■第5回:「液体紙容器にみる長期保存技術」(前編)
環境に優しい 「ワンウェイ・パッケージ」 として大きな位置を占めるようになった液体紙容器。 この開発にも印刷会社が深く関わっています。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアの陳列棚には、さまざまにデザインされたお菓子のパッケージ、多様な形態のビンやプラスチックボトル、一体どれくらいの種類があるのかわからない缶コーヒーや缶ジュース、色とりどりの牛乳や日本酒の紙パック……。
近年、液体飲料の分野では、従来の缶やガラスビン容器に加え、紙容器が大きな位置を占めるようになりました。 これには、消費者の生活意識の変化と同時に、印刷産業の周辺技術の進歩が大きく関わっています。
アルミ缶リサイクル協会の調べによると、現在わが国では、年間約120億個 (国民一人当たり100個) のアルミ缶が生産されています。 しかし、そのうちリサイクル活用されているのは半分に過ぎません。
また、ガラスビンについても、酒・飲料・食品・化粧品など、平成4年度で総計200万トン (日本ガラスビン協会調べ) が出荷されていますが、人手不足、人件費の高騰からくるビン回収処理費用の増大や再度使用する際の洗ビン費用の増加、洗ビンするときに発生する廃水処理などの課題を抱えています。
そのような背景の中、液体紙容器は廃棄処理の容易な 「ワンウェイ・パッケージ」 として登場し、現在わたしたちの生活のあらゆるところに多種多様な形態で急速に普及してきました。
液体を対象とした紙容器は、その構造、形態、内容物、流通温度などによって、多くの種類に分類することができます。
また、包装対象物が液体であるため、容器の形態保持 (形くずれ防止) や、内容液体の漏出防止、品質保持を目的として、紙単体ではなく、アルミ箔やプラスチックフイルム (ポリエステル、ポリエチレンなど) を張り合わせたり、プラスチック成形物 (注ぎ口のキャップなど) を組み合わせており、一口に内容液体の漏出防止といっても、さまざまな工夫が施されています。
代表的に用いられている素材の役割を以下に示すと、
などとなっています。
主に業務用として使用される二重容器 (BIB) は酸素と水蒸気などに対して、バリア (防御) 性のあるラミネート包装などで作られた内袋と呼ばれるものと、外装の段ボール、外箱などを組み合わせた液体紙容器です。 BIB型容器は、1リットル程度の小容量から1,000リットルの大容量まで対応できるようになっています。
それに対して一重容器は、紙にプラスチックフイルムやアルミ箔などを張り合わせた素材を使用した単体構造になっており、屋根型やレンガ型、カップ型などの形態があります。 容量についても、100ミリリットルから、180、200、500、1,000、1,400、1,800ミリリットル、最高で5.4リットルまで可能です。
流通温度という視点からみると、内容物に完全な殺菌をほどこさず、10℃以下の低温で短時間流通 (いわゆるチルド流通) させる牛乳のような商品と、日本酒に代表されるアルコール飲料のような、常温流通している商品に大別されます。 したがって、液体紙容器も流通形態によって機能がわかれ、たとえば常温流通の場合には、紙容器に遮光性や酸素、水蒸気などの気体を通さないガスバリア性の機能が重視されます。
また、液体紙容器の充填機も、缶詰と同じく70℃〜92℃の高温充填をおこなうシステムや、内容物の鮮度を保持し、ロングライフ製品の製造が可能な完全無菌充填システムなどの紙容器の性質、用途に合わせた充填方式、システムが開発されています (印刷産業では紙パックの印刷・加工のみならず、紙パック用充填機械の開発・製造までも手掛けており、総合的な液体紙容器充填システムとして市場に提案、販売を行っています)。
次の項目では、代表的な液体食品として、牛乳やジュースなどの紙パックと日本酒などの液体紙容器についてみていきましょう。
その後、すでに米国で発明されていた屋根型の牛乳パックが、紙の両面にポリエチレンが塗布されたものとして日本に紹介されました。 このことにより、昭和40年代初頭に日本の製紙会社が新規参入し、紙容器が脚光を浴びるようになりました。
この時期は、流通革命といわれたスーパーマーケット (量販店) の登場とほぼ重なっており、消費者がスーパーマーケットでものを買うという生活様式に変化してきたことも紙容器化の促進につながりました。 紙容器が軽量で取扱いが容易ということに加えて、スーパーを中心とした大型販売店での牛乳販売による消費量拡大、高度成長期における人手不足や人件費の上昇による宅配制度の減少、回収ビン洗浄廃水公害などの要因が重なり、一気に普及することになったのです。
これらの背景のもと、昭和51年に日本の印刷会社が続々と製造を開始し、さらに一般家庭での消費の拡大と大型冷蔵庫の普及が紙容器化の推進力となりました。
農水省の統計によれば、牛乳における 「紙容器化率」 は1977年に50%を超え、その後着実に伸びて、1987年には80%に達しています。 1992年では500ミリリットル未満の小型容器で51.5%、とくに500ミリリットル以上ではほぼ100%が紙容器化されています。
ジュース業界の紙容器化も牛乳に約5年遅れのペースで、ほぼ同じ軌跡をたどってきました。 ジュースにおけるその最大の功績は、従来缶、ビンの 「常温流通商品」 であったジュースを、牛乳メーカーや各地の酪連・農協などが、比較的安価な紙パックを使って、牛乳と同じ 「冷蔵流通ルート」 にのせたことにより、スーパーマーケットでの販路が一気に拡大したことです。
このために容器も従来の缶やビンでは200ミリリットルクラスであったものが、500ミリリットル〜1リットルに大型化し、家庭内消費の定着に貢献しました。

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