■第7回:「ワープロ文字はどうやってできたか」(後編)
ビットマップフォントからアウトラインフォントへ、デジタルフォントも進歩してきています。しかし日本語という特殊性から外字などの課題も残されています。
これは、細かなマス目の方眼紙を、一マス一マスていねいに埋めて絵を作ると、近くから見たのでは単なる白と黒の正方形の連続にしか見えませんが、遠くに離して見ると絵柄がハッキリ見えるのと同じ原理を使っています。
ワープロなどでは、1文字を24×24ドットや32×32ドットで表すのが普通です。 もちろん数多くの点で表現した方が精度の良い、読みやすい文字となります。 この文字が、ワープロやパソコンの画面表示やプリント出力に使われることになるわけです。
ただ、このフォントを使用した場合、点の集合で文字を作るわけですから拡大してみるとギザギザが見えてしまいます。 ワープロを持っている人は、画面に表示されている文字を拡大鏡、ルーペなどでのぞいて見て下さい。 点が見えるはずです。
プリンターで出した文字は、出力機の種類、出力の解像度 (どのくらい細かな点で表すかの単位でdpi=ドット・パー・インチ、つまり横1インチに何個の点が並んでいるかで計る) によって見えたり、見えなかったりします。
1文字当たりのドット数を変えずに文字サイズ (級数、ポイント) を大きくすると、当然1つ1つのドットが大きくなるので、そのぶん文字のガタツキが目立ちやすくなるわけです。
逆に、小さくするとごみごみして文字がつぶれたようになり、読みづらくなってしまいます。 つまりビットマップフォントは常にきれいな文字を表現しようとすると、使われるサイズの数だけサイズ別ビットマップフォントを用意する必要がでてくるのです。 しかしこれは事実上不可能なことです。
実際には、出力装置の解像度によっても適正なドット数があり、3段階くらいに分けて、それぞれの大きさに適したビットマップフォントを準備しているのが普通です。 しかし、そのぶん多くのメモリーを必要とすることになるため、極力、必要なメモリーが少なくて済むように、データ量を減らすことが重要になってきました。
そこで考えだされたのが、「ランレングス」 というデータ圧縮技術。 ランレングスというのは、個々の画素1つずつを0または1と追っていくのではなく、0または1がいくつ続くかを記憶させておく方法です。
こうした文字の拡大縮小への対応だけでなく、縦長にしたり、逆に横長にしたり、あるいは斜めにした斜体で使ったりと、文字を変形して使用する場合もこのビットマップフォントは、あまり融通がききません。
また、ある決められたドットの数で文字を表現しようとするわけですから、当然制限があって、画数が多い文字は表現しきれない場合がでてきます。 その場合、少なくとも画面上では、画数が間引かれた状態で表現されることになります。
アウトラインを描く方法は何種類かあり、それぞれ特徴をもっています。 直線の集合で表現するライン方式、直線と円弧の組み合わせで近似させる方法、ベジェ曲線で表現する方法などです。
このアウトライン方式は文字の形状を数式的に持っているだけで、文字のサイズとは無関係なため、ひとつの字母から拡大・縮小や斜体等の変形処理が自由に行えるといったメリットがあります。 また、フォントの格納も比較的少ないメモリーで済むなどの利点もあります。
そのため現在、デジタルフォントの主流の座は、アウトラインフォントとなっています。
また、このほかのデジタルフォントとしては、文字イメージの骨格線を一本の線で表す 「ストロークフォント」 があります。 設計の際の製図で使われる、CADシステムの出力装置であるペンプロッタなどはこの方式が主流です。 骨格の線で表現するため、複雑なデザイン的要素の再現は得意としません。
これらはともに、実際に活字なり、文字盤をもたない限り利用できないわけで、技術的なことも含めてパーソナルな使い方はできません。 やはり、専門の印刷会社なり写植会社なりに依頼するしかありませんでした。
しかし現在は、文字そのものの原形を物理的に持つのではなく、デジタルデータで取り扱い、出力時に初めて文字になるという方法に変わっています。 こうすることにより、文字のもとになるフォントデータが数枚のフロッピィに収められ、個人レベルで自由に使えるようになってきたわけです。
デジタルフォントが普及したおかげでワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、プリンタにフォントを入れれば誰でも自由に文字が取り扱える環境となり、価格も下がったこともあって、一般家庭にも急速に普及してきたわけです。
コンピュータ内部で取り扱う文字は、実際には文字そのものではなく、個々の数字や記号に対応した番号として処理をし、出力の時に文字の形にしています。 このため、その数字や記号 (文字コード) の番号を、1文字1文字あてはめていかなければなりません。
もちろん、各個人やメーカーが勝手に番号を決めたのでは収拾がつかなくなってしまいますから、この番号 (コード) を管理して互換性を保つことになり、日本では日本工業規格が 「JISコード」 として取り決めを行いました。
JISで決められているのは、情報交換用漢字符号系として第一水準、第二水準で漢字6、355文字、非漢字524文字、補助漢字集合として漢字5、801文字、非漢字266文字です。 その他パソコンメーカーの多くが使っている 「SHIFT−JIS」、文字のトップメーカーである写研が使っている 「SKコード」 などがあります。
ただし、通常ワープロ、パソコンで使うことができる文字の範囲は第一水準、第二水準までであり、使用上制限があります。 たとえば 「渡邊」 の“邊”は普通は“辺”で表現して 「渡辺」 となってしまいます。 どうしても“邊”を使う時は外字という扱いとなり、文字を作成して登録後、初めて使用できるようになります。
前にも説明したように、文字はコードで管理されていますから、外字を作った場合もその文字にコードを振り当てなければなりませんが、ここで問題が発生します。
コードを勝手に付けてしまうと、自分1人で作業するぶんには問題ありませんが、この文章をFDで他人に渡してもその人はプリントアウトどころか、表示すらできない状況になってしまうのです。 そこで、外字フォントの登録や新しいデザインの書体の登録方法を考慮する必要がでてきています。
コンピュータで文字を取り扱う上では、フォントは一定の範囲内で使用する制限がでてくるのは仕方のないことで、運用的に妥協が要求されてしまうことになります。

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