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INFORMATION19印刷業界と市場との関係米国の印刷業界は長年経済とともに拡大してきたために成長指向が抜けきれない。市場の環境が様変わりしていくにも関わらず、拡大路線を推し進めようとすればするほど「規模の不経済」を招いてしまう。このような悪循環が続くと、企業の基礎となる資産価値の価格より株価が安くなる。そこに乗っ取り屋と呼ばれる人々が現れ業界をかき回した。Moore,Wallace,Donnelley,Quebecor,WorldColor,Banta,Quadgraphicなどほとんどの大手印刷業者が、乗っ取り集団によるM&A劇に巻き込まれて仕舞った。一方、中堅、中小の印刷業者は、値崩れや過当競争に巻き込まれ、廃業に追い込まれるものも少なくない。この様な状況が発生しても暫くして自浄作用によりリセットが起きるのが通常だが、印刷業界の場合、10年以上たっても改善する兆しがない。1997年から市場が25%も縮小しているにも関わらず、過当競争は止むどころか激しくなるばかりである。縮小が止まない印刷市場の中で印刷業者が生き残っていくための適正規模を検討したい。米国の印刷業界は、Coase教授の主張する生き残るための適正規模について、最近になってようやく討議しはじめている。NAPLが提唱する印刷業者の適正規模米国にPIAやNEPSに並ぶ印刷業界を代表する団体にNAPL(NationalAssociationforPrintingLeadership)があり、その団体の活動は多岐にわたるが、一つに印刷業界幹部への教育とコンサルティング事業がある。NAPLのCEOであるJosephP.Truncale博士国際委員会■北米印刷事情レポート(2011年7月〜9月)は印刷業者の「規模の適正化」について積極的に説いている。成長指向が抜けきれていない印刷企業は、売り上げが頭打ちになってくると、その規模を維持拡大しようと新規顧客の開拓策に走るが、Truncale博士は、ここに「規模の不経済」の落とし穴があるという。市場が縮小する中の新規顧客の開拓は、会社の規模に見合う案件が少なく、あったとしても競争が激しいため消耗戦となる。利益の見込めない事業に経営資源を注ぎこむことは避けるべきと呼びかけている。印刷業者は、無闇な拡大路線をやめ、従来の顧客数、営業部隊、生産設備、製品を変えずに業績を改善するにはどうしたら良いのかを考えるべきだと博士は主張する。しかし、適正規模にするという事は、多くの場合、売上を減らすことを意味するので、経営者の大半が強い抵抗感を示す。この意識的なハードルを乗り越えさせるのに苦労すると博士は言う。顧客の選択と集中印刷業者の規模を適正化するためには「顧客の選択と集中」が必要であり、既存客全体の分析と対応を行う。印刷業者の経営者に上位20の優良顧客の名前を挙げるよう問うと即座に答えが戻ってくるが、下位20の顧客について聞くとほとんど答えが返ってこない。顧客をクラスA、クラスB、クラスXに分け、全体像をプロフィール化すべきだと博士は主張する。これらは、売上、利益、付加価値などの基準を加味し、分類していく。クラスAは、トップ20%の顧客層で、売上、利益、付加価値においても優良で、これらの顧客は売上の80%に貢献している。クラスB