■第24回:「インキの材料 3−補助剤」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
印刷インキの組成と材料について、前回まで説明し、大きく括ると 印刷インキは色料・ベヒクルから成り、ベヒクルは樹脂と溶剤から出来ていることをお話してきました。今回は、組成の大きな括りの最後「補助剤」について学ぶことにしましょう。
少し乱暴な言い方をしますと、例えばここまで学んだ印刷インキの組成材を、良く混練しただけの「混ぜ物」を作り、紙などに転写した状態でも、「印刷インキとしての役目」を果たすことが出来、「印刷インキです」といっても間違いではありませんし、昔の印刷技術であれば充分通用することでしょう。
これは、あくまでも例えで、乱暴な話ですから、実際に造ったりすることはありませんが、印刷インキは樹脂、油、溶剤から成り立つ「ベヒクル」と、顔料や染料などの「着色料」が均一に分散されたものであれば、最も基本的な印刷インキといえるものです。
しかし、印刷インキはその使用のなかで、実に複雑な「適性」をもっていることが必要となります。
そこで、今回のテーマである「補助剤」が必要となります。補助剤は、料理でいうと、砂糖や塩・胡椒などの調味料にあたるもので、補助剤の使い方次第で、高級インキにも低級インキにもなるという、大切な要因を占めるものです。
補助剤に属する薬剤も種類が多く、印刷作業環境の場面から、乾燥に関わるものや性状調整に関わるもの、色調に関わるもの、印刷物となってからの加工性や使用条件に関わるものなど、極めて幅の広いものです。
ここでは、紙面の関係で代表的なものについて取り上げてみたいと思います。
まず、印刷作業環境の場面から、印刷インキで最も必要な適性は「乾燥性」といえましょう。この乾燥ですが、紙の上ではできる限り「速く乾燥する」ことが必要で、反して印刷機械上では、できる限り乾燥しないことが印刷インキとしては望ましいもので、このような性能を満たすために、酸化重合型乾燥方式の場合、乾燥促進剤いわゆる「ドライヤー」として、ナフテン酸コバルトなどの有機酸塩やオクチル酸マンガンのような硼酸塩を用い、空気中の酸素を取り入れ、ベヒクルに与えて乾燥を促進させます。
また、反して印刷機上で、できる限り乾燥を遅くさせるために皮張り防止剤、いわゆる「乾燥抑制剤」を用いることが必要で、多くの場合はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの有機還元剤が使用されます。
印刷作業環境の場面で、次に補助剤として大きなウエイトを占めるものに、インキの粘調度を印刷条件に合わせて、微妙に調整するための「調整剤」があげられます。
最もポピュラーなものは、インキの粘調度を単純に柔らかくする希釈剤、石油系溶剤「レジューサー」がありますし、粘調度を柔らかにし、より流動性を与える補助剤として「00ワニス」などがあります。
また、同じインキの粘調度の調整剤として、アルミニウムキレートなどの金属石鹸などを用いてつくられた、外観上ゼリーの形状をしています腰切り剤に『ジェリーコンパウンド』があり、インキの流れを出来る限り抑えた状態で、インキの粘性をサクサクの状態にする時に用います。
印刷インキに求められます粘調度は、印刷作業環境、印刷物の種類また印刷機械の種類などにより千差万別で、印刷物の網点再現性や光沢を向上させることを目的に、アルミニウム石鹸や酸化ポリエチレンなどを用い、インキを弾性のあるプリプリ感を持たせ、流動性を抑える役目の「ゲルワニス」があります。
次に、印刷インキの色合いを調整するための、補助剤について調べてみましょう。
印刷インキの濃度や色調を整える場合、色合いを薄める場合と、より色合いを濃くする、または青みを増すなどの場合がありますが、色合いを濃くしたり、青みなど色相を調整する補助剤として、「トナー」があります。
トナーを多く用いる場面としては、墨インキへの添加があげられ、多くの墨インキにはブルートナーやバイオレットトナーが用いられており、墨の印刷インキの缶の蓋を開けた時、インキの表面に若干玉虫色感があるように見えるのは、ブルートナーのなせる技で、ブルートナーには赤口・青口などの種類があります。
ブルートナーを添加することで、墨インキは漆黒感が強まり、重厚感を得ることが出来ることになります。
反対にインキの色合いを薄める場合はどうでしょう。多くの場合、メジュウムを用いることが一般的で、メジュウムは、本来ベヒクルと同じ組成で造られ、無色でインキ濃度を下げる時に用います。
しかし最近では、体質顔料をベヒクルに分散させた、ビクトリヤおよびチントと一緒の意味合いを持つようになり、濃度を下げる補助剤として、「メジュウム」と表現する印刷会社の方が多くなってきているようです。
間違いではないかもしれませんが、ベヒクルだけで出来ている濃度低下剤は「メジュウム」体質顔料を用いてある濃度低下剤は「ビクトリア」と記憶されるのが、本来は望ましいのですが……。
次に、印刷物になってから効果を発揮するに必要な補助剤を調べてみましょう。
印刷物になってからの補助剤の要求事は、その印刷物の用途によって異なります。
例えば、パッケージなどの場合は適当な「滑り」が必要で、この滑りを与えるために「滑りを良くするワックス」が用いられますし、玄米を入れるクラフト袋などの場合は、滑りを悪くするためのワックスが、補助剤として用いられます。
この他、石鹸のパッケージ用インキなどの場合は、どうしても黴びが生えるため「防黴剤」が補助剤として用いられますし、印刷物の裏移りを防ぐため「裏移り防止コンパウンド」などが用いられます。
この他多くの補助剤が、印刷適性を満たすため、インキ会社特有の技術を活かし、用いられているのです。

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