、太陽の輻射線のなかの僅かの部分を認識していることになります。
私たちの感覚器官として匂いは鼻、味は舌などそれぞれ大切な機能をもっていますが艨u目」も大切な感覚器官の一つです。
「色」を認識するときはやはり「目」が重要になってきます。物を見るときのプロセスは、「水晶体を透して網膜に写して、視神経で感ずるんだよ」と良く何かの会話の折りに耳にします。これはこれで粗い説明ですが、概略では間違いではありませんので、ここでは、「網膜に写して・・・」のところを少し探ってみたいと思います。
子供に物が見えるしくみを説明するときに、しばしばカメラが引合に出されます。レンズ・絞り・フイルムがバランス良く物体を捉えたときに、素晴らしい写真が出来ることになりますが、これを目にあてはめるとレンズは水晶体、絞りは虹彩に、フイルムは網膜にあたります。
このなかで特に網膜は、色や形を脳に伝える大切な役目をもっており、網膜の組織も複雑な構造で、数種類の細胞層からなりたっています。
このうち、色にかかわるものを視覚細胞層といい、この細胞層には棒状の桿状体と少し膨らんだ錘状体という2種類の視細胞があります。
桿状体は光に対する反応に優れ、錘状体は色に対する反応に優れています。また、桿状体は弱い光にも敏感に反応し、暗い場所で活動を盛んにします。色としては青や紫系の領域に高い感度を示します。
これに対し錘状体は、明るいときに活動を盛んにし、色の感度も赤やオレンジの波長部分で高い感度を示します。
もうお分かりのように、色を認識するためにはこれらの視覚細胞層に、桿状体や錘状体を持っているかいないかで決まります。乱暴な言い方をすると錘状体を持っていると色の感覚があり、無いと色感は乏しいと言えるかも知れません。
答えはNOです。残念ながら犬や猫には錘状体はありませんので、色を感ずる能力は極めて低く、青みがかったモノクロの状態で物を見ていることになります。ちなみにカメやカエルには錘状体があり、トンボも色を見分けることが可能です。

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