■第4回:「木目印刷と立体印刷」
(前回までのあらすじ)
印刷会社に勤めるA君。印刷に関するクイズに答えられなかったので、奥さんのB子さんと一緒に身の回りにある印刷技術に関連したものをメモして、いかに印刷に関連したものが多いかがわかりました。
一般的には合板や金属板に直接印刷したり、プラスチックフィルムに印刷し、これを貼り合わせる方法が主流となっていますが、最近では、天然材のような表面の感じを出すために、凹凸まで再現して木目や木肌と同じような色、模様のある印刷を行う「立体模造技術」も多く使われるようになってきました。
そういえば、木目印刷が高級感を出すために活用されている例に自動車の内装があります。高級車には一部本当の天然木を使用してあるものもあるにはありますが、最近の自動車部品の物性規格は非常に厳しくなっていて、天然木だけで規格をクリアーすることは経年劣化などから困難なために、金属板と貼り合わせるなどの方法をとることがほとんど。
そんなこともあって、高級車に実際に使われている木目模様のダッシュボードや内張りは印刷によるものが多く、プラスチック成型したものに曲面印刷(絵付け)を施したり、木目を印刷したシートと成型したプラスチックを精巧に貼り合わせたものが利用されています。
車の中を部屋と考えれば、壁や家具と同じような感覚で高級感を与えているのかもしれません。
<この立体印刷には、油絵などのタッチや絵の具の盛り上がりを忠実に再現した高級複製絵画もあるな。イベントで実物と複製絵画を並べてどちらが本物かを多くの人に判断してもらったら、約半数の人が複製絵画を実物と思ったということを聞いたことがある‥‥‥>
そしてA君は立体印刷という言葉から、子供のころ、赤と青の2色の絵柄を少しずらして印刷したものを、左右に赤と青別々の色が付いたメガネをかけて見ると、浮き上がって立体的に見えるものが雑誌の付録などによくついていたことを思い出しました。
最近は本格的な「立体印刷」として、絵葉書やグリーティング・カード、パッケージなどもよく見かけます。多くは、少し厚みがあって表面に細かい凹凸のあるタイプのもの。
このタイプは、レンチキュラーレンズという幅が1mm以下のカマボコ型プラスチックレンズを印刷物に貼り、特別なメガネなどを使わなくても左右の目が別々の像を見ることができるようにしたものです。
もちろんこのための印刷物は右目用、左目用の像をレンチキュラーレンズに合わせて交互に正確な印刷をしておく必要があります。
この原理を応用して、立体テレビの実験も行われており、近い将来には現在のテレビのような身近な生活関連製品になる可能性を秘めています。
また最近、クレジットカードやビデオの不正複製防止用シールなどに利用されている立体印刷が「ホログラム印刷」。
<とくに普通の白色光で見ても立体再生ができるホログラムが開発されて、印刷にも利用されるようになってきたんだった。ホログラムの利用は偽造しにくいという特徴からセキュリティが求められる印刷物に多いけど、それ以外にもポスターやシール、POP広告などのさまざまな分野に応用されてきている。あのキラキラした立体感は、見ているとなんだか鏡の世界に入り込んだみたいで不思議な感じがするからな‥‥‥>
などと、メモを見ながら考えていると洗いものを終えたB子さんが、
「どう? たくさんあるでしょ」
と手を拭きながら座ります。
「いっぱい見つけたね。僕もかなりメモしたからダブッているのもあるけど‥‥‥。でも他にも印刷に関連したものはあるかもしれないな。お昼に君も知っている0さんに話したら、0さんの先輩で印刷技術に詳しいKさんに教えてもらったらどうかというんだ。紹介してあげると言われたから、ぜひお願いしますと頼んだら早速Kさんに話してくれて、お宅に伺うことになったよ」
「Kさんってあの有名なKさん? すごいじゃない。0さんに感謝しなくちゃね。何がきっかけだか知らないけど、あなたも勉強家に大変身で気味が悪いくらいだわ」
「印刷技術者としてみっともないことのない程度の知識を身につけようと思っただけだよ。さあ、寝るか」

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