■第4回:「環境対応を考えた包装資材への取り組み」(後編)
生活者が安心して利用できるように、印刷産業は環境への適性を常に意識して、研究開発から製品の開発・製造を進めています。
バッグ・イン・ボックス (Bag in Box, 以下BIB) とはラミネート包装などの内袋と外装の段ボール、カートンなどを組み合わせた二重容器型の紙容器です。
1964 年に日本に初めて紹介され、その後各社が導入し、内袋の改良、注ぎ口の多様化、充填包装機械などの開発が進み、金属缶や業務用大型プラスチックボトルからの代替需要が増加することで順調な伸びを示してきました。 この形態は、1リットル程度の小容量から 1,000 リットルの大容量まで対応でき、またその使い方も業務用から消費者向けまで幅広く用いられています。
最近では、使用後の処理が容易なことから、環境対応型のパッケージとして注目を集め、衣料用柔軟仕上げ剤や台所洗剤などのトイレタリー商品 (日用品を含む化粧品や化粧用具の総称) へ応用展開されています。
環境対応のポイントは、まず第1に廃棄しやすいことです。 現在おこなわれている廃棄処理方法は素材の 「分別回収」 「焼却処理」 「埋め立て処理 (廃棄性)」 の3つがあり、BIB型容器はそのいずれにも適しています。
BIBの液体紙容器は、使用後に紙の部分とプラスチックフイルムの内袋を容易に引き剥がせるので、紙とプラスチックをそれぞれ別々に処理できます。
また、プラスチックボトルと比較して、プラスチック使用量を 70 %以上削減し、焼却時の燃焼カロリーをほぼ半減させ、焼却炉への負担を少なくすることができます (ちなみに、プラスチックボトルが約 10,000 キロカロリーに対し、BIB型の紙容器は 5,700 キロカロリー)。 さらに使用後には容器を小さく畳んで捨てられるので、体積が約 70 %に減少し、埋め立て処理にも有効です。
第2のポイントとして、紙の部分に再生紙を使用できる点が上げられます。 BIB方式の紙容器では、内袋と外箱からなる二重容器の構造になっているため、外箱に再生紙が使用することが可能になっています。
また、BIB方式の紙容器は、内容物の特性に合わせて、内袋に保存性や保香性に優れたフィルム材を自由に選択できる、用途により計量機能つき口栓や液ダレ防止機能付き口栓などが使用できるなどの特長があります。
BIB方式の液体紙容器の環境対応への展開は、内容保護のためのラミネート技術、ディスプレイ効果を高めるための外箱構造のデザイン、表面印刷加工技術、口栓の成形技術や紙容器への取付技術など、印刷産業が永年培ってきたパッケージングの総合的な技術が活かされて、はじめて可能になったといえます。
今後は、トイレタリー全般を中心に、ケミカル用品や液体食品 (飲料・調味料) など他分野への展開も考えられ、ますます市場への展開が活発になるでしょう。
たとえば、プラスチックボトルなどで販売されている洗剤、シャンプーといったトイレタリー用品で、それを使い終えた際の、中味の詰め替え用として液体紙容器が使用されはじめました。
プラスチックボトルは、使い勝手の良さや、完全な耐水性があることなどから、トイレタリー用品に多く利用されており、特にシャンプーやリンスなど、水に濡れることが避けられない製品には欠かせないものとなっています。 しかしながら、プラスチックボトルは焼却処理ができないため、環境問題について考えたとき、無制限な利用はできません。
このようなことから、最近では、プラスチック容器を何度も利用できるように、詰め替え用商品の販売が盛んになっています。 しかし、従来の詰め替え用容器の多くは、台所洗剤に多く見られるようにプラスチックフィルムなどの軟包装材でできており、「腰」 がなく、詰め替えるときの使い勝手が悪いという欠点がありました。
このような欠点を克服し、なおかつ詰め替え後の廃棄がしやすいように、液体紙容器の改良が進められました。 この容器は牛乳パックや日本酒用紙容器と同じように形がしっかりしているため、詰め替え時に安定感があります。 もちろん、紙製のため焼却処分が可能で、さらに潰してすてることができるため、ゴミの量の削減に貢献することができます。
しかし、洗剤やオイルなどの非食品は食品にくらべ浸透性が強く、とくにモーターオイルなどは強アルカリ性のため包材劣化が起きやすく、液体紙容器では長期保存ができないといった特性がありました。 印刷会社では、以前から内容物の浸透を防ぐ素材としてセラミック蒸着フィルムを開発していましたが、これを非食品用液体紙容器に応用することにより、商品化に成功しています。
セラミック蒸着フィルムは、もともと透明なハイバリアー性 (高防御性) フィルムとして開発されました。
このフィルムは水蒸気や酸素の浸透をよく防ぎ、温度、湿度による影響が少なく、電子レンジにかけることができる (通常の日本酒用紙容器などは、素材にアルミ箔が入っているため、電子レンジでの使用ができませんでした) といった特長があり、レトルト食品や医薬・医療品などの包装材に使用されていました。 加えて、一般的な焼却処理で 98 %焼却可能 (アルミ材は 85 %焼却率) なことや焼却時に塩素ガスなどの有害なガスが発生しないという特性を持っています。
一般廃棄物は市町村など自治体が処理し、産業廃棄物は専門処理業者など民間に委ねられており、一般廃棄物、産業廃棄物とともに全体の2割程度が埋め立て処分されています。
一般廃棄物の埋め立て地の残余年数は現在7, 8年。 東京、大阪、名古屋の3大都市圏では4年後に満杯になる見通しです。 また、産業廃棄物は全体で 1.7 年分の埋め立て地しか残っておらず、ゴミの総排出量を減らすことや資源のリサイクルが重要な課題となっています。
一般的な回収・リサイクルシステムは、住民・ボランティアによる回収箱の設置や、指定日を設定して持ち込み品を回収したりするシステムです。 そのほか学校、保健所などといった公共の施設やスーパーに回収箱を設置して、集団回収をおこなっているケースもあります。
一部の地域ではゴミの減量・資源のリサイクル対策として、「デポジット制」 が実験的に導入されています。 デポジット制とはカン飲料やペットボトル飲料などの価格に預かり金を上乗せして販売し、消費者はあき容器を返却すれば預かり金が戻ってくる制度です。
この制度により、これまで不燃物として埋め立て処分したり、道にポイ捨てされていた飲料容器が販売店に返却され、再利用されればゴミの減量化、環境保全につながります。 欧米ではすでに実施されており、70 〜 90 %の回収率を上げているといわれています。
日本のデポジット制はまだ実験段階ですが、回収日の広報不足や回収方法が地域によって統一されていない、産業界の足並みがそろわないなどの問題もあり、今のところ、まだまだ効果が上がっていません。
結局のところ、再生可能なパッケージについても廃棄物扱いされるものがかなりの量にのぼっており、その多くが再生されていないのが現状です。
印刷会社が開発してきた液体紙容器の技術は、これまでゴミのボリュームを削減できることや焼却がしやすいということで消費者から認知されてきました。 しかし、液体紙容器はあくまでも 「ワンウェイ・パッケージ」 です。 液体紙容器に使用されている素材の紙や、フィルムの原料となるパルプや石油などの資源には、限りがあります。
そこで、印刷産業ではパッケージ使用後の再生化技術、紙パックを再利用する技術にも取り組んでいます。
アルミ箔が入った液体紙容器では、一部技術が完成し、テスト的に再生・再利用を開始しています。 また、パッケージ素材として優れた機能性を持つプラスチックについても、リサイクルのための再生技術や再利用技術、分解性プラスチックの研究開発に力を入れており、再生材料を使用した液体洗剤入りボトルも市場に一部送り出されています。
生活者が安心して利用できるように、印刷産業は環境への適性を常に意識して、研究開発から製品の開発・製造を進めてきました。 しかしまだまだ万全ではありません。 これらの商品の開発は環境への適性と採算性、すなわち、環境保全活動と経済活動の両立を目指すところに難しさがあり、時間とコストがかかる難しいテーマです。
印刷産業では今後の課題として、材料の調達から製造、廃棄方法を含めた環境問題を総合的に考慮した製品の研究開発を推進していくと同時に、印刷業界をはじめとして、中味となる商品をつくる各メーカーとも協力しながら、パッケージのリサイクルを実現できる仕組みを作り上げていかねばなりません。

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