■第6回:「加工や衝撃に耐える金属板印刷」
その特性から特殊な作業が必要な金属板印刷。 硬いものへの印刷はグラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷方式で行われます。
紙、プラスチックフィルム、ゴム、布や織物、金属板、ブリキ板など、平面状のものから曲面体、立体形のものまで、あらゆる物に対して、可能な限りの技術を駆使して印刷してしまいます。
ここではそのうちの金属板への印刷をご紹介しましょう。
印刷方式については、これまでにも様々な方法を紹介してきましたが、そのうちの多くは、印刷する物の上に、何らかの方法で印刷インキを乗せ、乾燥させ、印刷インキを固着させるものです。
このうち、印刷インキが乾燥するには、通常、空気中にインキの溶剤が蒸発してゆくこと、紙など印刷される素材の内部に浸透してゆくこと、インキが化学反応して固化することなどが必要であり、その結果インキが印刷するものに固着します。
しかし、金属板のように、印刷インキの溶剤が素材に浸透しない場合には、インキが印刷する物にくっつきにくく、すぐに剥がれてしまいます。 そこで、金属板に印刷する場合は、特殊な作業が必要となります。
それでは、枚葉鋼板印刷の工程を例にとってご紹介しましょう。
この処理を行い、乾燥焼き付けをして初めて印刷することができます。 印刷は単色 (無地) 物と多色 (絵柄=抽象柄や花柄や木目) 物に分かれます。 印刷は相手が硬い物なので、それに合った印刷方式が採用されます。 一般には、グラビアオフセット印刷やシルクスクリーン印刷を組み合わせて行います。
このとき、印刷するものが紙やプラスチックのような軟らかいものであれば、比較的容易にインキを移すことができますが、金属板のような硬いものになると簡単にインキを移すことができません。
そこで、一度ブランケットのような軟らかいものにインキを移して、その後、金属板に移すという方法をとります。 これが 「グラビアオフセット印刷」 と呼ばれるものです。
これは、孔版印刷という方式の一種で、ステンシルと呼ばれる細かい網状のスクリーンに、印刷インキを着けたくない部分を遮蔽して印刷版を作るものです。 印刷は、被印刷物の上に絵柄以外の部分が遮蔽されたスクリーン版を置き、その上からやや固めの印刷インキをスキージと呼ばれる板状のゴム板でインキを掻くことによって、遮蔽されていない孔の開いている部分からインキを押し出し、印刷物に付着させます。
シルクスクリーン印刷は、版面に柔軟性があるので印刷物の形状に対して適応性が高く、金属やガラス、陶器等のような硬いものや、表面がややデコボコした物や曲面体にも印刷することができます。
最近の主な使用例としては、プリント配線や自動車の計器目盛、液晶表示板、電卓のキーボードといった電子部品に広く応用されています。
ところで、なぜシルクスクリーンと呼ぶかと言うと、古くはこのスクリーン印刷に用いられるスクリーンに絹織物 (シルク) が使用されたためです。 最近ではシルクに代わって、ナイロンやポリエステル繊維のほか、ステンレスの針金で織ったスクリーンや金属板にエッチングで穴を開けたものが主流になっています。
なお、長尺物に連続的に印刷するために、円筒状の版が用いられるロータリースクリーンというのもあります。
先のプライマー処理でも使われた方法ですが、鋼板のような硬い物の表面に、均一にプラスチック樹脂液を塗布する方法で、ロールコート法、カーテンフローコート法等があります。
このうちカーテンフローコート法は、塗布しようとする液体 (印刷インキやプライマー) を狭いスリット状のノズルからカーテン状に流しておき、その流れ落ちるカーテンを横切るようにして鋼板を通し、一定の液体を鋼板の上に塗布する方法です。 塗布される量は鋼板が通過する速度と液体の粘度、スリットの間隔などで決められます。
たとえば、鋼板は板のままでの使用はあまりなく、曲げ加工や絞り加工が行われます。 そのため、それらの加工に耐え得る表面物性が必要となり、表面に特殊な樹脂をコーティングします。 さらに、用途に応じてエンボス加工が施され、最後に表面の保護を目的に、保護フィルムがラミネートされます。
耐候試験はウエザーメーターという試験機で行われ、エリクセン (碁盤目、十字) 試験は、金属の絞り加工時の塗料の接着性がテストされています。 その他曲げ加工性や衝撃試験などを経て、市場に出されています。
たとえば、無地物のグランドコートでは、乾燥・焼付工程において電子線照射が使われたり、鋼材の裏面に焼付塗装をすることにより、素材本来の性能を向上させ、耐蝕性、後加工適性などの特性や機能を向上させています。
印刷工程では、オフセットグラビア印刷とシルクスクリーン印刷を組み合せることにより、色調や絵柄と凹凸を同調させるなど、精緻な意匠が多彩に再現されます。
一時期、冷蔵庫のドアの表面などが鏡のようにピカピカと輝き、顔などが写しだされる製品が流行しました。 ミラーフィニッシュという鋼板などです。 これは特殊な樹脂を、鋼板の上に均一に塗布したもので、わずかな厚みのムラや、傷、ゴミなどが付いても歪んで映しだされるため、精細な技術で作られます。
また、最近では表面にフッ素加工 (テフロン加工) したものが出ています。 これは、汚れがとれ易いという特徴があります。

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