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13企業のリスクと復旧プロセス世界から見て、日本は自然災害によるリスクが高いと評価されている。地震多発国でもあり、台風の影響による水害の危険も付きまとう。東日本大震災では地震後の津波が被害を拡大させたが、首都圏でも「直下型地震が発生した場合、火災による被害の拡大が危険視されている」と眞崎氏は警鐘を鳴らす。災害時からの復旧を目的としたBCPのプロセスは3段階に分けることができる。第一が「従業員と家族の安全」「情報システムの安全」「施設の安全」。続いてBCM(事業継続管理)への移行。そして社会的共生に位置付けられる「地域の安定・復興」「企業の信用回復」「被害の軽減」というものだ。災害対策を考えるにあたり眞崎氏は「疑わしい時は最悪の事態を想定して動く」というProactiveの行動原理を紹介する。「危機意識は国によっても違う。日本人は駅の構内に持ち主が判らない物が置いてあっても意に介さないことが多いが、外国の人は爆発物ではないかと疑うことがある。普段から危機意識を持っておくことで、緊急時の心構えや迅速な対処が可能になる」と訴えた。中核事業を明確にし復旧シナリオを具体化BCPの策定項目は、その目的から「従業員・家族の安全と安心を守る」、「顧客の信用を守る」、「従業員の雇用を守る」という3つに区分できる。実行していくには、「企業同士の助け合い」、「商取引上のモラル」、「地域への貢献」、「公的支援制度の活用」といった取り組みが必要になる。策定する際に持つべき視点として眞崎氏は「中核事業を特定する」、「目標復旧時間を決める」、「顧客等と緊急時サービスの共通認識を持つ」、「事業影響分析を実施する」、「事前に事業資源の代替策を確保しておく」ことの5点を挙げ、「特に、中核事業を定義することは自社の事業の将来を見極めることにつながるため、重要性が高い」と述べた。印刷業界におけるBCPについては「印刷会社の場合、印刷業務が中核事業になるので、策定すべき内容を顧客や市場環境の観点からさらに特定していくことになる」と解説する。また、被害状況によっては復旧までに数年を要することもあり「長期にわたるリスクを想定したBCPのネックはIT環境と財務体制の維持にあると言ってもいい。経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報を守るためにも、公的支援制度の活用も含めた復旧段階のキャッシュフローまで協議しておくべき」と強調した。BCPの運用は経営者主導でBCPを運用していくには、経営者をトップに各部署の担当者などキーパーソンが参加した講師眞崎達二朗氏