■第17回:「住まいとインキ」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
「男一生の大仕事に家造りあり」と、昔から言われているようですが、昨今の住宅事情は、なかなか思うに任せぬところもあるようです。さて、私たちの生活の基本である、住まい。住まいの場面ではどの様な所に、どの様な印刷インキが用いられているのでしょう。
住宅展示場に出かけた時の、巡覧を思い浮かべながら住まいの中を見てみましょう。
玄閃には、少し大きめの化粧タイルを敷きつめてあることも多いのですが、化粧タイルの一部には、自然石を割ったような重厚さを感じさせる印刷タイルがあります。この化粧タイルには、グラビアインキのタイル用転写インキが用いられており、シルクスクリーン印刷方式で印刷されます。タイルは印刷の後、約80℃程度で焼き付けを行い、表面の強度を出すための後工程が施されています。さあ、玄関を終わり居間を覗いてみましょう。
語らいと寛ぎの場である居間は、落ち着きと温かさ感が程よくマッチする色合いの空間です。床はフローリング、壁は淡いワームカラーの布クロス仕上げが現在のトレンド。
さてフローリング、あまり気が付かないかもしれませんが、フローリングの色合いも濃い茶色のものあり、明るいブラウンのものありで、部屋の雰囲気にあわせて多くの色が揃っており選択も自由です。このフローリングの一部の品々は、木目を活かしつつ、色を均一にするためグラビアインキの塩ビ木材用インキが塗布されており、部屋の雰囲気づくりに一役買っております。
また、居間の壁に張ってある壁紙も、普及品と高級品に素材の違いはあるものの壁紙には、やはりグラビアインキの薄級化粧板用インキが用いられています。ちなみに、高級品はポリエステル化粧板用インキが多く用いられており、ポリエステル化粧板用インキを用いた壁紙は、耐水性を保有しているところから、水拭き掃除を可能にし、また印刷加工が容易であるところから、徐々に使用範囲を拡げてきています。
最近は洋風の居間が多くを占め、調度品も部屋の雰囲気に合わせ、英国調のものやイタリー調のもので統一する本物指指向家庭も増えて来ています。反面、印刷技術を駆使し、高級品に似させたリーズナブル価格品も普及し、テーブルや椅子などの木目印刷や木地印刷は、グラビアインキタイプのテーブル用転写インキが用いられております。
テーブルは、天板がメラミンやポリエステルなどのプラスチック素材で出来た花の絵や幾何学模様のものが多く出回っていますが、これらのインキには家具用プラスチック転写インキが用いられており、季節的には子供の学習机などには、かわいいキャラクターを捕いたものも数多く見受けます。これらに類似したものには、テレビなど電化製品がありますが、これらプラスチックス製品にも家具と同様、家具用プラスチック転写インキが用いられています。
また、最近の流行として居間のおしゃれに、朝日や夕日を効果的に取り入れる工夫がなされており、なかでもステンドグラスを取り入れた居間が増えているようです。本来のステンドグラスは、色ガラスを絵柄に合わせ繋なぎあわせて完成させるものですが、高価であることと時間がかかること、また、近年ガラスへの印刷技術が高まったことなどから、ステンドグラスの印刷も増えてきています。
この、ガラスの印刷にはガラス用シルクスクリーンインキが用いられ、約80℃前後の温度で焼き付けられ、ガラスの美しさと色合いを醸し出しております。
居間には、まだまだ住まいに関連した多くの家具調度品がありますが、次に和室に移動して見ましょう。
住まいのなかで日本人が、日本人に生まれて良かったと思う場所は、2ケ所あるというのが一般的で、一つは風呂場、もう一つは青畳のある和室だそうです。
障子戸を透かして入る太陽の光は、多くの物を淡く優しく包み替え、和室が持つ独特の雰囲気が、好感をもたれる理由かもしれません。
さて、和室。天井を見てみましょう。一般家庭の和室の多くは、天井が杉板張りで、少し凝った造りでは、桜皮の素木と杉板が上手に組み合わされています。この杉板ですが、天然木は価格も高価であることと、自然環境を保護するなどの理由からか、最近は複数の和室を有する場合、床の間のある一部屋は、天然木を用いますが、ほかの和室はプリントされた杉板を天井板として使用されているケースが多く、特にこのケースは、マンション住宅に多く見られ、約70パーセントがこの方式を取り入れているようです。
杉板のプリントは、グラビアインキタイプのポリエステル化粧板用インキが用いられており、下から見上げても天然木と見分けるのが困難なほど精巧な印刷が施されています。
目を天井から少し下に移して見ましょう。和室のなかで和室らしさを感じさせ、印刷インキと関連のあるものに襖があります。最近の襖の傾向は、幅の広い大きな襖が流行りのようで、これは襖そのものを壁に見立て、戸の感覚を薄れさす嗜好が増えたことが理由のようです。
江戸時代の襖は、当代の有名絵描きが浮世絵などを直接襖板に描くか、襖に柿渋を塗るなどが大半を占めていましたが、明治時代以降草木や幾何学模様を紙に印刷し、貼る技術が高まり、現代のような襖の形態が出来上がりました。
襖の印刷は、フレキソ印刷で、便われる印刷インキも紙用フレキソインキが用いられ、松竹梅や松などおめでたい絵柄のものや、霞など裾絵が主流を占めます。
和室には、タンスや鏡台を置いてある家庭も多く見受けますが、この木目タンスにも前述した、グラピアポリエステル化粧板用インキが用いられ、和室の雰囲気を創り出しています。
それでは、和室を後にしてお風呂場を見てみましょう。最近のお風呂場は、カラーセラピーの考えも取り入れられ、ソフトで優しい色使いがなされています。
クリームや淡いべ一ジユが主流ですが、周りのタイルに花の絵柄などが入っているのも今風です。このタイルの印刷は、グラビアタイプの塩ピタイル用インキが用いられていますし、バスタブに描かれた優しい絵柄は、プラスチック用グラビアインキで印刷され、お風呂でのリラックス度を向上させています。
住まいの中での印刷インキ、ひととおり主な部分を見てきましたが、この他力ーテンの印刷には、繊維用捺染グラビアインキが用いられていますし、外に出ると外壁材には過酷な天候に耐える、グラオフインキが使用されています。住まいと印刷インキ。印刷インキは住まいの分野でも広く、多くの場面を彩り、形づくっています。

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