■第6回:「青のイメージ」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
歳時記を開いてみると春から初夏にかけて青春、青葉、青嵐、青すだれなど 「青」 の言葉が並び、爽やかさやすがすがしい季節感を形成しています。
俳句の聖人松尾芭蕉が
江戸からはるばる奈良の唐招提寺に赴いた時は、像の前はあたり一面青葉が照り返し、真っ青な光がお堂の中にいっぱいに溢れていたとのことです。
薫風の中に微笑んでいる盲目の鑑真像に、芭蕉はどれだけ感動したのでしょうか?
日本においても明治末から大正初期にかけて、当時のインテリ婦人たちがロンドンの婦人たちにならって 「青鞜派」 をつくり、恋愛の自由や婦人開放を強くうたいました。当時にしてみればこれは大変なことで、現在の自由恋愛の時代から考えると想像もつかないものでした。
明治40年11月に発刊された『婦人世界』には、
「恋愛に陥る人は如何なる体格の人物かということを観察してみると、必ず体格不良の神経質家に多い。体格の発育が不良であると必ず神経が過敏になり、鼻の生殖部に充血を起こし、後脳と前脳が刺激され恋愛の情が発動する。毎朝つるべに百杯程の冷水を浴び、終日器械体操をすることを半年も続けると恋愛は消滅する。将来の教育家は恋愛予防の一策としても、青年男女の体育を奨励せねばならぬ」
と記されており、当時の婦人たちの勇気と苦難がなければ、今私たちは半年の間冷水を浴び、器械体操をしなければならなかったのかもしれません。「青色の靴下」に大大感謝をしたいと思います。
青い色は婦人だけが知的であった訳ではなく、同じイギリスの二大名門大学のスクールカラーも青系でまとめられています。
ケンブリッジ大学とオックスフォード大学のスクールカラーは、ケンブリッジが淡いブルーを、オックスフォードのそれは濃いブルーを校色としており、それぞれケンブリッジブルー、オックスフォードブルーの名で呼ばれています。
故事来歴を語らずとも青色に対しては性別や国、年齢を問わず、深く澄みきった聡明さと知性を感じとっているからかもしれません。
このことは多くのアンケートや統計などからも正確に表され、特に年齢層からみると青は人気のある色として登場してきます。
お酒をとことんまで飲むと万物全てが 「青色に見える」 ことから出ている言葉だそうで、ときに朝の太陽が黄色に見えるのとどう違うのか、いずれにしろ何事も度を過ぎると色が出現してくるのかもしれませんね。
絵画の世界でも、青は重要な位置を占めています。ピカソの「青の時代」の作品の数々に登場するやせた女や老人たち、また東山魁夷の北欧の森と湖の作品に展開するブルーのムードが、おちつきと、もの寂しさを表現しています。
本文をお読みの方はいかが感じていらっしゃいますか?
「青色の月曜日」 という言葉が諸外国で活用されています。楽しかった日曜日が終わり、また一週間の仕事が始まる月曜日の朝のもの憂いブルーの気分は、世界各国で共通なのかもしれません。
ただし、仕事が大好きで月曜日がくるのを待ちかねている方も、ごく少数いらっしゃることも事実ですが……。
色に対して繊細な神経を持っている日本人は、また焼物や染物に青やブルーに多くの関わりを持っていますが、一度青い色にこだわりをもって私たちの身近な品々を見わたしてみるのも楽しいかもしれません。
一度お試ししてはいかがでしょう。

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