■第2回:「木目クラブシャフトの秘密」
今や印刷技術は、 「水と空気以外になら何にでも印刷できる」 という言葉が誇張ではないほど発達しています。 ゴルフ関連用品を例にとってその一端をご紹介しましょう。
一度郊外に出るとゴルフ練習場がやたらと目につく。 それなのに休日の午前中ともなると、 2〜3時間待たされるのは普通である。 そんな時間の練習場の待ち合いロビーに、4月のマスターズチャンピオンシップのビデオを横目で見ながら、 見るともなしにやや古くなった雑誌 「パーゴルフ」 のページを繰る若い女性……。 そういえば最近とくに女性の姿が目立つ。 フロントの言によると平日の昼間は2/3は若い女性であるという。
フロントで打席の予約をして入場券と練習打球用のプリペイドカードを購入する。 この練習場はコンピュータで管理されており、打席の管理から打球の残数、ボール自動供給、 ティーの高さ調整などがボタン操作でできるようになっている。
打つと自動的に供給されるボールには、 製造メーカーの商品名の他に練習場のネームが印刷されている。 そういえば、 先日コースに出たとき、ボールに自分の名前を印刷したものを使っている人を見受けた。 誤球を防ぐ意味でけっこう利用する人も多いらしい。 風雨にさらされ、ものすごい力で叩きのめされながらも消えない印刷は、一体どのようにして行っているのだろうかと感心させられる。
最近は、クラブシャフトに木を使ったものがあるらしい。 しかし、本物の木を使うと、ダフッたり固いものに当たったりしたとき、折れて危険なはずだが……。 そんな心配をしていたら、これは金属製のシャフトの部分に木目を印刷ものと知った。
クラブや傘の柄のような棒状物に、いったいどのような方法で印刷するのか? そんなことを考えていたら、ゴルフ場に来るとき、車のフロントダッシュボードの木目模様がどうやら印刷らしいことに気づいたことを思い出す。 かなり曲がりくねった部分にまで、きれいに木目が印刷されていたのには驚かされた。
ゴルフのスコアはパッティングに大きく左右される。 そのパッティングには技術よりも精神的な面が大きく採用していることはゴルファーなら誰でも承知していることである。 プロの試合でも誰かが変わったパターでよい成績を出すとブームになることがある。
金属シャフトに木目印刷がされて本物の木のような感触でパットができれば、同伴者への優越感も加わって、スコアメイクには最適な道具ではなかろうかと思うが、どんなものだろう。
それでは、この印刷方法を簡単に説明しよう。
まず、水で柔らかくなるフィルム (例えばオブラートのようなもの) の上にまず、曲面に印刷しようとする絵柄を印刷しておく。 実際に印刷しようとする直前に一度固まったインキ部分を溶剤で湿らせて活性化させ、そのインキ面を上にして、絵柄を印刷したフィルムを水に浮かべる。
このフィルムは水で柔らかくなるので、ある程度フィルムが水でふやけたところで、被印刷体 (転写されるもの=たとえばゴルフクラブのシャフト) をフィルムのインキ上に乗せながら、水の中に沈めると、水の圧力によって柔らかくなったフィルムが伸ばされながら被印刷物にまつわりついて、インキが印刷しようとするものにくっつく。
フィルムが柔らかくふくらみ、湿っているので、曲がりの大きな面や凹凸のあるもの、先ほどのクラブのシャフトなど棒状のものでも、水の圧力でフィルムが物体にぴったりとくっつき、フィルム上のインキが、うまくつくことになるのである。
不要となったフィルムは洗い流され、表面のインキの接着強度を上げるために透明な樹脂をスプレーで吹き付けてコートし、硬化させると、擦っても叩いてもインキが剥がれなくなり、また、きれいな表面をいつまでも持続させることができる。
最近、金属バットにも木目柄を印刷して木の感じを出したものが登場しており、電話機や置き時計などのインテリアにも大理石模様や抽象柄を簡単に印刷できるようになったので、今後の用途開発が期待されている。
こうした場合の印刷方式にはインクジェットプリント、パッド印刷 (タンポン印刷、タコ印刷ともいう) などがある。
このうち、インクジェットプリントについては、別の機会に説明することにして、ここではパッド印刷 (タンポン印刷、タコ印刷) について説明してみよう。 パッド印刷は、名前や図柄の印刷版にインキをつけ、これを一度シリコンゴム製のパッドに移しとって被印刷物に転写する印刷方式で、初期のパッドが蛸の形に似ていたことから、タコ印刷とも呼ばれている。
パッド印刷の特徴は凹凸のあるさまざまな形状のものに印刷できることにあって、先のゴルフボールやキーボードのような凹状のものにまで利用できる。 印刷版のインキを移しとるパッドは、形やサイズ、硬さの違うものが1、000種ほどもあり、これらを印刷するものの形や印刷する場所、印刷する大きさなどによって使い分けるのだ。 柔らかいパッドを使えば卵にも印刷することができる。
パッドに移しとった名前や図柄のインキを印刷するものに押し付けて転写するために、押し付ける圧力や印刷されるものを支えておく固定台 (治具という) も印刷するものに合わせて工夫されており、またインキも印刷するものに合わせて選ぶことになる。
この印刷方式では、プラスチック、金属、ガラス、ゴムなどの平面や凹面の印刷ができるので、玩具、家電製品、自動車部品、ガラス瓶や陶磁器など広く利用されている。
印刷は平面でしかできないと思っていた方が多いだろうが、まさに現在は 「水と空気以外は何にでも印刷できる」 ということが現実になっているのである。

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