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30ブランド戦略家としての印刷会社Quad/Graphics社では、自分たちのことをマルチコンテンツのインテグレーターと呼んでおります。「またか」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、私どもは、自分達の本当の姿をカモフラージュするような、まやかし事を言っているのではありません。実際にお客様から、印刷会社として、そのような役割を担うように期待されているのです。コンテンツは極めて重要で、その中核にいるのが私どもです。お客様に代わって、コンテンツをなんらかの形にして、人々に届けることが私どもの使命なのです。90年代まで印刷の流れと言うと、お客様からファイルをいただき、それをレイアウトし、フィルムに出力し、版を作り、印刷することを言いました。CTPが導入されると、フィルムがなくなり、私たちはデジタルの世界に慣れ親しむようになりました。第一次IT革命が起きると、お客様は「そこにあるコンテンツで、印刷用の版を起こしているよね。それをネットに展開することはできる?」と聞いてくるのです。「ウエブページを作成したいんだけど、同じ内容を違った形で展開して欲しい」といった問い合わせを多数いただくようになりました。時代の流れによって、印刷会社は、いやでもフルカラーのデジタルコンテンツの専門家になる必要がありました。これは、印刷のワークフローを効率化するということだけではなく、同じコンテンツを使ってウェブなど他の形へと展開していくことも言います。そして、第二次IT革命が訪れ、スマートホンなどが巷に出回るようになると、またもやお客様がスマートホン用のコンテンツをどのように統合するのかと聞いてくるのです。「QRコードは一体何をするものか」とか、「郵便局がQRコードを使えば料金を値引きすると言っているが、どうすればよいのか」など、多数の問い合わせをいただくようになりました。そのような時、私どもはお客様にこう言っています。「QRコードを使っても、スマートホン用にフォーマット化していないウェブサイトに飛んでも仕方がないでしょう。まず、コンテンツをスマートホン用のフォーマットに合わせないといけません。そのような基本を押さえた後、QRコードを製品パッケージに印刷して、製品のデモをウェブサイトで、動画を流すようにしましょう」。このようにお客様を指南していくわけです。私どもは、これをクモの巣商法と呼んでいます。印刷会社は、既にプロセスとコンテンツに深く関わっているので、マーケターからあれこれ依頼を受けるうちに、彼らの悩みを聞くようになり、それが、ブランドの話へとクモの巣のように伝っていくのです。ブランドが基礎にあって何を主張しようとしているか、それを使って何をしたいのか、が肝なのです。今の時代、企業が作り出すブランドは、消費者が期待しているものと、実際に体験しているものが、合致していないといけません。印刷再考全米第2位Quad/Graphics社長ジョエル・クアドルッチ氏、印刷業界について語るWhatTheyThink編集者PatrickHenry氏記2014年6月19日、IDEAlliance主催のPRIMEXEastリーダーシップコンファランスにて、Quad/Graphics社(米国2位)会長、社長兼CEOであるジョエル・クアルドリッチ氏が、基調講演を行なった。WhatTheyThink編集者のPatrickHenry氏は、同氏へのインタービューを実施。印刷業界の現状やその中でのQuad/Graphics社の役割などを幅広く語っていただいた。以下は、その内容の抜粋である。