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INFORMATION33事業の多角化も同じ考えだ。売上げのほとんどが、ひとつの顧客に依存していれば、誰でも神経質にならざるを得ないだろう。製品やプロダクトミックスも同じ。売上げのほとんどがひとつの製品群によって構成されていれば、それがだめになったときに保険が利かない。印刷会社が製品群を考えるときに、よく陥る落とし穴は製造の視点で分類することだ。印刷会社は、印刷をオフセット、デジタル、ワイドフォーマットなど生産技術別にまとめがちだ。しかしお客様はそのようなまとめ方はしない。経営目標にどのように製品やサービスを活用するか用途別に分類する。例えば、貴社がラベルを専業とする印刷会社であったとしよう。提供される製品群はラベルというより、消費される製品価格を構成する一部分だと思わないといけない。長年印刷は、お客様がマーケッティングを行うときに真っ先に使われるメディアであった。チラシ、小冊子、説明書など、印刷物が果たす役割は、ほとんどがマーケッティングの用途なのである。お客様のマーケッティング活動に使われる印刷だが、商業印刷会社が提供する製品群は、依然として印刷に偏りすぎている。一方、マーケッティングに活用されるデジタルメディアの発展は凄まじい。その煽りを受けて、印刷が打撃を受けていることは言うまでのことではない。電子メールは破格的に安いし、トラッキングができ、容易に導入することができる。Googleやソーシャルネットワークなどプラットフォーム上に広告を打つのはいたって簡単だ。デジタルメディアは、マーケティングの効果を正確に測定することができ、印刷と比較すると明らかに優位性を持つ。貴社は、製品やサービスをどのように分類しているのだろうか。このような質問をすると印刷会社は、製造の視点で分類する。デジタル、オフセット、ワイドフォーマットなどの答えが即座に戻ってくる。だが、お客様の視点にたった分類となると思考停止してしまう。トランザクション、コンプライアンス、製品価格、マーケッティング、プロモーション、サイネージ、教育など、お客様の用途別に分類している印刷会社はどれくらいあるだろうか。競争が激化するばかりの今日、印刷会社が自分の事業を本当に理解するには、まず自社が提供している製品やサービスを使って、お客様がなにを成し遂げようとしているかを把握する必要があろう。2020年でもお客様の事業に貢献し、繁栄したければ、製品群について印刷メディアの枠を超えたものへと多角化しなければならないだろう。今、マーケティングの予算は、印刷からオンラインディスプレイ広告、サーチエンジンマーケティング、メール、ソーシャルなどデジタルへ大きくシフトしている。その大きな流れに対応するため印刷業界は「マーケティングサービスプロバイダ」という言葉を編み出し、あるべき姿の理想像をつくった。しかし、実際には、ものづくり中心の事業(内向き)から営業を主体としたソリューション事業(外向き)へと転換しきれていなく、どのようにはじめたらよいのか、どのように進めたらよいのか苦慮しているのが実情だ。素晴らしい印刷製造会社であることと、素晴らしいマーケティングサービスプロバイダになるためのスキルとマインドセットはまったく別もの。印刷が独占していた時代は、市場に素晴らしい印刷物を提供すればそれで充分であった。今日、印刷はたくさんある選択肢のなかの一つに過ぎない。お客様は、本来印刷を欲しているのではなく、彼らの事業に貢献するツールを欲しているのである。そこにこそ、ビジネスチャンスがあるのに、印刷会社はお客様中心の外向きの姿勢より、自分が得意とする強みばかりに焦点をあてて内向きになってしまっているのだ。印刷会社が内向きのため、売られているプリントソフトウェアツールも、印刷会社が欲するものになりがちだ。機能が印刷会社の業務をいかに効率化するかに比重が置かれている。だから、WebtoPrintソリューションの多くが、検索エンジン最適化(サーチエンジンオプティメーション)、製品評価、エンゲージメント(顧客接点)などのフロントエンド機能より、オーダー管理、面付け、ワークフローなど、バックエンド機能が充実しているのは、そのためだ。印刷業界がよく話題にする「マーケティングサービスプロバイダ」というと、すぐメールマーケティングとか、ホームページに誘導するQRコードなど、上面の話になってしまう。私が考える「マーケティングサービス」とは、自分が日頃から携わっているビジネスの枠を飛び出して、お客様の懐に飛び込むことである。これには発想の転換が必要で、多くの印刷会社の経営者にとって、自分が無知であるということを認めることになり屈辱感が伴う。けして心地よいものではない。最近、私は毎年開催されるHPユーザースコンファランスのDscoopXでHPのValerieDiCarlo女史と一緒に講演する機会があった。彼女は、我が講演チーム