■ページ本文テキスト■

18出展メーカートップが俯瞰したdrupa2012drupaにおける出展メーカーからの記者会見は各種イベントの例に漏れず、新製品発表や新技術の紹介が中心であった。しかし今回は、営業的な視点を離れて、業界の動向や印刷市場の状況について、より幅広い解説を行なう場面がしばしば見られた。ハイデルベルグ社のCEOベルンハルト・シュライヤー氏は、「印刷会社にとって生産部門の経済性を極めることは、優れた印刷能力と同様に必要不可欠であり、当社の顧客は、コスト効率を求めること無しには、生き残れないであろう」と述べた。さらに、枚葉のトップメーカーであるハイデルベルグとしても、印刷会社が取り組むソリューションの一角をデジタル印刷が占めることを認める発言をしているが、いくつかの条件を付けている。「確かにデジタル印刷は現実的な未来の技術であり、成長を続けることが予想される。しかし、印刷会社にとって、最優先事項はコスト効率を高めることである。デジタル印刷に今できることや、もうすぐ可能になることのすべてが、コスト効率が良い訳ではない」と述べている。そして、ハイデルベルグが提供するデジタル技術(リコー製トナー式デジタル印刷機のOEM機や自社製のパッケージ印刷向けライノプリントLインクジェットシステム)は、コスト効率の定義に適っていると宣伝した。オーバーホールサービスやアップグレード・サービスについて、マンローランドWEB社の販売、マーケティングおよびサービス担当執行副社長のペーター・クイズレ氏は、印刷会社の設備更新のペースはメーカーが望んでいる水準ではないことを認め、その結果、「当社の印刷機は、過去よりはるかに長い期間にわたって、生産を担わざるを得なくなっている」と述べた。ランダ社の創立者であるベニー・ランダ氏は、Indigo印刷技術の発明者として1993年に述べた「デジタル化できるものは、すべてデジタル化されるであろう。印刷も例外ではない」との予言を繰り返した。ただし、20年近く経った現在でも、印刷国際委員会■北米印刷事情レポート(2012年7月〜9月)されたページ数全体に占めるデジタル印刷の割合はわずか2%前後に過ぎないとも述べた。ランダ氏は、デジタル印刷がオフセット印刷の持つ全ての利点(メリット)に応えるまでにならない限り、デジタル印刷のシェアは拡大しないだろうとしている。そして、新しいナノグラフィック印刷システムによって、この目標を達成したいと考えている。「最終的に、印刷メディアはデジタルメディアに取って代わられるだろう」とランダ氏は言い切っている。しかし、同時に「最終的に」そうなる時期がかなり先であることも明言している。「我々にとって本当に重要なのは、そうなるまでの期間の今後20年間の見通しである」。この期間中、デジタル印刷がシェアを伸ばす「素晴らしい」機会はまだ存在している。ランダ氏によれば、商業印刷分野にはまだデジタル化の手が及んでいない」そこにランダ社とそのパートナー3社(小森コーポレーション、ハイデルベルグおよびマンローランド・シートフェッド社)が開発を進めるナノグラフィック印刷の突破口がある。「drupa2012(第15回)は、不安定な経済状況の下で開催された」とKBA社のクラウス・ボルツァ-シューネマン社長兼CEOは述べた。さらに、「世界のオフセット印刷機の販売額は、2007年から2011年までの期間に約90億ユーロから約45億ユーロに半減した。KBA社その他オフセット機メーカーの販売台数は「2009年の底」から小幅に上昇しているものの、経済危機以前の水準には戻らない」と言う。同氏が示したスライド資料によれば、オフセットは引き続き印刷物生産の60%前後を占めているが、デジタル印刷が急速に伸びており13%のシェアを占めている。同氏は、業界では新たな競争が始まろうとしており、特にスモールフォーマットの分野でオフセット印刷がデジタル印刷に大きくシェアを奪われているという。KBA社は枚葉機と輪転機の両方を手掛けているが、今回のdrupa2012では連続紙用高速インクジェット式デジタル印刷機RotaJET76を出展した。「前回の“drupa”は業界の絶頂期に終止符を打つ