■第1回:「森林保護に貢献する印刷技術」
限られた資源である森林。 天然の木を消費せず、これと同じ質感を追求した建材印刷は、間接的に森林保護に役立っているといえます。
貴重な森林資源を守る…。 それは、世界的な地球環境保護が叫ばれる中で、わが国にとっても重要な課題です。 一度破壊された森林は、その再生に数十年単位の歳月を要すると言われています。 資源の有効活用やリサイクルは、現在の生産活動に課せられた大きな命題であるといえましょう。
印刷産業においても、省資源・省エネルギーの視点から製品作りを考えています。 たとえば、木から作られる紙は木材そのものの消費であり、古紙の再利用ということを考えてきました。
また、印刷製品そのものにも、このような自然保護の視点からみて大きな役割を果たしているものがあります。 たとえば、家を建築する際に、天然の木や自然石に代わって、物質そのものの感覚を生かした住宅部材が使用されています。
ここでは、間接的に森林保護に役立つ印刷技術をご紹介しましょう。
今から40年程前に、メラミン化粧板というものが急速に普及しました。 その後、ポリエステル化粧板やダップ化粧板が登場し、それまで単調だった家庭やオフィスの家具、壁面の風景が一変しました。
印刷技術の建材への応用は、天然物の置換えという需要からきています。 それは、単に天然物の模倣にとどまらず、資源の枯渇、天然木材の品質の不安定さ、コスト高、性能の悪さなどの諸問題を解決するところに特徴があります。
このような建材印刷は、「印刷する版を作る技術」、「印刷を行う技術」 を中心として、新しい素材、新しい加工技術を取り入れながら、住宅建設、家具、電化製品、車輌、雑貨といった広い分野に応用されるようになってきました。
印刷の対象となる素材には紙、プラスチック、金属などがあり、加工技術には塗布、含浸、成型、ラミネート、組立てなどがあります。
また、壁紙に代表されるように、建築の材料に用いられる絵柄は大きなサイズを必要とします。 そしてそのために、繋ぎ目のない繰返しの絵柄が要求されています。
■ 原木を原稿にする
まず、印刷物の原稿となる原木捜しから始まります。 杉、桐、なら等の木材が使用されますが、よい絵柄を求めて、遠く屋久島や南洋にまで原木を捜しにいくこともあります。 これらの天然木材 (原木) を切ったときの表面を印刷の絵柄として採用するわけですが、製品としての価値をつけるために、この原稿にさらに様々な加工を施していきます。 ちなみに、木材の切り方によって柾目や板目といった違った絵柄になります。
■ 原稿を撮影する
原稿 (原木) の準備ができたら撮影に入ります。 このとき、原稿が大木である場合は、カメラも大型の縦形カメラが使用されます。 原稿となる素材が持っているあらゆる質感や色調を様々な角度から分解して、微妙な調子をカメラを通して捕らえていきます。 最近では、デジタル処理されるケースも多くなっており、よりリアルで質感のある木目がデザインされています。
■ フィルムをレタッチする
撮影されたフィルムはレタッチという工程に送られます。 印刷は連続する巻取状の紙に行われるため、印刷する版も円筒状であり、撮影されたフィルムも円筒状にする必要があります。 そして、円筒状にする際に生じる繋ぎ目の部分を、連続状態に修正する工程をレタッチと言います。
このレタッチによるエンドレス加工は、意匠表現のひとつであり、多くの熟練した技術が集積されているといえます。
■ 印刷する版を準備する
次に印刷する版の準備です。 建材印刷では意匠が重要であることから、これに最も適した印刷方式であるグラビア印刷が多く使われています。 その大きさは、原紙の幅が550〜2100mm、版円周が620〜1890mmにもなります。 それに対応する大きな円筒状のシリンダーが印刷版として用意されます。
このように大きなシリンダーが用いられる理由は、木目柄のような絵柄は繰返されるピッチ間隔をなるべく長くした方が自然であるため、円周の大きい方が好ましいからです。 一方、抽象柄のようなものは繰返されるピッチが小さくてすむところから、円周が小さくてよいということになります。
次に、シリンダーを研磨機で高精度な印刷ができるよう仕上げます。 鉄の芯胴に銅をメッキして、円筒の研磨機で磨きます。 その表面精度はミクロン (1ミリの1/000) 単位で管理されています。
■ シリンダーに穴を開ける
シリンダーの準備ができたら、その表面に小さな凹状の穴を開けていきます。 グラビア印刷方式というのは、小さな凹状の穴にインキを入れ、周りの余分なインキを除いた後、穴の中のインキを被印刷物に移す方式ですが、ここではシリンダーの表面の絵柄に相当する部分にその小さな穴を開けます。
穴を開ける方法には、コンベンショナルグラビア法、網グラビア法といった腐蝕による方法と、ヘリオクリッショグラフ法、ダイレクトエッチング法といった電子彫刻法があります。 このうち腐蝕による方法では、焼付け、現像、腐蝕の工程を経て作製されます。 最近ではデジタル化の波が押し寄せ、電子彫刻法が多く採用されるようになってきました。
これらの方式は、求められる意匠や機能、素材加工の特性に応じて使い分けられています。
■ 印刷インキを準備する
印刷の中で忘れてならないのが印刷インキです。 普段私たちが手にするカタログや新聞の中に折り込まれているチラシなど、通常の印刷に使われるオフセット印刷は、黄・赤・藍・墨という基本色のプロセスカラーと呼ばれる印刷インキが使用されます。 また、週刊誌などに使われるグラビア印刷 (出版グラビアと呼ばれている) もやはり基本となる3〜4色によって印刷されます。
一方、建材印刷で使われるグラビアインキは、特色インキと呼ばれるものが使われています。 これは、印刷される物 (被印刷物) は目的や用途が異なるため、そこに印刷するインキは、求められる物性 (接着性や耐候性等) に合ったものを使用する必要があるからです。
たとえば、化粧版に使われるチタン紙の場合は、メラミンなどの樹脂液を含浸したあと熱圧成型するため、インキは樹脂液に濡れやすく、かつ耐熱性を有していなければなりません。 したがって、インキに使用される顔料は、耐熱、耐候性などに優れ、樹脂液に使用されている有機過酸化物等によって変退色等を生じないことが求められます。
さらに、プロセスカラーでは表現できない色合いや意匠性が求められるため、特殊な色が必要であり、特色インキが使われます。
■ インキを調色する
建材は色調が大切であるため、インキの色合わせ (調色) は重要な工程です。 そのため、CCM (コンピュータ・カラー・マッチング) システムを導入し、自動化しているところもあります。
このCCMシステムとは、コンピュータと分光光度計をオンラインで結び、各分色を数値化して解析し、管理するシステムです。 建材印刷の最大の特徴は、混色インキ作成のための高い精度の色合わせ作業にあります。 このベースインキの混色の比率や、インキ粘度、各分色のバランス、印刷適性などの要素を加味させながら、色調を忠実に再現するために、インキの配合をCCMで管理し、完璧なまでに調色精度を再現しています。
また、印刷が終わって残ったいわゆる 「残肉インキ」 も、その色調をCCMシステムで管理しておけば、CCMによってインキの配合比を求めることができるので、再利用することが可能となります。
■ 印刷する
そして印刷です。 印刷には1色〜8色の多色印刷機が用いられます。 最近の印刷機は、大型化するとともに、高度化・多様化する要求に応えられるようエレクトロニクス技術がふんだんに取り入れられ、多機能グラビア印刷機となっています。
たとえば、印刷する版は自動的に取り付けられるようになっています。 これは、「版胴自動着脱システム」 と呼ばれ、前の印刷が完了すると、直ちに印刷機に次の版が自動着脱されるもので、リードタイムの短縮や印刷前準備の効率化を図るシステムです。
■ 後工程に送る
印刷が終わったら後加工に送ります。 後加工ではその用途に適した加工が施されます。 壁紙・床材・家具・壁装材・その他の用途にあった加工が行われます。
| 主 要 製 品 | 用 途 |
|---|---|
| 高圧メラミン化粧板 | テーブル、 カウンター、 車内装 |
| 低圧メラミン化粧板 | こたつ板、 厨房、 家具、 間仕切り |
| ダップ化粧板 | キャビネット、 厨房、 洗面台 |
| ポリエステル化粧板 | 家具、 厨房、 壁面、 ドア |
| プリント化粧板 | 壁面、 天井、 家具の側面 |
| 化粧石膏ボード | 壁面、 天井、 間仕切り |
| 壁紙 | 壁面、 天井 |
| 粘着化粧シート | 壁面、 ドア |
| オレフィンシート | 家具、 厨房、 住宅用部材、 キャビネット |
| 塩ビ鋼板 | ドア、 家具製品、 浴室 |
| ファッション塩ビタイル | 床 |
| 長尺塩ビ床材 | 床 |
| クッションフロア | 床 |

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