■第6回:「チョコレートにはどうやって絵を描くか」
子供たちのおやつになるチョコレートやビスケットには、人気キャラクターなどの絵を描いたものがよくあります。 ここでは、そんな食べられる印刷をご紹介しましょう。
ハイキングや登山に欠かせないのがチョコレート。 携帯に便利でカロリーが高いために非常食の代用にもなり、ときどき、遭難した人がチョコレートと水で助かったというニュースに接することもある。 もっとも、年間販売量の大半は、2月に繰り広げられるバレンタインデー騒ぎの中で消費されているらしいから、義理チョコしかもらえない身としては少々くやしい気もするのだが……。
そうしたバレンタインチョコのなかでも――義理チョコは問題外として――もらって一番うれしいのは愛情のこもった手作りチョコだろう。 特にチョコレートの上に愛の言葉の一つも書いてあれば効果はてきめん。 手作りのクリスマスケーキなどに書かれている文字は、こちらはクリームをチューブなどから押出しながら手書きされているが、チョコレートへの愛のメッセージもホワイトチョコで書かれるのが一般的である。
そういえば、昔 「ペロティチョコレート」 というのが市場をにぎわせたことがあった。 棒の先に5センチくらいのチョコレートの円盤があり、そこに可愛い子供の顔などが描かれたものでペロペロ舐めながら、その子供の顔を消していった記憶がある。
このチョコレートの上の絵柄は、印刷されたもの。 ただ、ふつうの印刷機にかければ、チョコレートが壊れてしまうに決まっているし、インキはどうなっているのか、どのような方式で印刷が行われているのか?
コミック誌や新聞チラシなどの印刷を思い浮かべているかぎり、ふつうの人にはちょっと想像もできないだろう。
まず印刷方式はスクリーン印刷が主で、そのほかに静電印刷方式などがある。 スクリーン印刷の場合、インキは40度〜50度くらいに熱を加えると軟らかくなるホットメルトといわれるインキを使い、しかもそのインキは食べられなくてはならない。
この 「スクリーン印刷」 の印刷法は、最近よく年賀状などの手作り印刷用の器具で 「プリントゴッコ」 という商品名で市販されているものがあるが、原理的にはこれとまったく同じである。
簡単に説明すると、まず印刷の版は、家庭の網戸などに使われている金網を想像してもらうといいだろう。 実際にはその網の目を細かくした紗 (スクリーン) という布地を使用する。 印刷して絵柄にしようとする部分以外のところを樹脂などで塗りつぶし、インキが通過しないようにしてしまう。
スクリーン印刷の版にはフラットなものと円筒状のロータリー式がある。 印刷する方法は、たとえば円筒状の版を使用する場合、版を回転させながら円筒内にポンプで送り込んだ食用インキを、内部に固定したスキージと呼ぶへらのようなもので、印刷版の内側から外側にインキを押し出して印刷する。
そのとき、このインキは冷めると固まってしまうため、インキを加熱しながら供給するとともに印刷版にも電流などを通して適温に加熱し、インキが固まらないよう注意しなければならない。
もちろん、食用にするものだから、一連の工程でごみや異物が混入することは絶対に避けなければならないし、衛生管理にも十分な配慮が必要なことはいうまでもない。
このチョコレート印刷と同じようなものにビスケット印刷がある。 あの固くて脆く、力を加えるとすぐに壊れてしまうビスケットの表面に、印刷をしようというのだ。 方法は細い線のものは凸版印刷、太い線のものは先に紹介したスクリーン印刷が使われ、そのほかに静電印刷という方式も使われる。
この静電印刷は、印刷版と印刷をするものとが直接接触しない無圧印刷方式の一種で、材料となるビスケットを痛めないという特徴がある。
ビスケットを作る工程は、一般的にはまず材料をミキサーに掛けて練り上げるミキシングという加工を行ったビスケット生地を、コンベアーに乗せて運びながらローラーで薄くのばし、一定の厚さになったところで、ビスケットの形に打ち抜く。
この焼く前のビスケットに静電印刷を行うわけだが、この印刷方式は使用するインキに特徴がある。 インキは植物性の色素と食品用乳化剤を数十ミクロン程度の粉体 (トナー) にしたものを用いる。
印刷方法としては、まずステンレス製のスクリーン (細かい目の網) と電極を適当な距離に向かい合わせ、その間に打ち抜かれたビスケットを置き、スクリーンと電極の間に直流電圧をかける。
スクリーン上に先の粉体インキをのせてブラシローラーでこすると、スクリーンの目を通過する時にインキが帯電してマイナスイオンを持ち、プラスの電極側に引っ張られて、その間にあるビスケットの上に付着するという仕組みである。
これを乾燥ドライヤーを通過させて焼き上げれば、絵柄の付いたビスケットができあがるというわけだ。
トナーに帯電させて、静電気の力を利用して印刷するところから静電印刷と呼ばれている。
このように、食品そのものに直接印刷をしていることは、一般的にはあまり知られていないのではないだろうか。

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