■第4回:「顔料」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
![]() |
|
有機顔料の生産 |
そして顔料は大きく分けると、天然の色のついた土や石を砕いて粉にした無機顔料と、練金術の副産物を出発点に化学的につくられる有機顔料に分けられる話をしました。
無機顔料にしろ有機顔料にしろ、そもそも色の付いたこれらの粉をなぜ顔料と言うのでしょう。
一説には、古代の人々は自然と一体化した生活をしており、生活の多くの場面に占いや呪術的なことがあったようです。
これらの儀式の際、儀式を司る人は顔を主として体の色々な部分に、天然の色のついた土や石を砕いた粉を塗り霊感を高めたり、また戦いの時に相手を驚かす意味合いとやはり士気を高めることを目的に、化粧をしたようです。
定かではありませんが、より美しさを誇張するための化粧もあったことでしょう。顔料は、まさに顔に色を塗る、化粧するための色料と言われるのも納得のいくところです。
偶然のなせる技か、最古の白色顔料は鉛白で、鉛と酢を用い炭酸ガスで反応させるもので、日本においても僧観成が鉛粉を製したと日本書紀にも記録があり“京おしろい”の名で多くの女性に用いられました。
勿論有毒であるため後には使用されなくなり、現在の化粧品の色料はこれからお話する化学的につくられる有機顔料が用いられていますが、美しくなることへの憧れに古代の人と同じように顔に色を塗ることが行われていることに、なぜか微笑ましさを感ずると同時に、顔料という言葉に奥深さを感じます。
![]() |
|
フィルタープレスでレーキを作る |
有機顔料は、一口でいうと前号でお話した染料を水に溶かして、硫酸バリュームや水酸化アルミニウムなどの白い粉(体質顔料)に染付けて、水に溶けない形にしたものです。少し専門的な話になりますが、有機顔料も大きく分けると二つに分けることができ、一つはレーキ顔料といい、もう一つはトナー顔料といいます。
レーキ顔料は、染料にマンガンやアルミニウムなどの水溶性金属塩または、アルカリ土類などを用い不溶性にしたものです。
19世紀末に発明されたリソールレッドが最初で、その後数多くの顔料が開発され、色的には処理温度や処埋剤により黄色や橙・赤が主を占めています。レーキ顔料は多くを印刷インキに用いられ、耐性の違いにより塗料やプラスチックにも用いられます。
もう一つのトナー顔料は、土類などの体質顔料を使用しないで、基本的に水に溶けない化学反応物質を用い、化学構造を変化させて造られるものをいいます。
学生時代、理科の実験でアルカリや酸など、薬品を混ぜ合わせて反応させ、色々な色を作った経験はどなたにもあることでしょう。
トナー顔料とレーキ顔料の大きな違いは色の濃さで、体質顔料を用いないトナー顔料は当然のことながら、色は濃いものとなります。
有機顔料は無機顔料に比べると
などの特性があります。さらに細かく分類すると、4の分類表のようになりますが、現在私たちの多くの場面で用いられている色の素は、余程の理由がないかぎり、これら有機顔料のいずれかのものが使用されているといっても過言ではないでしょう。
最近は社会的にも環境や公害問題が話題となっていますが、有機顔料は安全面においても優位であり、彩り社会ともいわれている現代において、ますますその重要性は増してくることでしょう。
次回からは、代表的な色や彩りについての歴史やエピソードなどに触れる予定です。
| 構 造 | 代 表 さ れ る 顔 料 名 | ||
|---|---|---|---|
| 無 機 顔 料 | 酸化物 | 二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化鉄、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー | |
| 水酸化物 | アルミナ白、酸化鉄黄、ビリジアン | ||
| 硫化物 | 硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド | ||
| クロム酸塩 | 黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート | ||
| 珪酸塩 | ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青 | ||
| 硫酸塩 | 沈降性硫酸バリウム、バライト粉 | ||
| 炭酸塩 | 炭酸カルシウム、鉛白 | ||
| その他 | フェロシアン化物(紺青)、燐酸塩(マンガンバイオレット)、炭素(カーボンブラック) | ||
| 有 機 顔 料 | 捺染系顔料 | 塩基性染料 | ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ |
| 酸性染料 | キノリンエローレーキ | ||
| 建染染料 | マラカイトグリーンレーキ | ||
| 媒染染料 | アリザリンレーキ | ||
| アゾ系顔料 | 溶性アゾ | カーミン6B、レーキレットC | |
| 不溶性アゾ | ジスアゾエロー、レーキレット4R | ||
| 縮合アゾ | クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN | ||
| アゾ錯塩 | ニッケルアゾエロー | ||
| ペンズイダゾロンアゾ | パーマネントオレンジHL | ||
| フタロシアニン顔料 | フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン | ||
| 縮合多環顔料 | フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド | ||
| ニトロ系顔料 | ナフトールエローS | ||
| ニトロソ系顔料 | ピグロントグリーンB | ||
| 昼夜螢光顔料 | ルモゲンエロー、シグナルレッド | ||
| その他 | アルカリブルー、アニリンブラック | ||

(C) Copyright The Japan Federation of Printing Industries < info@jfpi.or.jp >