■第28回(最終回):「インキのトラブル2」
戸津川 晋(東洋インキ製造株式会社・広報室)
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今回は前回に続き、インキに関わりのあるトラブルや事故について、原因と見分け方、救済と対策について学ぶことにしましょう。
前回もお話しましたが、印刷においてのトラブルは、湿し水や機械的な要因が複雑に絡み、トラブルとなるケースが多く、その原因をしっかり見極め原因に沿って対処しなければなりません。トラブルが起きる要因は、チョットした気遣いや確認で、事故を未然に防ぐことができますが、気遣いのキッカケを掴むことは、なかなか難しいようです。
これらの気遣いや確認の項目をマニュアル化し、共通のチェック項目に沿って作業を進めることで、トラブルを解消することも効果を得ることに繋がりましょう。
前回に引き続き、オフセットインキを中心に述べることにしましょう。
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1. カール
- 現象
- 薄紙でベタ刷り面積が多く、特に咬え尻にベタ部分が多い印刷物で、紙が「反り返る」「丸まる」状態を言います。
- 原因
- インキのタックが高すぎ、ブランケットからのインキ離れが悪く、尚印刷スピードが速すぎると起きやすい。また、用紙の寸法の採りかたで、咬え尻に余白部分が不足していると起こりやすい。
- 救済
- インキ面からは、腰を切るためにジェリーコンパウンドなどの腰切り剤を添加してタック値を下げ、粘性を下げる。使用しているブランケットに粘性劣化が認められる場合は良く洗浄し、パミストンパウダーや硫黄粉を塗布すると効果を得ることもできます。
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2. 紙むけ
- 現象
- ピッキングともリフティングとも言うことがあります。印刷紙の表面の一部分または、紙そのものがブランケットや版に剥けて、取られる状態で、コート紙の場合はコート層のみ取られたり、束高紙(漫画本に用いるようなザラ紙)の場合は、繊維が取られる状態を言います。
- 原因
- カールと同様インキのタックが高すぎる。印刷室温が低過ぎ、インキに適性な流動性が不足している状況でも発生することがあります。用紙の面からは、用紙の表面強度不足が挙げられ、ブランケットの面からは、カールの場合と同様、粘性劣化が起きていることが挙げられます。
- 救済
- やはりカール発生と同様、インキ面からは、腰を切るためにジェリーコンパウンドなどの腰切り剤や希釈ワニス、またレジューサーを添加し、タック値を下げると同時にインキに流動性を与えることが必要です。用紙については、デニソンワックスを用いて用紙表面強度を確認し、極度の紙剥けがある用紙については類似用紙に変更し、ブランケットについても良く洗浄のうえ、適した剥離粉を塗布するなどの対応を図ることが必要です。
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3. クリスタリゼーション
- 現象
- 多色印刷を行う際、先刷りの印刷面に後刷りのインキが弾かれて部分的にしか載らない、または見かけの状態では載っているが、擦ると簡単にとれてしまう状態をいいます。
- 原因
- 項目の言葉どおり、クリスタル=先刷り印刷物の表面がガラス状になって後刷りインキが載らないわけで、先刷り印刷を行ってから後刷り印刷までの間隔が開き過ぎた場合。また、先刷り印刷に用いたインキに含まれるワックス系コンパウンドやシリコーン、フッ素系添加剤が多過ぎた場合これらの添加剤が先刷り印刷物の表面に浮いた状態となった場合。平滑度の高いアート紙や加工紙に、紫外線硬化型インキなどの乾燥の速いインキを先刷りした場合、後刷りインキが若干乳化気味となった場合にトラブルは起きやすくなります。
- 救済
- 先刷り印刷からあまり時間を経過させないで、後刷り印刷を行うよう心掛け、先刷りインキには、できる限りワックス系やシリコーン、フッ素系の添加剤の使用を避け、添加に際しても極力少ない添加量とする。
→クリスタリゼーションと間違いやすいものに、裏付き防止パウダーの過剰散布がありますが、クリスタリゼーションと同様、先刷り印刷物を硬度の低いブランケットを用い、印刷機を空通しすると後刷りインキが載りやすくなることがあります。前回のトラッピングの項とも関わりがありますので合わせてお読み下さい。
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4. ブロッキング
- 現象
- 乾燥過程を終えた両面多色印刷物を棒積みした場合、印刷物が互いに密着し、剥がす際に印刷面を傷つける状態を言います。
- 原因
- 静電気が起き易い印刷環境下で、吸収性の低い平滑な印刷用紙に、乳化気味のインキを、盛り量を多くした時に起きやすい。また、スプレーパウダーの散布量を少なくし、棒積み量を多くした時も起きやすい。
- 救済
- ブロックキングしてしまった印刷物の救済は、非常に難しいものですが、ブロッキングを防止することは可能です。湿度などの温度管理を行い静電気の発生を防ぎ、インキはできる限り濃度のあるインキで、薄盛りで印刷することが必要です。また、インキに裏移りコンパウンドを適量添加し、適量のスプレーパウダーの散布と棒積み量をあまり多くしないことも大切です。刷り上がり印刷物は、適宜「風入れ」作業を行い、インキの酸化重合乾燥の促進を行うことも必要です。
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