■第6回:「液体紙容器にみる長期保存技術」(後編)
環境に優しい 「ワンウェイ・パッケージ」 として大きな位置を占めるようになった液体紙容器。 この開発にも印刷会社が深く関わっています。 後編は日本酒用紙パックのお話です。
また、「日本酒はビンで飲むもの」 「パックに入った日本酒なんて飲めるわけがない」 という意見が圧倒的で、日本の精神的文化を支えてきた日本酒を紙容器に入れて販売するのは、技術的にも市場性からみても不可能というのが大半の意見だったのです。
一方1970年代後半に日本酒用紙パックが開発される以前の日本酒は、1升ビンで販売されることによる不便さから、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは敬遠されていました。
また、ライフスタイルの変化により、ビールやウイスキーなどの洋酒類の需要が増えていったため、若者層を中心に日本酒離れが進み、消費量にかげりが見えてきた時期でもあったのです。
そのような時代、最初に日本酒用紙パックの開発をてがけたのは、印刷会社でした。 日本酒業界でも、いつまでも 「一升ビンをぶら下げて」 という時代ではない、もっと若い人にも受け入れられる容器を開発しなければならないという危機感もあり、酒造メーカーの協力のもと、日本酒用紙パックの開発に取り組んだのです。
牛乳パックなどの従来の紙パックは、[ポリエチレン/紙/ポリエチレン] の3層にラミネート (張り合わせ) したものですが、日本酒用の紙パックでは、さらにその材質構成を多層にし、バリヤ性を高くしています。
すなわち、内側 (接液面) から順に [ポリエチレン/アルミフォイル/ポリエチレン/紙/ポリエチレン] と5層にラミネートしています (現在は改良が進み、ポリエステルフイルムが加わって、6層構造になっています)。
しかし、日本酒の浸透性は予想以上に高いものでした。 材質構成を多層にしただけでは、紙の断裁面 (端面) からアルコール分がにじみでてしまいます。 そこで試行錯誤を繰り返しながら、紙の断裁面を折り込んで紙パックを形成し、接合部を保護することで、紙の断裁面が直接内容液に接触しないようにする技術を確立しました。
その方法は 「スカイブヘミング法」 と 「テープ貼り法」 に大別され、現在では紙厚や材質構成などにより印刷会社各社で使い分けられています。
もちろん、各製造工程では紙パックの中味が人の口に入るものだけに、材質や取り扱いにも大変な注意をはらっています。 たとえば、蛍光塗料の入っていない紙を使用するとか、酸化防止剤の入っていないポリエチレンを使うなど、その他上げればきりがないほど、衛生面で配慮をして、消費者の手に届くのです。
この中でとくに問題になったのが、注ぎ口です。 日本酒は牛乳のように一度開封すると2、3日で飲み切ってしまうわけではなく、長期保存しておくことがほとんどです。 したがって、紙容器は何回も開けたり注いだりして使用されます。
開発当初の日本酒用紙パックには、考案されたさまざまな種類の注ぎ口の成形品を付属品として添付。 この注ぎ口を、消費者が自分で紙パックに突き刺して使用するという方式が取られていました。
ただ、この注ぎ口はいずれも内容液がスムーズに注げない、液ダレがするという問題点を持っていたのです。 また、ビンやカンに比べて開封しにくい、注ぎ口が突き刺しにくい、一度開けると再封できないなどという欠点もあったことが、日本酒用紙パックの売れ行きの不調の要因でした。
まず最初におこなったのは、特許、実用新案、意匠登録などを調査し、市販の注ぎ口をできるだけ多く買い集め、1点1点の長所と短所の分析をすることでした。
その結果、注ぎ口には次のような機能が必要であることがわかりました。
これらの考えを基本に試作型を作成し、紙パックに取り付け、内容物の流出状態、流出速度などの確認実験を繰り返しました。 その結果、空気の取り入れ口と内容液の流出口を工夫することによって、スムーズに注ぐことができるようになったのです。
紙パックの最外面がポリエチレンであることから、注ぎ口もポリエチレンでつくり、ヒートシール (加熱加圧接着) 法で取り付けます。 開孔部はあらかじめくり抜いておき、その孔に内面からアルミ箔、ポリエチレンからなるフイルムを張り付けます。
さらに、先端がノコギリ状の三角刃になっている中栓をセットし、これを強く押し込むとアルミ箔が破れて中栓が固定するという仕組みです。 こうして、現在よく見かける日本酒紙パックが誕生したのです。
また、開封後に倒れても、すぐには内容液がこぼれでないよう、上蓋 (キャップ) もかぶせられるようにしています (現在では、上記の注ぎ口の他、さまざまなタイプの注ぎ口が開発され、使用されています)。
これは品質はもとより、従来の一升ビンに比べて、体積で半分、重量で約40%の減量となり、流通コストの軽減につながったことも、大きな要因となっています。
ビンは木函やプラスチックケースで配送しなければなりませんが、紙パックは折り畳んで段ボール箱で配送可能。 加えてビンのように、いちいち回収する必要もなく、手軽で、消費者側にとっても持ち帰りに便利なことや、ビン容器より割安で、後始末がしやすいといったことが利点としてあげられ、この手軽さが受けてやがてコンビニエンスストアなどにも置かれるようになりました。
またこの容器は、不透明であるため、日本酒が嫌う紫外線などをほとんど通さず、保存性にも優れています。
以上みてきたような開発経緯をもとに、これらの技術を改良・応用して、現在では日本酒以外にワインやウイスキーなどさまざまな内容物に対応した形態の液体紙容器が製造可能になっています。

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