■第5回:「白の不思議」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
話は、「色彩のセミナーで白やグレーや黒などは、無彩色なので色相や彩度は無い、と教わった。したがって白色と言うのは間違いですか」という内容でした。
瞬間戸惑いを感じましたが、JIS色名の無彩色の基本色名に白が掲載されていること、また、何よりも無彩色と「色」の字をつけて分類しているところから、「白は色の名前でしょう」と返事をしました。 確かに白は 「白」 と言いますが 「白色」 と色をつけて表現することは少ないようです。
そんな理由から、最初は「白い色」を取り上げてみたいと思います。
一般的に「白」に対するイメージは、どのような色とも調和し、清潔で健康的というのが、男女や年齢に関係なく持たれているイメージのようで「純粋・素直・無邪気・誠実・高貴・活気」などの言葉が多くの本に書かれていますが、色彩学や光学からの「白」を離れ、私たちの身近なところでの「白」を探してみたいと思います。
白の話をしながら大変物騒な話ですが、白殺し(しろころし)という言葉が、藍染職人さんの間で、昔から使われています。白い布にほんの少し藍を載せ、綿特有の薄黄味を帯びた白さを消し、より白く感じさせる所作をいいますが、実はこの「白に青みを加える」ことの応用編ともいえる具体例が、私たちの身の周りに多くあります。
本当の白い色、皆さんが好み描いている白いとはどのような白なのでしょうか。
多くの人が経験していることに、夜、水銀灯や蛍光灯の下でYシャツやブラウスが青く見えることが挙げられますが、清潔感を得るためには、Yシャツやブラウスは黄ばんだ白では好まれないのかもしれません。
より白く見えるように蛍光染料が用いられ、昼間の明るさでも少し青みがかった白に見え、同時に輝度が加わり「真っ白」という言葉が実によくマッチします。
ところが、青みを加えて白さが増したはずの布ですが、反射率を測定してみると、白さが増したと感ずるのとは反対に反射率は低い数値を示します。
学問的には、青みの分だけ低くなるのはあたりまえのことですが、青みを加えてより白く見えるという人間の感覚に、学術面では理解出来ない不思議さが感じられます。
また、食器の分野でも白磁には微量のコバルトが含まれているところから、淡い青みを帯びており、ヨーロッパを中心に中国やアメリカ、最近では日本でも大手パンメーカーのノベルティ用に用いられたことなどから、白磁の焼きものの愛用者が増えているようです。
やはり焼きものの世界でも、少し青みのあるものが好まれているようで、陶芸職人さんの間では、このような色合いを「月白(げっぱく)」と表現しています。
白は神聖という感覚が世界的に昔からあるようで、イエス・キリスト、天照大神、釈迦、マホメットなどの着衣は白であり、現在においてもローマ法皇の着衣は白です。
神官の着衣と牧師さんの着衣、異なった宗教ではありますが、着衣が同じというのも妙なものです。
また、日本のみならず白鹿や白蛇、白馬や白狐などの動物はどれもが神聖な動物として崇められており、宗教的な表現にはやはり、白が一番相応しいのかもしれません。

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