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22ているアイデアから始めることだという考えを持つに至った。印刷業界関係者が「印刷物は必要不可欠である」「印刷物は基礎である」あるいは「印刷物は主要媒体である」といったことを口にするのが聞こえているが、それはコミュニケーションの本質と、今日のコミュニケーションが置かれた状況を否定するものである。「ポジショニング」で著者たちが説明するように、マーケティング担当者は製品プロモーション戦略策定の際、「アウトサイド・イン(外から中へ)」思考を行なわなければならない。しかし「インサイド・アウト(中から外へ)」思考は、自分の関心事を最重要に位置づけるもので、長期的には機能しない。コミュニケーションの当事者は、選択肢の多さに圧倒されてはいるものの、公私両面で印刷物の代替メディアを利用しているため、コミュニケーションの利便性と即時性が重要であることを確実に理解している。彼らの費用対効果の感覚には磨きがかかっており、すべてのメディアが同時にどう作用するのかをより良く理解するようになっていると思われる。印刷業界では、多くの人々が印刷物に注目し過ぎて、顧客の課題解決を十分に重視していない。こうした課題の解決策にしばしば印刷物も含まれるが、常に含まれる訳ではないであろう。我々は、業界として単に印刷物を弁護するのではなく、それぞれのチャネルの効果や、その協調方法についてもっと知識を得る必要がある。先週のロイターの報道によれば、GM社は、効果が少ないという理由でフェイスブック向けの有料広告を取りやめることにしたという。これこそ、ソーシャルメディアには言う程の効果はない、という印刷物支持者が求めていた情報である。しかし、その詳細をウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。確かにGM社はフェイスブック広告に投じた1,000万ドルの効果に満足していないが、今後フェイスブック内の自社サイトのコンテンツ構築には3,000万ドルを投じる予定である。広告は効果をあげなかったが、GM社のフェイスブックにおける活動には効果があったのだ。このGM社の決定は、印刷媒体広告向け支出の減少という10年来のトレンドの一例である。新聞のオンライン広告は、年間30億ドルを若干超える水準で横這いとなっている。5年程前、この数字は金額ベースで新聞広告の約7%であった。印刷された新聞広告は大幅に減少した一方、新聞のオンライン広告の金額が横這いであったことから、現在その比率は13%となっている。ソーシャルメディアによる活動は、スペースや時間を購入する必要がなく、ただ活動するだけで良い。ソーシャルメディアが広告ではないというのではなく、これまで広報活動と見做されていたものにより近いのである。市場は間違っていない。ただありのままを受け入れるしかないのだ。印刷会社のオーナー、経営者、役員、その他関係者は、戦略を策定する際に市場で発生しているアイデアや行動を利用する必要がある。市場に向かって「間違っている」と言うのは(例えば、これまでずっとそうだったからという理由だけで「オンラインの利用を控えてもっと印刷を利用すべきだ」と言うのは)、自分の周りに壁を作ることである。そうなれば、どのように論証しても、どれだけ強調しても、防御姿勢を取っているようにしか見えない。「御社は間違っており、誤った方向に進んでいる。御社の直接の経験を基にするのではなく、当社が提供し文書で示した事実を理解しさえすれば、より賢明な判断が可能になるのだ」と顧客に告げたり、さらに悪い場合は喧嘩腰で伝えたりしても、成功した試しはない。我々の義務は市場に参加することであって、市場を教育することではない:市場のトレンドを解釈し、収益をもたらす経験を顧客のために創出し、顧客の目標達成を助けることで、市場の一部となるのだ。経験が信念を作り出し、行動を変える。ある日、ある情報源から得た情報は、別の日に別の情報源から得た情報と矛盾する場合もある。市場における取引や観察の積み重ねから得られる継続的な経験は考え方を変えるものであり、それは定常的でゆるやかなプロセスである。我々は業界としてその一部となるべきであって、避け難いものを変えようと流れに逆行すべきではない。それよりも、避け難いものを利用することで、市場における新しいポジションを創出するのだ。通常、市場に誤解があると主張するのは、変化