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20AnicolorやPresstek75DI、あるいはその他の準備時間が極めて短く、紙の無駄が極めて少ない、パーフェクティング(両面印刷)の機能を持った4色以上の印刷能力で、しかも、低いランニングコストで、B2デジタル機より少なくとも2倍の印刷速度を持つ印刷機と比較した場合、デジタル印刷機の高いコストを立ち上がり時間の短縮だけで正当化できるだろうか。オフセットと同等のデジタル印刷機に現実的な用途がないと言っている訳ではない。インライン仕上げが適さない片面印刷の市場がある。その例として大型ポスターや複雑な折加工が必要な印刷物があり、言うまでもなくフォールディングカートン(折りたたみ箱)市場もある。現時点では、フォールディングカートン市場におけるデジタル印刷のシェアは小さいが、パーソナライズが求められない小ロットのカートンの需要とともに成長すると予想される。この可能性を示すものとして、筆者は大日本スクリーン製造のTruepressJetSXのデモンストレーションで示された能力に感銘を受けた。このデジタル印刷機は、他社のB2デジタル印刷機と異なり、回転ドラムを使用せずに、まっすぐな用紙搬送径路を持っている。同社のデモンストレーションでは、ギフトや販促市場向けにあらかじめ筋入れ・抜き加工されたフォールディングカートンへの印刷を実演しており、これは印刷後に追加作業無しにカートンを作ることができるものであった。これは、実に興味深いギフト分野のアプリケーションであり、あらかじめ筋入れ・抜き加工されたフォールディングカートンは、まっすぐな搬送径路でなかったとしたら実現できなかったであろう。“Drupa2012”における最大の話題は、ランダ社のナノグラフィック技術と一連のデジタル印刷機であった。ランダのアイデアを信じるHPIndigoの顧客を中心とした多数の印刷会社は、今後2年以内に導入可能となる見込みのランダ型デジタル機に列をなして手付金を支払った。ランダ社によるアプローチは実に印象的であったが、その鍵を握るのはナノインク用のナノサイズの顔料粒子ではなく、印刷面に転写する前にインクから水を取り除く技術であろう。このインクは極めて重要ではあるが、もし必要なら他のサプライヤーも同様のナノサイズの顔料粒子を作ることは可能だと考える。問題は、ベニー・ランダ氏の主張通りにナノグラフィックプリンティングが、オフセット市場のメインストリームに取って代わるかどうかである。ランダ氏が言うメインストリームとは、印刷枚数が1万枚以上を意味している。この点については、先述のように、こうした最新のデジタル印刷機と最新のオフセット印刷機と比較する必要があると考える。Webtoprint業界における大手企業の一部を調べてみると興味深い。ここで考察の対象としたのは、ドイツのVistaprint社、ドイツのFlyeralarm社、そしてイタリアのPixartprinting社である。これらの企業はデジタル印刷も利用しているが、生産の大半は高度に自動化されたオフセット印刷機を利用している。最近、Pixartprinting社は、小森コーポレーションのLithroneGL840P8色B1機を2台設置した。Pixartprinting社は、次のような成果を得たと述べている。「新しい小森の印刷機が記録したデータは、控え目に言っても驚くような数字である。印刷調整に要するのは20枚、1時間当たり12ジョブ(台)を行なっているが、まもなくそれは15ジョブに達する見通しである。1カ月当たりの印刷量は1,000トンで、製品となる印刷物が出るまで2分とかからない。また、デジタル印刷機との損益分岐点は、ポスターで17部、チラシとパンフレットは150部と、実に驚くべきものである」。ランダ社のデジタル機が市場で販売されるまでには、まだ多くの作業が必要である。Indigoが直面し、改善に時間を要したいくつかの問題も既に見受けられた。これらは、素晴らしい平網や均一なベタを印刷する能力である。“Drupa2012”でランダ社が作成したサンプルは、強烈で鮮やかな色彩を使った多くの部分がハーフトーンの画像で、初期のIndigoのサンプルと良く似ている。ランダ社のデジタル印刷機は、網や小さな文字、画像、装飾等の印刷に関して、高度に一貫した品質を示す必要があろう。ランダ社には、今日のIndigoを育てた経験を持つ優れたチームがあることから、