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「産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 報告書「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」(案)」への意見
2015年1月15日
「産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 報告書「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」(案)」への意見
一般社団法人日本印刷産業連合会
本報告書案については、グローバル化が進む中、我が国のイノベーションシステムを支える知的財産権の制度的課題に関して審議し、「世界最高の知財立国」の実現を図るべく、我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しの検討を行い、とりまとめられたものと理解しております。
一般社団法人日本印刷産業連合会といたしましては、重大な関心を寄せており、その検討の方向性に賛同するものであります。これらの趣旨に沿った制度改正が速やかに行われることを強く希望します。
1.職務発明に関する「特許を受ける権利」について
(1)特許を受ける権利の帰属
職務発明に関する「特許を受ける権利」については、初めから使用者等に帰属するものとすることに賛成します。詳しくは以下の通りです。
●職務発明については、従業者等が、職務を遂行する上でなした発明であることから、特許を受ける権利は使用者等に帰属させ、使用者等による権利取得・活用を図ることが我が国のイノベーション促進に資するものと考えます。
現行制度においては、職務発明を契約・勤務規則等によって予約承継することができるものの、中小企業、特に発明をそれほど多く生み出さない中小企業にとっては、職務発明に関する契約・勤務規則等を整備することが容易でない場合も多くあります。そのため、発明者が退職をしたときに、転職先の会社が特許出願を行うことも生じ得ると考えており、権利の帰属について脆弱性があるものと考えております。
特に印刷業界は中小企業が多く、従業者等が職務上なした発明についての特許を受ける権利が最初から使用者等に帰属すると定めることは、会社経営にとって極めて重要な制度改正であり、強く望むところであります。
●他社や大学等との共同開発において、特許を受ける権利の譲渡を受ける際、全発明者の同意が必要で、他社の発明者が拒否した場合に出願できなくなるリスクが低減され、また、手続きも簡便になります。
●新技術による製品・サービス開発は、会社の将来の事業のために会社が用意した設備を使用し、チームで行うことが多く、また発明成果の事業化にあたっては発明者以外の製造技術、営業活動等に携わる従業員等の協力がなくてはできないため、初めから使用者等に帰属させることは企業での研究開発の目的や企業活動の実態に合致しているものと考えます。
(2)発明へのインセンティブ付与について
職務発明に関する特許を受ける権利が、初めから使用者等に帰属した場合に、使用者等が発明のインセンティブとして、発明成果に対する報いとなる経済上の利益(金銭以外のものを含む)を従業者等に付与することは必要であると考えます。
また、インセンティブを法制度によって担保するために、経済上の利益の付与の義務化がされるのであれば、これと併せて、政府がインセンティブ施策についての使用者等と従業者等の調整の手続に関するガイドラインを策定することに賛同いたします。
●ガイドライン策定にあたって、政府が民間の自主性を尊重する、という点についても賛成します。さらに、ガイドラインは、インセンティブ施策についての使用者等と従業者等の調整の手続に関するものにすべきであり、説明会の開催等を通じて周知徹底することを強く望みます。これにより、使用者等が夫々の会社に適したインセンティブ施策を策定し運用することができ、イノベーションの促進に資する職務発明制度となるものと考えます。
●ガイドラインは、様々な会社の実態を踏まえた、多様性を許容するものとなることを期待します。企業により従業員数や売上等の事業規模、開発人員数やその割合など研究開発のあり方が異なるためです。
2.特許料等の改定について
特許料等を改定し、料金を引き下げることについては、賛成します。詳しくは以下の通りです。
●商標は区分数が多くなると登録費用、更新費用とも多額になり、負担が大きく、特に重要な商標は区分数も多いため、ブランド戦略には効果的であると考えます。
●国内基礎出願の調査結果がPCT出願の調査報告に利用できる場合と、PCT出願の調査報告が国内基礎出願の調査結果に利用できる場合に、調査に関する費用(国内基礎出願の審査請求料とPCT出願の調査手数料)は、できる限り低額になることを望みます。
●今回の料金改定は、我が国の「イノベーションの促進に資する」ことを目的の一つとするものであり、この目的達成のため、料金引き下げ以外の施策についても、継続した検討を要望します。
●具体的には、欧州の制度のように、出願公開時にサーチレポートを付けることは、その後の無駄な費用が抑えられ、権利取得、維持方針など事業戦略に有効な特許取得に効果的と考えます。さらに、事業化にあたって知財クリアランスを得るための他社権利の調査費用等の負担も軽減できると考えます。
3.特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の加入について
出願人への救済措置が図られることになるため、基本的には賛成します。以下に要望等を記述します。
●8ページ中ほどの「第一に」で始まる段落において、「・・・条約未加入の新興国等において・・・手続の利便性の向上が図られるよう、両条約加入に向けて各国を協力に牽引することが期待されている。」との記述がありますが、日本からの出願が増えている新興国等の条約加入が促進され、日本の出願人が利便性の向上を享受できるように、政府としての働きかけを要望します。
●今回の条約加入にあたって必要となる措置に関しては、条約未加入の新興国等から出願する出願人も、条約締結国の出願人と同様に利便性の向上が享受できると思われます。しかし、日本から当該新興国等へ出願する場合には、利便性の向上が享受できず、相対的に不利となります。例えば、特許法条約については、14ページの(2)②「明細書の言語」において、「明細書の言語をいかなる言語であってもよい」とすることが予定されていますが、これにより条約未加入の新興国等からの出願人は、自国言語の明細書で日本への出願が可能となると思われる一方、日本から当該新興国等へ出願する場合には、日本語の明細書での出願が認められないという状況が生じると思われるため、そのような状況ができるだけ早く解消されるような取組みを要望します。
●特許明細書欠落の補完があった場合、認定された出願日について公報で容易に分かるような対応を要望します。
●16ページの4.指定期間経過後の請求による救済に関し、指定期間経過後にも手続きをできるようにする場合、知財クリアランスへの影響が最小限となるよう、配慮を要望します。なお、18ページのSTLTについても同様の対応を要望します。
●18ページの「2.使用権(ライセンス)の記録について必要となる措置」について、 第19条に「未記録の効果」という条項があるので「記録することができる」といった規定になるかと思われますが、「STLT第17条及び第18条は、使用権(ライセンス)の記録について規定しているところ、それら規定への対応を行う方針である。」とのことから、今後、商標をライセンスした場合、ライセンスしたことの申請や登録等が義務化され、その記録の有無が商標権のライセンスの効果に影響を及ぼさないよう配慮を要望します。
以上
パブコメ意見_20150115_日本印刷産業連合会(241.06 KB)
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