■第1回:「包んで鮮度を保つ食品の鮮度保持包装」(前編)
内容物の性質を十分につかみ、研究の結果、内容物の新鮮さをそのまま保ち、環境にやさしく、中身を美しく演出する「鮮度保持」機能をもつさまざまなパッケージ。
新鮮に、美しく贈りたい、届けたい。そんな贈る人の気持ちを大切にして考えられたのが「切り花包装」です。新鮮な生花を出来るだけ長持ちさせるために、生花の生態系の特徴を色々と調べ、いかにして中身の鮮度を長い時間保つか研究がすすめられてきました。
そして、この技術の延長から生まれたのが「鮮度保持」という機能を持つさまざまなパッケージです。こうしたパッケージの誕生によって、農作物・果実・野菜類を、収穫直後に近い状態で長い期間保存するということが可能になり、新鮮な物が、好きなときにいつでも食べられるということができるようになりました。
また、農作物だけでなく肉や魚貝類も、普通の状態ではすぐに腐って悪くなってしまいます。これらを長期保存するためには、これまでは乾燥するとか、薫製にするなどの加工が必要でした。しかし、肉類や魚貝類などがどうして悪くなるかを研究していくうちに、これらの物から出るドリップと呼ばれる汁分が雑菌の繁殖源になっていることがわかり、このドリップを制御することによって、肉や魚をそのままの状態で長持ちさせられるようになったのです。
ジュースなどの果汁飲料は昔はガラス瓶容器が主流でしたが、製品を運んだり、空き瓶を回収するといった流通問題や廃棄された場合の処理などの環境問題もあって、最近は紙容器に変わりつつあります。しかしかつての紙容器は、内容物の果汁類が本来持っている香りや風味を損なうという欠点を持っていました。
ただこれも、その原因を追及してみると、その内面に使われているプラスチックのフィルムが、フレーバーを吸着してしまうために起こる現象であることがわかり、現在ではその対処方法も開発されています。
生鮮食品を包むためには、その内容物の性質を十分につかみ、その性質を利用することが非常に大切です。こうした研究の結果、内容物の新鮮さをそのまま保ち、環境にやさしく、中身を美しく演出するといった、機能を持ったさまざまなパッケージが作り出されてきました。
これらのパッケージの誕生にも、印刷業界がさまざまな側面から深く関わっています。
じつは、その秘密は「花束自動包装機」にあります。
これは、切り花の水入り包装作業を自動化したもので、切り花包装の袋の供給から、鮮度の保持のための水の充填、テープ結束までの一連の作業が自動で行えるという便利なものです。しかも1分間で15〜20束の速さを持っているというから驚きます。
特に、鮮度保持のため水入りにしたことにより、店頭での水替え作業が数日間不要となり、切り花を量販店などでも容易に扱える商品に変えることに成功したのです。
さて、花瓶に生けられた一輪の花は、生活に潤いを与えてくれますが、この花がすぐに萎れてしまうのでは意味がありませんね。もちろん切り花を販売する側にとっても、この鮮度保持は重要な課題です。
花が萎れて枯れるのは、植物の老化現象ですが、老化というのも成長の一種。この成長過程で重要な役割を演じているのが、「エチレン」という物質です。植物はその体内でエチレンを合成し、そのエチレンの作用で成長が促進され、落ち葉や落花が生じることがわかってきました。
つまり、リンゴやバナナが美味しく熟すのもこのエチレンの作用ですし、枯れたり萎れたりするのもまたこのエチレンのせいなのです。そこでこの作用を調整することにより、植物や果物の成長を早めたり、遅らせたりできるはずだと考えられました。
エチレンの作用を抑制する方法の一つが、チオ硫酸銀という薬品を使うもの。この薬品は、切り花がエチレンを感じとる働きを鈍らせる作用を持っています。そのため、出荷前の切り花をこのチオ硫酸銀溶液に一晩浸しておくと、成熟が遅れて日持ちが良くなるのです。
ただ、この薬品には銀が含まれており、環境を汚すとの心配から、同じような働きをする別な薬品も開発されています。カーネーションやバラをこの液に6時間程浸しておくことにより、日持ちが従来の2倍に延びるようになりました。
また、植物の開花の時期を遅らせる薬剤も開発されています。誕生日やクリスマスなど、特別な日に合わせて、開きかけた花をタイミング良く出荷できるようになってきたのはこの薬品のおかげです。
しかし、薬の効果だけでは限界があります。そこで後に説明する、植物のエネルギーの消耗を押さえて、冬眠状態を作り出す低温貯蔵に加え、別な方面からもいくつかの試みがなされています。
たとえば、包装技術との関連でみると、花が放出するエチレンを特殊な包装紙を使って吸収したり、エチレンと反応する物質を使って保存容器の中で反応させて、エチレンの作用を抑える技術も開発されているのです。
この包装は、野菜や果実などを包んだパッケージ内の空気を、鮮度保持に最適な低酸素、高炭酸ガス濃度に保つ機能を持っています。こうすることにより、農作物は冬眠状態に入って成長が止まってしまい、収穫した時と同じ鮮度が、長い時間にわたって保たれるというわけです。
渋柿を例にとって説明しましょう。
渋柿を採果した後、まず渋抜きをしてから鮮度保持包装を行います。この時、柿が冬眠する酸素と炭酸ガスの温度を事前に調べておく必要があります。そして、包装した後に水温保存しますと、現在では、2か月以上の保存が可能となっています。
それまでは、柿の皮を剥いて太陽に干す干柿の形での保存が主なものでしたが、この技術が確立してからは、生の状懸での保存が出来るようになり、年末から年始の需要期に供給することが可能となったのです。
そこで、ドリップの吸収に適した高吸水性の多孔質シートを作り、生鮮食品を包む方法が考え出されました。高吸水性樹脂には無機系鮮度保持剤を含ませておき、この樹脂をクレープ紙でサンドイッチ状態にすることで ほば満足する機能を得ることができるようになっています。
天然果汁の飲料容器は、かつてのガラスびんから、最近ではほとんどがPET容器か缶容器、紙容器に変わりました。しかし、そこで問題となったのが、どうも味がいまひとつだ‥‥とか、風味が損なわれた‥‥との意見が多くなってきたことです。要するに、プラスチック容器のジュースは美味しくない‥‥というわけです。
そこでよくよく研究してみると、プラスチックがジュースのフレーバーを吸着し、ジュースの香りを変化させてしまうということがわかりました。その解決策として開発されたのが、直接ジュースに接するプラスチックに、フレーバーを吸着しないような表面加工を施す方法です。
この表面加工によって、ジュースの風味をそのまま維持することができるようになり、天然のおいしさ、香りを生かした本物の味覚を楽しめるようになりました。

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