日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録



 そういうことであれば、現状あるMacintosh のDTPというのは、とりあえずWindowsに引き移すだけというのでしたら、もうこちら (左側のグループ)のラインでいけるわけです。要するにQuarkXPressなりEDCOLORなりです。こういうものを購入し、社内に置いておき、あとIllustratorなりPhotoshopでラインを組んでおけば、お客さまからのさまざまなデータの入稿に対応することができます。
 もちろんOfficeのプロフェッショナルくらいは買っておいてもらいたいと思います。プロフェッショナルを買っておくと、いろいろなプログラムが入ります。ですから、MS-Office2000/XP とAdobe Illustrator、それからQuarkXPressとEDCOLORとAdobe FrameMakerのレイアウトソフト一本の組み合わせで組んでいくことで、少なくともMacintoshのDTPをそのままWindowsに置き換えた形ということができるようになりますよということを、この図では見ていただければいい。
 (図の矢印のとおりに) それぞれデータはいきます。出来上がったものは、基本的にはPS Fontを経由して、それからRIPのほうに流れていく。そして通常の制作ラインを満たすことができます。そういうようなことがいえるでしょう。
 InDesignをわざわざこういうふうに置いたのは、InDesignというのはもう一つ特色があります。それは、同じAdobeシステムズのものなので連携がよろしいわけです。具体的には、InDesignというのは基本的には他のと同様なんですが、例えばワードのデータをそのまま文字として割りつけることもできますし、エクセルのデータを直接表のような形にしてInDesign上に割りつけることができるわけです。そういうふうなことであれば、そこで起こる変換の手間がなくなるわけです。そういうふうなメリットはあるでしょう。
 それからIllustratorとの連携にしても、EPSF形式に書き出して、それをどこに貼るということではなくて、InDesignでしたら、例えばIllustratorのデータをもう直に画面に貼れるわけです。InDesign上でレイアウトしていって、問題があったら、そのデータをダブルクリックすると、勝手にIllustratorが起動して、その上に修正して、保存し直すと、勝手にInDesignのほうで修正されたものが貼り直される。そういうオペレーションができるわけです。
 Photoshopでも同様です。Photoshopでつくったデータを直貼りできますし、InDesign上でダブルクリックしたら、それはPhotoshopが自動で開いてもとに戻ります。何が利点かといえば、例えばIllustratorとかPhotoshopはそうですが、EPSにして描き出したりするときには、レイアリング構造を必ず1本にしてしまうはずです。Photoshopなどでレイアウトを多層に切って編集していても、最終的には一つの画像にしないと描き出せない。描き出せないということは、それが修正があるために、同じものをもう一つ、Photoshopフォーマットで落としておかなければいけない。そういうような形になりますと、基本的には1本のレイアになって、編集がしにくいデータになったものをもう一回張って、修正があったら戻らなければならない。そういう話になります。
 でも、Photoshopデータ、Illustratorデータがそのまま貼れるということは、この上でレイア構造をそのまま使った形で張れる。そういう意味合いからいうメリットがあります。
 それからもう一つは、Photoshopの前になかった新しい機能として、透明属性という機能があるんです。トランスペアレンシといって下の画像が透けて見えるという処理です。昔こんなのはできなかったのですが。そういうふうなものをそのまま貼ることもできます。
 なぜそれが利点かといいますと、例えばそれを特定のデータ形式に描き出したりします。そうするとそういうデータ形式を、要するに透明属性をサポートしているというのは、PostScriptでも、例えばPDFのレベルでもバージョンが高い。透明属性が指定できるPDFのバージョンは1.4のバージョンです。でも、現状通用しているのは1.3というバージョンでしょう。そういう透明属性のものを1.3 に落とすと、透明属性はなくなります。なくなったものをもう一度開いていったとしても、復活はしない。
 そういうようなことで考えますと、そういう種類のそれぞれのソフトの持っている高度な、例えば透明とか、レイア構造とか、そういう種類の内容をフルに生かせるようにというふうなことからいって、Adobe InDesignを別に置いています。
 こういう言い方すると、何となくAdobeのPRしているような感じがして非常に気持ちは悪いのですが、ただ、制作上のメリットは非常に大きいと考えざるをえません。
 そういうようなことであれば、それぞれのソフトを置いていく意味合い自体も若干違ってくるわけです。その意味で、こっち(QuarkXPress、EDCOLOR、Adobe FrameMakerのグループ)を選ぶのか、Adobe InDesignを選ぶのか。選べないという場合もあると思います。お客さまの都合からいって、「いや、お客さまが社内でEDCOLORを使っているから、それはしょうがない」と。それは当然あるでしょう。あるでしょうけれども、それ以外のメリットを見いだすのであれば、一つはこういうInDesignを使うという手もあるのかなと思います。
 そういう意味で、InDesignを使っていれば、PDFの描き出しというのは非常に簡易です。もちろんQuarkXPressなどを使ったとしてPDF の描き出しはできるのですが、PDFの描き出し方が違います。その意味からいって、やはりAdobe InDesignのほうの安定性のほうがいいのかなというふうには考えます。

PDFについて
 本当はもうちょっとPDFというものについて突っ込んでいきたいところはあるのですが、これくらいでとどめようかなとは思っています。しかし、レジュメには入れなかったのですが、ちょっと意識だけしてもらいたいところがあるものですから、ちょっとだけこんな説明を追加させてもらいたいと思います。PDFについてです。
 これから先、もっとPDFというのは比較的重要な要素になっていくと思いますので、ちょっと意識だけしてほしいなという点はあります。PDFカンファレンスという毎年やっているイベントがあるのですが、それでちょっと話した内容です。
 皆さん方、PDFをつくって納めるとか、いろいろいわれるのですが、途中段階では、1回意識してほしい点がある。その内容というのは、先ほどの図のなかでも、どこかから線が引いてあったPDFという考えが出ていましたが、PDFに至る行き方は何種類もあります。色がWindows版、ピンクがMacintosh版になっています。
 この図は、Adobeさんにも確認とっていますから確実ですが、PDFというのはどうやってできるかということです。それでモノが違いますよといっているだけです。Case1と書いてありますが、それは何かというと、Illustratorというソフトがある。Photoshopというソフトもある。それからInDesignというソフトがある。これらとPDFのかかわりは何かといえば、直接PDFをセーブできます。余分なことを考えないでセーブできます。セーブできるということは、IllustratorとかPhotoshopとかInDesignのプログラムのなかにPDFライブラリーというプログラムが入っていて、保存するときにそのライブラリー・プログラムが動いて、そしてページデータをPDFに描き出します。だから、Adobeの純正のライブラリーから描き出されたPDFになります。そういうようなものが一つあります。だから、これはDistillerというプログラムは不要なのです。存在しなくてもできる。
 そしてもう一つ。Acrobat Distillerというプログラムがあります。これはAdobeのAcrobatのパッケージを買うと、PDFをつくるためのプログラムになっています。このAcrobat Distillerというのは、入力ファイルは必ずPostScriptで入れる。そして出力ファイルがPDFというプログラムです。
 要するに、ページとしてプリントできるはずのデータを、プリンターに出すと紙が出てきたり、セッターに出すとフィルムなり印画紙が出てきたりするものを、 Distillerというプログラムに入れると、画面の上に見える紙芝居のようなデータですが、そういう形にしてくれるというものです。
 このような形で、必ずこれは入力データがPostScriptになるようにしなければいけません。そのためにDistillerプリンターというのを介してPostScriptというプログラムをつくったりしているのですが、こういうものを使ってアプリケーションをつくるものは、いわゆるPageMaker とかFrameMakerとかもここに入ります。それからMS-Officeも同様です。これ両方を使って、 Distillerを使ってつくりますよ、と。Case2です。ですから、同じように見えていますが、Case1と2は基本的には品質は若干違うのが当たり前です。
 それからもう一つは、PDF Writerというものがあります。PDF Writerというプログラムをまだひょっとしたら使っているかもしれない。Macintoshでも使っているかもしれないのですが、これでつくるやり方がCase3です。Case4は、Acrobatから直接PDFをつくることもできますので、これもちょっと違うと思います。
 Case1〜3は、おのずから内容的に違うものです。ということは、ある程度ご理解いただいたほうがいいと思います。
 どういう点が違うかといえば、一番違うのは、例えばPDF Writerというプログラムは、基本的には使ってはいけないはずです。でも、知らないとどんどん使う。結構いろいろ聞かれるのに、「尾崎さん、Distillerでつくるのと、PDF Writerでつくるものと、同じPDFができるんですよね」という言い方をします。それはよく知らないユーザーからみたら、同じアイコンで、PDFでつくったファイルができて、中身を開いても同じように見えるから、同じことをやっているのだと思われますが、実は全然違うものなのです。
 どこが違うかというと、PDF Writerというのは、Acrobat というのはバージョンが3、4、5で、来年くらい6が出てきますが、こうなったとしても、このバージョンアップというのは3から以降一切行われていないのです。とすると、Acrobatの4で、「フォントをPDFに埋め込みました。だからきれいに見えます」とか、「プリンターフォントがなくても出力できます」などというのは、PDF Writerでつくったものに関していえば、そんなことはできない。
 それから、プラットホーム。プラットホームというのは、MacintoshとかWindows 95、98、2000、XPとか、それぞれ若干文字の環境が違うところで表示しても、同じような文字を表示する。そういうようなプラットホームに対応するために文字を一部切り換えたりする機能がPDFにはあるのですが、そういう機構も持ちません。ですから、極端な話、WindowsのMeというOSの上でPDF WriterでPDFをつくったとしましょう。その場合に、たぶんそのPDF をWindows 98に持ってくると、まず間違いなく文字化けします。 Distillerでつくったのだったらそんな文字化けはない。そういう違いが現実にはある。
 ですから、さっきの話で、単純に「ここからPDFができますね」みたいな話をしてしまうところがあるんですけれども、違うんですよということは理解してください。さっきの話でいえば、Illustrator、Photoshop、InDesignは、PDF を直で描きます。だから、直の線がついている。そしてPDFライブラリーでつくります。これが比較的素直なPDFなつくり方です。
 その次の素直なものは、Distillerでつくる。だから、この画面のなかにどこにもPDF Writerと入れていない。入れていないということは、基本的には使ってはいけない。使うと、互換性のないPDFを発生します、という言い方です。
 結構PDFのことをくどくど言い出しているというのは、今、皆さん方にとっては、メインはやはりPSでつくったものを印刷物にするものかもしれないけれども、もうちょっとすると、正直いって、印刷物を要求されるよりは、正しいPDF――「正しい」という言い方は非常に曖昧ですが――をつくる技術を要求されると思います。ですから、今回あまりそこまで突っ込んだ話はしないのですが、PDFというのをどのようにつくっていって、どのように理解するかというものをある程度理解しようという必要はあるかと思います。
 ちょっとそのへん話しすぎましたが、このような形のフロー(Windows ベースのDTPシステム)が一つは考えられるのではないでしょうか。
 逆に、こういう形でラインを組むのであれば、さっき言ったOpenTypeというのはここにきています。InDesignというのは、別にOpenTypeだろうが、TrueTypeでも両方使えるようになっています。PostScriptでも、TrueTypeもそうですが、使えるようになっています。
 ここ(QuarkXPress、EDCOLOR、Adobe FrameMaker) からここ(PostScript Font、OpenType Font)に線がいっていないというのは、必ずしもまだQuarkXPressとかEDCOLOR というのはOpenTypeの対応はあまりよくないので、線がいっていないだけです。
 では、この図をどう考えればいいかというと、この辺(QuarkXPress、EDCOLOR、Adobe FrameMaker) とこういうもの(Adobe Illustrator、Adobe Photoshop) を使ったDTP というのは、それからPostScript Fontまで含んだのは、たぶん今現在Windows側に流れるものとしては、順当なものです。
 ただし、そういうフローは、あくまでもこの出力用のPSフォントというものが必要であったために、これらのフローを要求していたのであって、別にPSフォントでなくても、それを含んだ、OpenType Fontがある程度流通することで必ずしもこれに依存せずに、これをうまく利用して、InDesignなり、これからこちらのソフトもOpen Typeに対応してくるかもしれませんが、そういう形に移行してくるのではないでしょうか。
 そうすれば、EPSとかTIFFにするということは加工することですから、それぞれの定番ソフトといわれるIllustratorとかPhotoshopもデータを加工しないで、加工して変更しにくいデータに落としてしまわないでも、作業ができるような環境をつくっていくことはできます。そういう環境ができれば、こういうものからOpenTypeを使ってPSをはいて、出力をしていくようなフローができますし、それとまったく同じデータを使ってPDFをつくって、それを流通させていくことができるようになります。PDFというのは、あくまでも見せるだけのデータではなくて、PDFそのものをインターネットのホームページに載せてしまうこともできます。そういうことでいえば、はるかに汎用性の高いデータになるわけです。
 ちょっと余談にもなるかもしれないのですが、私は日本経団連というところの講師もやっています。経団連というのは、日経連と一緒になって日本経団連となったのですが、そこで一般の広報担当、いわゆる広報誌とか社内報などをやっている方たちに対してDTPを使いませんかという話をしているのですが、しばらく前、2002年になってからか、ちょっと感じが違ってきたのは、以前、DTPの活用法というのは、自分たちがある程度レイアウトをやることで印刷物の制作費用を抑えたいというのがほとんどだったのです。2002年くらいはそうではなくて、「とりあえず印刷物もつくらなければならないんだけれども、それはプリンターで出すくらいで勘弁してもらって、ほとんどのものは、PDFもしくはホームページに乗せる形にして、イントラネット、社内のネットワークにぶらさげてしまおう、というふうなアプローチをされている方が結構多くなってきました。
 したがって、その線を進めると、要するに従来、広報誌とか社内報などの印刷物を受注していたところはだんだん少なくなってきて、そうではなくて、こういうものの制作支援をした上でHTMLなりPDFなりをお納めしないと仕事がなくなってしまうということにもなりかねないと思います。基本的にはそういうふうな可能性もないではないのかなという部分もあります。
(次号へつづく)


前ページへ

to セミナー・座談会記録TOP 戻る

to Main to Main