■第3回:「イベントでの業務もポスターだけじゃない」
各種イベントで印刷会社は、 ポスターやパンフレットの印刷だけではなく、 データ管理や賞品の抽選システムなど、 思いがけない分野にまでその技術を発揮しています。
このいかにも現代的なお祭り風にアレンジされたイベントは、スポーツイベント会場、コンサート会場、ゲーム広場、遊びの広場と参加者を飽きさせないさまざまな趣向が凝らされ、 カップルから若者のグループ、家族連れまで幅広い年代の人たちがそれぞれに楽しめるように工夫されている。 毎年数十万人の参加者であふれ、ゴールデンウィークの都心のレジャースポットとしてすっかり定着したようである。
このイベントにおいて、いかに楽しい時間を過ごしてもらうか、お祭りに積極的に参加してもらうか、そしてどうやって入場した人々とのコミュニケーションを図り、楽しい想い出を作ってもらおうかと、主催者のテレビ局はもちろんとして、各分野からさまざまな工夫が凝らされた企画が競い合って提供されている。
こうしたイベントなどに印刷会社はどのように関係しているのだろうか。
一般的には、印刷技術の関わりは宣伝用ポスター、 チラシに始まり、入場チケット、パンフレット、各種案内書などのように、ようするに紙への印刷物に限られていると想像する人が圧倒的多数だろう。
しかし、印刷はこのようなイベントに対して、多くの人が想像するよりもっと深く、幅広く関わっているのである。 では、このイベントを例にとって、知られざる印刷技術の一端を紹介することにしよう。
ふつう私たちは、ポスターやチラシでイベントなどの開催を知り、また、きれいなポスターを見て行ってみたいという意欲をかきたてられ、さらにパンフレットを手にいれて参加するにあたっての細かな情報を収集して、いよいよチケットを購入するという順序で行動を起こす。
このように印刷物はテレビや口コミなどとともに貴重な情報収集手段として大きな役割を担っている。
また、苦労して手にいれた入場券などはお金と同じ価値を持つものであり、金券として取り扱われることになる。 これらはそれぞれみな紙に印刷を施したものであり、どれも同じように見えるかもしれない。 しかし、個々に前記のような別々の目的を持って作られており、製造工程や管理方法も異なっているのがふつうである。
印刷はいくつもの工程 (文字処理、写真処理、集版、校正刷り、刷版、印刷) を経て作られ、はじめて印刷物として価値を持つものになるのだが、チラシなどは最もホットな情報、少しでも詳しい情報を読む人に伝えようと努力するために記事内容が決まるのが遅く、また一度は決まっても製造工程の途中まで進行してからの内容の変更も日常茶飯事におこなわれており、各印刷会社も苦労はしつつ腕の振るいどころとなっている。
このような厳しい日程に対応するために印刷会社はその規模の大小を問わず機械化、コンピュータ化を猛烈な勢いですすめてきている。 だから、映画の寅さんに出てくる印刷屋しか思い浮かばない人は大変な誤解をしていることになる。
だからこそ、そのポスターは広告主、また製品の顔となっているわけだが、印刷会社にとっても印刷技術のレベルを表現する最適のもので、その会社の顔といってよく、各社とも最も力を注いでいる分野の一つである。
単に印刷工程を担当するだけでなく、もっと前段階のポスター自体の企画提案や、専用スタジオを設備して写真撮影の部分から印刷会社が関係しているケースも決して少なくない。 そうして大勢の人を魅入らせる美しいポスターを作り上げているわけである。
数年前、Jリーグにおいて偽造入場チケット (実態はカラーコピーであったが) が発覚して新聞紙上を賑わせたことを覚えている人も多いと思うが、もちろん印刷分野では、偽造防止のため最大限の努力が払われており、小さなチケット1枚にその技術が凝縮されて織り込まれている。
しかし、現状に満足することなく、日々偽造対応のため素材や印刷方法などの研究が、幅広い分野において続けられているのはいうまでもない。
さて、有料入場チケットには、お年玉つき年賀ハガキや宝くじのように、番号が記入されているものがあるのをご存じだろうか。 本来、印刷とは同じ物を大量に作る技術だが、これらは1枚1枚全て異なった印刷物になるわけである。
印刷会社と印刷機メーカーとが協力し合って特殊なナンバー管理システムを開発することにより、1枚1枚異なった番号が印刷された印刷物を作ることができるようになった。 このようなところにも印刷技術が潜んでおり、イベントなどの運営をよりやりやすくすることに一役かっている。
入場チケットの最大の目的は入場者のチェックである。 つまり、不正入場を防止するために、入場券を提出することと引換えに入場を許可されることになるのだが、最近はこのチケットで広範囲な入場者管理まで行うケースが数多く見受けられるようになってきた。
近ごろの入場チケットにはバーコードのようなものが印刷されているのを目にすることがしばしばある。 じつはこのバーコードにいろいろな秘密が隠されている。
第一の目的はもちろん入場チェックである。 小規模のイベントや企業が行うプライベートショーなどでは参加予定者や招待者のリストをコンピュータで管理することにより、参加者がバーコード付きのチケットを入場ゲートに通すと、瞬時に各種の管理に必要な情報が得られるシステムとなっている。
入場者数をはじめとして、どこの誰が何時に入場したのか、参加者の性別、年齢、所属 (会社、学校などの団体) などの層別された情報をリアルタイムに入手できるシステムである。 入場者制限があるイベント会場などでも、その管理はきわめて簡単だ。 また、会場内の数ヶ所でチケットをチェックできるシステムを設けることにより、それを持っていた人が、どの時間にどの場所にいたかなど、一枚のチケットで参加者の動きまでチェックできるようになる。
このことにより、入場者の動いた道筋 (動線管理)、何時ごろどのイベント会場が最も人気があったか (時間管理) などの情報がリアルタイムに把握できるのだ。 これらのデータは当然、次回の開催に向けての重要な参考資料となっていく。
たとえば、ある特定時間に各イベント会場でコードのついた抽選カードを配る。 参加者がそのカードを会場内に設置されたゲーム会場のゲーム機に通すとモニターにカードの番号が表示され、事前に設定された番号に一致していたら当たりとなって賞品が貰える。
抽選ゲーム機を会場内に数ヶ所配置しておくことにより、会場全体が巨大なゲーム場と化し、参加者は抽選ゲームを積極的に楽しめるし、主催者側では入場者の管理、調査、把握が行えるわけである。
また抽選用ゲーム機も本部のコンピュータを使って一括管理が行われているので、当選本数の管理なども簡単にできる。 これは特定の日、ある時間帯に当たりが集中しないようにムラなく当たりを配分するシステムとなっている。 町内の歳末大売り出しなど、赤い玉が飛び出したら一等賞という形式の抽選では、真っ先に当たりが出るかもしれないし、期間内に出ないこともありうる。
こうした不備を無くすためにコンピュータによる抽選システムが利用されているのである。
なぜ印刷会社がこのような一見印刷とは無関係とおもえる入場管理システムのようなことを行うようになったのか、また一体どこが印刷の技術と関係があるのだろうか。
じつは、これらは印刷における精密加工技術の延長線上にあるものなのである。 たとえばバーコードのような精細ものの加工は、従来の製版技術の延長でありもともと印刷の得意とする分野の一つである。 そしてその従来から持ち合わせていた印刷技術に、社会の需要 (この場合は入場者の管理をゲーム的に行う) を先取りして、コンピュータの得意とする集計、統計的能力と組み合わせ、 システムを作り上げたわけだ。
このような入場者管理システムや抽選ゲームシステムなどは、今後も最初に紹介した大きなイベントからプライベートに行われる比較的小規模の催しまで幅広く使われていくことが予想される。
このようにイベントが企画されてから実際に開催され、入場者が入り、楽しまれるまで印刷技術は影に日向になり役立っている。
比較的大手の印刷会社には企画部門などを持って、イベントの企画そのものまでも行い、演出している印刷会社も少なくない。 JRの大きな駅でコンサートやイベントが行われているが、あれも企画に印刷会社が参加している一例である。
最近のイベントでは、必ずといってよいほどに置いてあるのがシンボルマークやキャラクターの入ったTシャツやトレーナー類である。
主催者や参加チームのスタッフが格好良く着こなしているシーンを目にした人も多いはずだ。 これらはプリント (印刷) シャツといわれているので、印刷が関係していると想像がつくのではないだろうか。
この印刷にはスクリーン印刷という印刷方法が使われている。 このスクリーン印刷は、布のような柔らかい物にも印刷が可能であり、比較的短期間に製造でき、またインキ層が厚いため (他の印刷方式はインキを紙などに転写する方法だが、スクリーン印刷はインキを押し出して着肉させる方式のため) 長持ちし、洗濯にも耐えられるなどのメリットがあるのでプリントシャツによく用いられる。
また、イベント、レジャーなどで幼児から青年までのお土産として幅広く人気があるのが、ワッペン、シール、ステッカー類。 幼児のシール遊びはもちろんだが、愛車の後に“TDL”“PIAA”などを貼っている青年も数多く見受けられる。 イベントなどの想い出、記念品として多くの人が買って帰る商品の一つといえよう。
これらは、もちろん印刷技術を使って製品化されているものが多い。 シールの種類は多岐に渡っており、表面の素材、粘着剤、背面素材 (剥離用のもの) の組み合わせからなっている。
特に表面に使われている素材は各種の紙、ポリエステルフィルム、塩ビフィルム、合成紙などと種類も多く、使用目的に応じて選ばれている。
印刷は凸版印刷と呼ばれる印刷方式が多い。 またシール印刷では印刷のほかに、浮き出し (エンボス)、打ち抜き、ラミネート加工、箔押しなどの加工が加えられて、はじめて皆が欲しがる美しい商品となる。
印刷会社が、イベント会場におけるキャラクター商品、ギフトセットなどの印刷物の製造を担当しているのは当然のこととして、最近はそれらの商品のマーケティングから始まり、アイディアの企画提案、制作、販売方法の提案 (POP)、さらには店頭設計にいたる一連のスペースデザイン関係まで深く関わりを持つようになってきた。 それだけ印刷会社の活動範囲が印刷というものをベースとして広がってきたことの証明にもなるだろう。
最近のイベントは、いわゆる印刷物の提供はもちろん、入場管理、キャラクター商品の企画製作、販売促進、ひいてはイベントそのものの企画運営まで、印刷会社を抜きにしては語れないようになりつつあるのだ。

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