■第20回:「インキの種類と分類」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
以前にもお話しましたように、東洋インキにはコンタクトデスクという、印刷技術・インキ・当社製品への質問・問い合わせにお答えする部署がありますが、時折印刷に関わりを持たない方から「印刷インキ」についての問い合わせを受けることがあります。これらの方に「印刷インキ」を説明することはなかなか難しく、特に分類の仕方を間違えて説明すると、理解をして戴けないこともあります。
この分類とインキの種類についても、一慨に区分けすることは難しく、それぞれの立場でインキを分類されており、印刷会社の人は印刷方式で主に区分けされますし、紙業関係の方は被印刷体別に、そしてインキメーカーの人は乾燥方式や組材で分類することが多いようです。
| 凸版 | インキの付く部分のみが盛り上がっている | 活字/凸版印刷 |
| 凹版 | インキの付く部分のみ彫り込まれている | グラビア印刷 |
| 孔版 | インキの付く部分のマスクが抜けている | ガリ版印刷 |
| 平版 | インキの付く部分が親油化、付かない部分は親水化 | オフセット印刷 |
| 無版 | インキに電圧を負荷させて被印刷体に電気抵抗映像をつくる | ジェットプリント |
印刷の版式からは概ね以上の5式が挙げられ、最近では凹版や平版が主流を占め、一世を風靡した活字主体の凸版や樹脂凸版は少なくなり、また最近では、オンデマンド印刷の普及により、無版印刷が徐々に増加の傾向にあります。
印刷の版式と印刷の方式の分類は、似かよったところもあり、人によっては一つに括って、区分けをしないかたもいらっしゃいますが、ここでは分けて調べてみることにしましょう。
| 直刷り | 版面と被印刷体が直接接触する印刷方式用インキ | 活版印刷 |
| 間接刷り | 版面と被印刷体の間に転写媒体がある印刷方式用インキ | オフセット印刷 |
| 昇華刷り | 直刷り・間接刷物を熱などで被印刷体に昇華するインキ | 昇華転写印刷 |
| 無圧刷り | 静電気を利用する印刷方式用インキ | 静電印刷 |
代表的な該当印刷を例として挙げてみましたが、これらが印刷方式からみた分類です。次に、印刷に関わる分類の仕方として印刷機械の機構から区分けしてみましょう。
| 枚葉印刷機 | 単色/多色 | カード印刷機 |
| 輪転印刷機 | 単色/多色 | 新聞輪転機 フォーム輪転機 シール輪転機 |
| 特殊印刷機 | 単色/多色 | 金属板印刷機 板紙・ダンボール印刷機 曲面印刷機 |
機械別の分類では、印刷用途によるものや印刷機械の構造、例えばプラテン印刷機やハンドプレスのように印刷圧が平らに掛かるものの方式、輪転機でもB/Bタイプといわれるブランケットとブランケットの間を印刷紙が通り、加圧胴が無い構造ものと共用加圧胴を具えたサテライトタイプの輪転機では、印刷インキのタイプも異なってくるということでインキは分類されます。
やはり印刷に関わる分類が多く、印刷版の違いによる区分けもあり、大きく分けて刷版の素材による分け方と印刷方式同様、刷版の種類により区分けすることができます。
段々混乱してきました。そして技術的になってきましたが、大きな括りの印刷に関する「インキの分類法」でひと区切りにしましょう。
| アルミPS版 | 一般オフセット印刷用 |
| アルミシリコーン処理版 | 水無し平版印刷用 |
| 合成樹脂凸版 | 一般ドライオフセット/フレキソ印刷 |
| ゴム彫刻凸版 | 一般フレキソ印刷用 |
| 多層金属凸版 | 高級凸版美術印刷用 |
| 金属円筒彫刻凹版 | 一般グラビア印刷用 |
| 鉛/アンチモン活字 | 一般活版印刷用 |
| 大理石 | 特殊オフセット/コロタイプ印刷用 |
| 平台金属彫刻凹版 | 一般曲面印刷用 |
| シルクスクリーン版 | スクリーン印刷用 |
実刷版からの分類は如何でしょう。最初にお話しましたように、それぞれの立場で詳細の分類の仕方は、異なってきます。
また、分類の仕方はこれだけではありません。この他にインキ会社が得意とする分類方法である「乾燥方式」の違いによる分類、またインキの組材や性状による分類の仕方などがありますし、被印刷体の違いによるインキの分類の方法もあります。
印刷インキの組成については詳細後述しますが、使われています主成分で区分けする分類方法があり、一般的には「○○型インキ」「○○タイプ」という時はこの組成分によるインキの区分けを指すのが現状です。
一般的に多く使われる例としては、油性タイプとか溶剤タイプなどの呼び方で、大きく分けると次のようなタイプに分けることが出来ます。
| 樹脂タイプ | 油性タイプ |
| 水性タイプ | 亜麻仁油タイプ |
| アルコールタイプ | グリコールタイプ |
| ワックスタイプ |
このなかで樹脂タイプは、合成樹脂をベヒクルに用いたインキを指し、亜麻仁油タイプは植物の亜麻から搾取した油を加熱重合し、ベヒクル及び調整材として用いているタイプです。
組成面の分類では、この他にもラバーベースタイプや近年関心が高まっております「オンデマンド印刷」インキ用新組材があり、将来にあっても新しいタイプのインキが開発されることに合わせ、新しい区分け分類が出てくる事でしょう。
インキ分類のなかで乾燥方式の違いによる区分けは、カテゴリーとしては大きなもので、インキメーカーとしては重要な分類方法です。
例えば、紫外線硬化型インキという言い方は、まさに乾燥そのものを言い当てており、インキの分類で乾燥が重要なファクターを占めていることがわかります。
乾燥形態で一番ポピュラーなものは、酸化重合型でオフセットインキや活版インキはこの乾燥方式で、空気中の酸素を媒して、自然乾燥によるものです。
二番目に多いのは、グラビアインキやオフセット輪転インキなどの乾燥方式で、蒸発乾燥型があげられます。これは、自然放置乾燥とガスバーナなどで得た熱風を用い、乾燥する方式です。
また、束高の紙用インキとしては、凸版輪転インキや水性フレキソインキがあり、これらのインキの乾燥は浸透乾燥方式で、紙の繊維にインキが浸透し、かつ自然乾燥するタイプのインキです。身近で束高の本は、漫画週刊誌や廉価月刊雑誌などが該当しますので、これらの本を手にした折には、浸透乾燥タイプのインキで印刷された印刷物であることをご確認されるとまた一層認識が深まることでしょう。
また、近年「必要な時に必要なものを必要な数だけ」という、所謂オンデマンド印刷に関心が高まっており、既に国内において220余台のオンデマンド印刷機が稼働しているようですが、このオンデマンド印刷には、エレクトロインキという液状インキが用いられております。
現段階において、このインキの乾燥方式については、業界および学会などで正式な乾燥方式名は定まっていませんが、東洋インキ社内においては「熱定着型乾燥」と命名し、日常業務のなかで表現しています。
| 酸化重合型 | 浸透乾燥型 |
| 蒸発乾燥型 | 紫外線硬化型 |
| 赤外線硬化型 | 電子線硬化型 |
| 常温自然乾燥型 | 熱硬化型混合反応型 |
が現在一般的に利用されている乾燥方式ですが、この他にも裏カーボンインキの乾燥方式のように、温めて流動性のあるインキを紙面で冷し乾燥させる冷却乾燥型もあります。
乾燥によるインキの区分は、インキ製作者の立場からは極めて重要な区分けであるため紙面を多くとりましたが、もう一つ大きな区分けの方法に被印刷体による区分分類があります。
この被印刷体によるインキの分類も大きなファクターを占めます。
被印刷体は大きく分けて紙、金属、木材、ガラス陶器、石油化学品、布、コンクリートやゴム、その他天然加工品、さらには食料品にいたる、水と空気以外のすべてのものが被印刷体といえます。
このように非常に幅広い被印刷体にマッチする印刷インキが必要で、被印刷体の特長に合わせインキを用意する必要があります。
したがって、印刷インキのタイプも必然的に種類が多くなります。
ここでは紙面の関係もありますので、一般から少し離れて「金属インキ」についてお話しましょう。
金属板インキといっても、ジュースなどの飲料缶なのか、ビスケットなどの化粧缶なのか、また表面が平らなのかビード缶(胴体にギザギザのついているもの)なのかによってもタイプは異なりますし、金属の種類、アルミ缶とスティール缶でも異なります。
金属板インキの最大の特長は、缶詰などのように内容物によってレトルト処理という、高圧蒸気殺菌が行われることから、これらの熱や蒸気圧に耐えることも必要で、これらの耐性や特性によってもインキのタイプは異なることになります。
金属板インキの詳細な特長などについては、また別の項でお話しますが、被印刷体の違いにより、また耐性など諸要望条件によっても印刷インキの区分けは異なることを、この項ではご理解戴きたいのです。
この他にも色々な区分け分類はありましょう。少し大雑把なインキの区分けと分類をしました。この先具体的な話のなかでも折にふれてお話していきますが、印刷インキを「軽口で知って戴く」ことを優先し、分類したものです。この分類を基に次回からは、やさしく肩の凝らない内容で「インキ」の話を進めます。

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