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29する金太郎飴のような印刷会社で構成されているとしたら、未来は深刻だ。戦略で成功するには、差別化が欠かせない。競合と違ったことをすることによって成功の是非が決まってくるからだ。自分がやっていることが、他社と比較しずらくなればなるほど、そこに持続的な優位性が形成しつつある証しとなる。自分から変化を起こし、「加工屋」のビジネスモデルや、デジタル媒体に失われていく印刷の世界から脱却することにより、いわゆる「印刷会社」はどんどん減っていき、最後には消滅するであろう。この消滅は、会社やそこで働くすばらしい従業員達がいなくなることを意味するのではない。会社の未来は、もはや従来の「印刷会社」での姿ではなくなり、他のものに変貌することである。そして、その形は多種多様なものとして発展していく。こんな素晴らしいことはないであろう。業界団体としての印刷の未来それでは、業界団体としての印刷の未来はどうだろうか。たぶんこの質問が、一番切迫感があるかもしれない。「印刷会社」から構成されるいわゆる「業界」は、自らの改革によって変貌する多くの会社によって解体されつつある。これらの会社の多くは「印刷業界」と言うより、自分らがサービスを提供している「顧客の業界に従属している」との認識の方が強いかもしれない。この認識が広がって行くと、印刷業界団体としての未来が不透明なものになってしまう。会員のビジネスモデルが多様化するとともに、ニーズも多様なものになっていくからだ。業界団体を維持するには、幅広い会員を満足させるような、有益な価値を提供しなくてはならない。会員が会員である所以は、会社とそのオーナーや従業員にとって、そこに価値あるものがあるからだ。それが多様化してしまうと、会員を引きつけ、参加や従属心を促すまでの幅広いサービスやプログラムを作ることが困難になってしまう。既存の印刷業界団体が直面している問題はまさにこの点にあり、会員を留めるのに苦戦しているのだ。会議やカンファレンスの出席は下降の一途。各種教育プログラムを作って維持していくのがますます難しくなってきている。印刷企業の事業数の減少、需要の減少、印刷企業の財務状況のせいにするのは簡単だろう。「売る」、「造る」、「出荷する」、「請求する」など、これまで印刷業者がやってきたことをより良くしようとする、業界団体のプログラムそのものが問題なのである。営業やマーケティングのセミナーを例に取ってみよう。カンファレンスのプレゼンテーションのほとんどは、いまだに「既存の需要をいかに取り込むか」に焦点をあてていて、どのように「新たな需要を作り出すか」についてはほとんど触れていない。お客様が何を欲しているかを見出し、それを満たすサービスをいかに開発していくかについてはなおさらだ。印刷の需要が減少していて、それを取り込もうとすることが難しくなっている時に、それをいかに改善するかについて学んでも役に立つはずがない。会員は既にそれを知っているのだ。団体に所属している会員が直面している課題に対して対応しなければ、頭の良い人ばかりの会員企業のオーナーは、有益で実践的な情報を見つけるために、他のところに行ってしまうのは当たり前のことである。印刷の未来を創造する成功する戦略を見出す早道は、まず自分のビジネスモデルを直視し、顧客にどのように対応しているかを把握することだ。ビジネスモデルが「売る、造る、出荷する、請求する」である限り、「変革」を口にするべきではない。営業部隊が既存の需要を取り込む術しかなければ、「改革」を口にするべきではない。本当のマーケターとなれば、既存のビジネスモデルからも足を洗っているはずだ。かつ、その会社は成長していくであろう。