■第2回:「包んで鮮度を保つ食品の鮮度保持包装」(後編)
食品を長期保存するためには、殺菌する方法、酸素の影響を受けないようにする方法などがあり、印刷会社ではそれらの方法が有効となる包装材料の研究を行っています。
| 加熱殺菌 | 高温殺菌、低温殺菌、温熱殺菌、乾燥殺菌、 高周波加熱殺菌、遠赤外線加熱殺菌、 電気抵抗加熱殺菌、他 |
| 冷殺菌 | 薬剤殺菌(液体、固体、ガス) 放射線殺菌(ガンマ線、電子線、X線) 超高圧殺菌、超音波殺菌、他 |
殺菌の種類は、大きく分けて「加熱殺菌」と「冷殺菌」の2つです。
加熱殺菌は、熱を加えることにより殺菌するもので、加熱方法として、蒸気の他に高周波による加熱や赤外線、電気非抵抗加熱などがあります。
蒸気加熱では、直接蒸気を噴射して温度を上げる方法や、蒸気に食品を接触させて温度を上昇させる方法があります。また、牛乳飲料のように成型されたプレートの間に液体を流して熱交換させたり、果汁飲料のように多重管の内外で熱交換させるなど、さまざまな方法があります。
いずれにしても、食品に与える影響を考慮して、条件を決めなければならないのは当然です。
一方、加熱ができないものは冷殺菌が用いられます。
一般には過酸化水素などの過酸化物の薬剤の他に、ガンマ線、電子線、X線などの放射線が使われる例もあります。また特殊なケースでは、超高圧を掛けて殺菌する方法もあります。
われわれの身近な生鮮食品をみてみると、たとえば生肉は紫外線、カット野菜や牛や豚の皮は薬剤殺菌されていますが、特に風味を生かしたジャムやジュースなどの殺菌には超高圧殺菌が使用されます。
一方包装する材料も殺菌する必要があり、とくにプラスチックなどは熱に弱いため、冷殺菌が用いられています。
この他、現在研究が進められているのが電気パルス殺菌法。水よりも若干粘性のあるもの、たとえば牛乳やオレンジ、ジュース、液卵などの殺菌が可能で、食品の香味や栄養素などへの影響はないようです。
「レトルト食品」はもともとアメリカで宇宙食として誕生したものです。少し前までは非常食品的色彩が濃かったものですが、最近ではたとえばビーフシチュー、カレー、ミートソース、スープ、コーンポタージュ、それにおでんやお好み焼きまで、嗜好品的なものも多くなり、種類も格段に増えています。
レトルト食品とは、調理された食品を、プラスチックの袋に入れ、加圧蒸気釜(レトルト)内で加熱殺菌した包装食品のことです。無菌状態にあるために、長期保存や常温流通が可能なのが特徴となっています。冷凍食品のようなコールドチェーンによらず、常温流通ができることで流通範囲が広がり、また、保存が容易にできるだけでなく、食べるときは袋のままお湯に入れて温めるだけで、食卓に出せるなどきわめて便利です。
これらに使用される包装材料は熱に強く、空気を通さないものが求められ、プラスチックフィルムにアルミニウムの箔を多層に貼りあわせて使用されています。
ただ、長期間保存しているうちに、包装しているフィルムを通して空気が入ってきては何にもなりません。フィルムの空気や水分が通過するのを防ぐ性質のことを「バリア性」といいますが、このバリア性の高い包装材料を使わないと食品包装の保存性に大きな影響を与えてしまいます。
また、包装された食品を酸素の影響から守るためには、ガスを充填させる方法もあります。これは真空にする代わりに、空気とその他のガス(窒素ガスや炭酸ガスなど)と入れ替えて包装する方法です。窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスを封入させることによって、内容物の保存性は驚くほど長くなります。
たとえば、牛肉、生鮮魚、調味加工食品、水産加工品、乳製品、菓子類などでは、窒素と炭酸ガスの混合物を充填することにより、微生物の抑制や肉色素の維持、カビの発育阻止、酸化防止等の効果が期待できます。また日本茶や粉末飲料、油菓子、削り節などには、窒素ガスの充填だけで酸化防止などの効果があり、広く使用されています。
これらに使用される包装材料は、窒素、酸素、炭酸ガスなどの気体の透過しにくいガスバリア性の高い物が必要です。
| ガス | 食品 | 効果 |
| 炭酸ガスと窒素ガス | 魚 | 肉色素維持、微生物抑制 |
| 調味加工食品 | 微生物抑制、旨味保持 | |
| カマボコ | 細菌やカビの防止 | |
| 生肉 | 肉色素維持、微生物抑制 | |
| ハム | 色素の酸化防止 | |
| チーズ | 脂肪の酸化防止 | |
| カステラ | カビの発育防止 | |
| ピーナッツ | 脂肪の酸化防止 | |
| 酸素と炭酸ガス | 生肉 | 色素の発色、微生物抑制 |
| 窒素ガス | 削り節 | 色素の酸化防止 |
| ドライミルク | 酸化防止 | |
| 日本茶 | ビタミンの損失防止 | |
| 紅茶 | 香気逸散防止 | |
| 油菓子 | 脂肪の酸化防止 | |
| 粉末ジュース | ビタミンの損失防止 |
一般に油類は、空気中の酸素と反応して酸化物となります。油で揚げたおかきなどを長い間空気中においておくと、変な臭いがしてくるのは、油の酸化による場合が多いのです。
そのために、このような食べ物を封入する時は、真空にするとか、ガス置換法によって窒素ガスなどに置き換えるなどして、袋の中の酸素を除いて包装することは前に述べました。しかし、内容物の内部に含まれている酸素は、ガス置換法などでは置き換えられません。
そうした、内容物から少しずつ発生する酸素を、吸収するために入れられているのが、鉄粉を入れた袋なのです。
袋には小さな穴が開いていて、その穴から空気が出入りできるようになっていす。穴から袋の中に空気が入ると、鉄粉が空気中の酸素と反応して酸化します。そのために、菓子袋の中の酸素が少なくなり、お菓子が酸化することを防ぐことができるのです。
こうした鉄粉を入れた小さな袋は、酸素の存在が食べ物の保存に悪い影響を与える物には有効であることが、各種の研究から確認されています。そんなわけで、最近は非常に多くの袋物に「食べられません」と書いた小袋が入っているのです。
また一昔前までは、同じお菓子の袋に、白っぽい小粒状のものが入っているのを良く見かけました。これはシリカゲルといって、水分を吸収する性質を持っている物質です。一般に乾燥剤として使用されていますが、真空包装などでも食べ物の中から出てくる水分を吸収する役割を果たしています。
こうした袋に使われている材料は、空気や水分を適度に通すことによって、はじめて脱酸素効果や吸湿効果が発揮されます。
しかし、内容物の食品と、場合によってはかなり長い期間にわたって直接接触して使用されることになるため、絶対に安全であることが要求されるのも当然のことです。包装材料にどんな物を使っても良いとはいうわけにはいきませんし、表示を印刷するインキの選択も重要になってきます。このあたりに、印刷技術の活躍する分野があるのです。
皆さんがよく目にする商品で紹介すると、まず、薬の錠剤を1個1個あるいは一定量を単位として包装する「ストリップ包装」があります。これは、連続した帯状に区画包装され、熱によりシールされて、ミシン目が入れられ、使うとき切り取れるようになっています。
また、スーパーでよく見かけるのが「シェリンク包装」です。熱で収縮するフィルムで商品を包み、物を包んだ後に熱収縮させるもので、ハム、ソーセージなどによく使われます。最近では用途が広がり、雑貨や工業製品にまで応用されるようになりました。
もう一つスーパーでよく見かけるものに「ストレッチ包装」があります。魚などがトレーに入っていて、その周りを透明のフィルムで包まれているもので、生鮮食品の流通、販売の合理化に大きな役割を果たしています。このフィルムは、家庭でもラップと呼ばれてよく使われていますが、トレーよりやや大きめに切ったフィルムを、その自己粘着性を利用して裏側で接着させる簡単な方法が好まれ、衛生的でもあることから、需要も目覚ましく増大しています。
印刷というのは、紙の上にインキを付けることを得意としています。紙の代わりに、プラスチックフィルムに絵柄を印刷したものが、即席ラーメンの袋に代表される食品包装(軟包装)です。しかし、これまで見てきたレトルト包装や、ガス充填包装、真空包装では、その包装に使用されるプラスチックフィルムが、即席ラーメンの袋にくらべて非常に特殊な材料であることがわかります。
もちろん これらのさまざまな素材に、商品名や内容物の表示などの印刷をするのも印刷会社の重要な仕事です。でも、こうした文字通りの「印刷」以外でも、印刷会社の技術は重要な役割を果たしています。
たとえば、レトルト包装などに使用するプラスチックフィルム。
レトルト包装では熱に強くなければなりませんし、ガス充填包装や真空包装では、フィルムが空気や炭酸ガスなどを通してしまっては役に立ちません。そこで、必要とされる性能に見合ったフィルムを捜さなければなりませんが、残念ながら、そんな都合のよい材料は単独ではないことがほとんどなのです。
では、どうするのでしょう?
そこで開発されたのが、ラミネートフィルムです。ラミネートフィルムとは、2種類以上のフィルムや材料を貼り合せることにより、複数の機能を持たせたもののことです。
じつはこのラミネートの技術も、まさに、印刷に使用される技術を応用したものなのです。フィルムの上に接着剤をコーティングしたり、貼り合わせたり、熱で圧着したりという加工技術は、印刷会社が行っている日常業務の延長線上にあります。
こうした材料を開発するためには、そこに包み込まれる材料の性質をよく知らなければなりません。たとえば、生肉を長期保存すると肉からどんな成分が出てきて、それが包装材料にどんな影響を与えるのかを知らなければ、包装材料として使えません。単に包装材料の研究といっても、実際に研究する範囲は非常に広範囲なものとなるのです。
印刷会社では、その蓄積した技術を広範囲に活用し、さまざまな包装材料を開発して食生活の多様化に大きな役割を果たしています。

(C) Copyright The Japan Federation of Printing Industries < info@jfpi.or.jp >