■ページ本文テキスト■

28頭し、同様のアプリケーションを製造していく。全体の需要が落ちていくといえばその通り。値崩れも今後続くであろう。しかし、プロセスそのものがなくなってしまうといえば、ありえない事だと言うしかない。コミュニケーションメディアとしての印刷の未来コミュニケーションメディアとしての印刷物の役割は明らかに低下しつつある。新聞の減少はその最たる例だろう。雑誌やその他定期刊行物の減少は、もう少し穏やかである。若い読者であっても、手に取った感触や印刷が提供する様々な特性を好む傾向があるからだ。印刷VSデジタルを議論するときに見落としがちなのが、印刷の強み。その強みとはいったい何なのだろうか。まず、印刷物そのものがアーカイブとして保管できることだろう。電力も必要としない。破損したり、紛失した場合も、簡単に交換することができる。また、ユーザーインターフェースとしての使い勝手も、読書を始める小学三年生以前の教育レベルでも大丈夫だ。一方、印刷物の最も大きな弱点は、配送であろう。その将来は、郵便事業の台所事情によって、大きく左右されてしまう。郵便事業者が定期刊行物や一般郵便の料金の値上げをすれば、それに反比例して印刷の出荷量が減っていく。メディアとしての印刷物は、完全に無くなっていく運命にあるのだろうか。多分、そうはならないであろう。お金をかけても印刷の効果が期待できれば、配送コストが高くても、特定の用途では、印刷は使われ続けていくからだ。DMを使ったマーケッティングがその良い例と言えよう。ビジネスモデルとしての印刷の未来ビジネスモデルとしての印刷の未来がどうなるかという質問はとても興味深く、しっくりくるものだ。百年近く、印刷業界では二つのビジネスモデルが平行して存在していた。例えば、新聞社などはもともと商業印刷物を巷に提供する印刷屋でもあった。それが発展していき、単体の事業として製品を巷に提供しなくなり、新聞などを発行するために、社内の生産に専念するようになったのである。一方、商業印刷業者でありつづけた事業は、「加工屋」の形をとった。「加工屋」というビジネスモデルは、どの会社も似通っていて、ほとんど差別がつかない。このビジネスモデルそのものが、印刷業界を苦しめていると言っても過言でないだろう。「加工屋」のビジネスモデルは、「売る」、「造る」、「出荷する」、「請求する」という四つの単純な機能から構成される。必然的にこれらの機能を中心に、営業部、製造部、配送部、経理部といった事業組織が形成されていく。後に、印刷企業は大きくなり、その他の部門も加わっていくが、依然として四つの機能がビジネスモデルの中核であり続けることには変わりない。これらの機能が、今日、あまりにも多くの印刷企業にとって足かせとなっているのだ。「加工屋」の使命は、顧客が印刷物を誰かに造らせようと決めた後、そこにある注文を勝ち取ることに尽きると言えよう。営業の役割は既存の需要をいかにたくさん取り込むかが肝要とされる。需要が減れば、「加工屋」であるかぎり、それに対して反応する術もなく、手をこまねくしかない。今まで存在しなかった新たな需要を掘り起こそうとする意識や志が不足しているからだ。印刷企業の「加工屋」ビジネスモデルは、世の中から乖離していき、陳腐化したものとなってしまい、存在意義が脅威に晒されていると言えよう。幸いに、この脅威に気づいて、ビジネスモデルを変革し、持続性のある未来を自ら切り開こうとする企業が出現しつつある。それは、単に新しい製品やサービスを提供するという生ぬるいものではない。このような企業は、もはや自分らを「印刷会社」としてみなしていないのだ。業界としての印刷の未来業界としての印刷の未来はどうだろうか。もしこの業界が、似通った製品とサービスを提供