■第2回:「生活を豊かにする建材印刷」
オフィスや住宅に欠かせない建材印刷。 本物らしさを追求し、新しい機能を付与しながら、印刷技術は進歩してきました。
これらの意匠やデザインの多くは、印刷技術と何らかの係わりをもって発展してきました。 印刷技術が社会環境と融和して、私達の生活空間にとけこんでいます。
オフィスや住宅に欠かせないものが建材印刷です。 ここではその建材印刷とは何か、建材への印刷方法としてどのようなものがあるかについて触れていきます。
オフィスや住宅を機能的で快適な空間とする要素は、床、壁、天井、窓、ドア、家具、厨房調度品その他多種にわたっており、それを支えているのが建材印刷です。 そして、これらに求められているものが、天然物の工業化という考え方です。
生活空間を演出する建材印刷は、本物の木材や大理石、レザーなどより、さらに本物らしくするために、化学的手法や機械的手法等により、自然がもつ意匠性や機能性を再現させ、さらに機能面でも高耐久にすることが求められています。 これが天然物の工業化です。 たとえば、木の表面の木目の絵柄と導管の凹凸を同調させるエンボス加工が行われています。
また、印刷技術の進歩により、新しい柄や色、凹凸、素材感の表現が可能になります。 自然界に存在する様々なデザインを原稿として展開すれば、これまでになかった新しい表現が可能です。 さらに、防御機能、省エネ機能、防カビ性、抗菌性能、高物性、加工性等の新しい機能を付与することもできます。
個人住宅を見てみますと、狭い土地を最大限に活用するために、3階や地下に居住空間を広げた家が増えてきています。 また、高齢化社会に対応するため、居住性や安全性を追及した構造が要求されるようになってきました。 そして、ホームオートメーションや省エネルギーの発想も多く取り入れられてきています。 このように、生活様式の変化と個人の嗜好の変化が住空間に影響を与え、それを反映した製品作りが重要になってきています。
一方、近年本物指向が強くなり、印刷で作られた工業製品から、天然木の使用へと変化してきています。 若年層を中心に木目というデザインだけでなく、その質感にもこだわりを持ち始めてきました。 これにどう対応しているのか。 順を追って見ていきましょう。
建材の特徴は、基材の表面に各種の印刷を行い、住空間を豊かにする化粧を施していることです。 このことから印刷された建材を化粧板といいます。 ここではその基本的技術を紹介します。
建材表面への化粧方法は、大きく分けて、基材に直接印刷する方法、紙などに印刷してからそれを貼るラミネート法、印刷したものを転写する方法があります。
■ 基材に直接印刷する方法
基材に直接印刷する方法をダイレクトプリントと呼びます。 紙やプラスチックフィルムに印刷する場合は、一般にグラビア輪転印刷機が用いられますが、建材、鉄板、プラスチック板など堅いものへはグラビアオフセット印刷機が用いられます。
また、カップなど円筒形のものへの印刷は曲面印刷機や曲面シルク印刷機が、ゴルフボールなど立体的なものへの印刷はパット (タンポ) 印刷機が使われています。
ただし、この方法では直接製品に印刷してしまうので、基材が高価であれば、印刷に失敗したり、色が若干でも異なり不良品となった場合には、相当の損害となります。 そのため、現在はあまり用いられず、転写法など別の方法がとられています。
■ 基材にラミネートする方法
ラミネート法は、印刷した紙やフィルムを基材に貼り合わせる方法です。 貼り合わせの方法としては、化粧合板 (内装材) など板状のものはロールラミネータやプレス機が使われ、サッシなど異型のものには押し出しラミネーター、縁貼り機、ラッピング機などを用います。
また、それでは不可能な自動車内装など立体形のものに対しては、射出同時絵付け法や、真空ラミネーター、真空プレス機、水圧を利用した曲面印刷法などが用いられます。
この場合、基材によりその物性が異なり、基材と印刷された物との接着性が問題になってきます。
■ 基材に転写する方法
ラミネート法では、基材の上に貼り合わせた紙やフィルムが残るため、印刷インキだけを基材に転移させる転写法もよく利用されています。
たとえば、生地、カーテンなど板状のものはホットスタンピングで基材にインキをプレスする形で移します。 また、サッシなど異形品には押し出し転写、家電部品のような立体品には真空転写や射出同時転写 (インモールド) などが用いられています。
■ 成型同時絵付け
製品として成型すると同時に、その表面に印刷シートあるいは転写フィルムを用いて絵付けする方法です。
まず、成型については、プラスチックの場合、細かな精密部品や大形のバケツやポリ容器を成型するインジェクション (射出) 成型 (金型に高圧で溶かしたプラスチックを押し出して成型する方法)、洗剤の容器等のボトルを成型するブロー成型、食品の薄いトレイなどを成型する真空成型などがあります。
ちなみに、最近話題になっているPETボトルは、パリソンという筒状のものをインジェクション成型で作っておき、後で加熱しながら空気を内部に送ってブロー成型して作られています。
次に、絵付けの方法をインジェクション成型の場合で説明します。 その方法は、あらかじめ絵柄が印刷された転写シートを、開いた状態の成型金型にセットし内面に張り付けられた状態にします。 そこへプラスチック樹脂を射出することにより、プラスチック樹脂が成型されるとともに、成型品の表面にシートの絵柄が転写され、製品に絵付けされます。
この方法により工程が短縮され、安いコストで3次曲面への印刷が可能になりました。 装置も、既存の射出成型機に予備成型の装置を取り付けるだけで、成型と同時に絵付けが可能になります。
■ 転写箔による絵付け
プラスチック製品への加飾方法として、転写箔を利用することにより、より高度な意匠性を加味した製品が可能になりました。 転写箔とは、ベース基材 (紙又はフィルム) の上に、剥離層・インキ・接着層の3層で構成されているものであり、この転写箔を用いて成型済製品に熱と圧力によって絵柄を転写します。 この結果、意匠性がより高くなり、プラスチック製品加工のコストダウンや多品種化が進みました。
現在、IDカードや化粧品のパッケージなどに使用されています。 特に色彩に優れ、絵柄、文字が鮮明であること、絵柄の下地に対する隠蔽力が高く、また、部分的なアルミ蒸着柄も可能であることなど、意匠性を強調する場合に有効な方法です。
■ ヘアライン模様
オーディオ、ビデオ、CDなどの家庭電化製品に高級感を出すために、ヘアライン調のデザインが施されているものがあります。 このヘアラインは一般的にはヘアライン箔押しという方法で作られています。
これは、あらかじめヘアラインパターンを形成した転写用フィルムに、シルクスクリーン印刷やグラビア印刷を行ったものを転写箔として利用するもので、これによって工程の短縮と仕様の多様化が図られます。
この方式によれば、従来の単純なヘアライン箔押しに比べて、大幅な工程の短縮化が図られ、シルクスクリーン印刷とホットスタンプを組み合わせた形で行うこともできます。 また、金銀文字の箔押しを行う場合、同時にヘアラインパターンを印刷することができます。
さらに、隠蔽化を高めた印刷が可能なシルクスクリーン印刷によって、下地の影響が受けにくく、表面の転写層が擦れて取れたり、傷付くことを防ぐことができるハードコートタイプもできています。 主に自動車の内装材等に用いられています。

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