日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録



Windows ベースのDTP システム
 先ほどのはあくまでもMacintoshを使ったDTPの話です。では、WindowsベースでのDTPシステムはどうなんでしょうか。皆さんのところでまだあまりやっていらっしゃらないかもしれないのですが、現状では何ら問題ないという認識を我々は持っています。うちでは若干の制作もやっています。しばらく前に、もちろんこれはAdobeさんが大手のスポンサーになっていただいたということもありますが、Adobe のInDesignの2.0と、フォントでは、OpenTypeというフォントが出てきましたので、これを使った印刷物をつくっていこうということをやっています。少なくとも、もちろん原稿を書いたりいろいろすることは問題がありますが、印刷物をつくるということに関してはまったく問題がないです。品質上問題ないし、現にそういうものを制作しております。
 ですから、WindowsベースのDTPシステムというのは、場合によると、Macintoshベースで作業していらっしゃる方にとっては、まだまだなのでしょうという認識がおありになるかもしれませんが、現実には、現在、Windowsベースに変換してしまったとしても何ら問題がないとお考えいただいてもいいかもしれません。
 ちょっと資料を読んでみます。「Windowsを利用したDTPの場合はMacintoshのデータ変換を要しない」。WindowsからMacintoshに持っていくとかということはないということです。一部のものは、従来、MacintoshのほうでたくさんためていたIllustratorのデータをWindowsに持ってくるという話はあるかもしれませんが、基本的には、Windowsというプラットホームで完結してしまいます。
 そういう手間はないのですが、「アプリケーションが多く、それらアプリケーションやフォーマットを用いたワークフローは複雑です」。はっきりいえば、さっきの話でおわかりだと思いますが、MacintoshベースのDTPというのは、IllustratorとPhotoshopと、あとQuarkXPress なりがあればよかったのです。お客さまのほうも、ある程度MacintoshのDTP をやりますということになると、それなりの勉強のしかたをしてくれて、いろいろな技術をしてくれたはずです。途中では営業さんが、「お客さまのほうがよく知っている」というような苦情が出たりしていました。それは確かだとすれば、お客さまは結構DTPというシステムについて勉強してくれて、印刷業の仕事がある程度しやすいような形式にして渡してくれていたはずなのです。文字データをテキストデータにしてくれたりとか、Illustratorで処理するときにはそれなりの処理をして渡してくれたりとか、いろいろしてくれたはずです。でも、Windowsというのは、そういうプロだけの環境ではない。普通にいるそのへん歩いている方が、会社に帰ってパソコンをたちあげて動かすようなワード、エクセル、パワーポイント、あるいはその他のもの、こういうものの上で作業されたそのデータが流れ込む。そういうふうに考えていただいていい。このために非常にいろいろな面倒が起こってきますよということなのです。
 「ただし、レイアウトソフトを特定することで、ワークフローを特定することができるし、従来のMacintosh DTPを援用する場合は、Macintosh DTPと差はない」。お客さまのつくるデータはさまざまですが、最終的に組み上げるところは、だいたいMacintosh DTPと同じようなフローとっています。
 「しかし、既に多くのDTPアプリケーションがWindowsベースで稼働しており、Macintosh に拘泥するのでなければ、柔軟なシステム構成が可能です。今後の社会のコンピュータ化は、依然としてWindowsベースである」。もちろんそういうことを何とか回避しようと、この間i-Bookの安いモデルが出たとか、そういう話題があるにしましても、やはり全体としてはWindowsベースで進んでいきます。
 「このため、DTPシステムもWindowsベースに移行することは当然のことと考えられるでしょう」。
 依然こういうことが必ずしもいえなかったというのは、一つはフォントの理由があるのです。例えばWindowsで作業したとしても、画面に出ているフォント(文字データ)が、印刷用のCTP とかImageSetterから出てくるフォントが必ずしも同じものではなかった。安定してWindows から出力できるフォントは制限があった。そういうふうな点があげられるはずです。ですから、我々も含めてですが、ある程度、DTPの出力まわりに関しては、やはり従来のCIDのフォントを使ったフォント出力がよいのではないでしょうかと考えていたわけです。
ところが、昨年よりちょっと前からOpenTypeが本格的に普及し始めています。まだそれほど一般的ではありません。でも、すでにいろいろなものがOpenTypeとして配布されるようになってきています。
 例えば現状でも、Windowsなどを使っていて、「Windows95 などではOpenTypeを使いませんよ」なんていう方もいらっしゃるだろうとは思いますが、実際にはそういう方もOpenTypeを使っているはずです。OpenTypeというのは、現状でも、Windows 98とか95で、インターネットエキスプローラーの5.5とかをWebサイトからダウンロードしてインストールすると、実は勝手にインストールされています。ただし、Windows 95とか98だと、こういうアイコンの情報をOSが持たない。持たないで、こういう表示になっている。そういうのは結構ざらです。したがって、現状でも、知らないうちにこのOpenTypeというフォントを使っている可能性は非常に高い。多くのものは欧文なのですが、去年くらいからモリサワがOpenTypeの和文を出してきているし、Adobe InDesignというのを購入すると、基本的には、KozMinStd-Medium、小塚明朝の太いやつとか、中くらいのやつとか、細いやつとか、一通り使えるものはインストールされるようになっています。
 ということで考えますと、このOpenTypeが本格的に普及することで、従来Macintoshでなければいけないということは回避されてきます。
 ちなみに、OpenTypeというのは、例えばこれはKozMinStd-Medium、AdobeのほうでついてくるPostScript、アウトラインのOpenTypeです。OpenTypeというのは基本的にはこう考えていただければいい。MacintoshでもWindowsでも利用できるアウトラインフォントであります。基本的にはそのフォントを使ってプリンター出力から画面出力から高解像の出力までできるようになります。したがって、Open Typeを使えば、Macintoshだ、Windows だ、関係なしにフォント出力が保証されるはずです、ということです。
 「はずです」というのは、完全にすべてのものを従来のMacintosh DTPと同じように使っているわけではない。まだ事例が少ないので、建前ではそうなっていますし、我々の経験値からいっても、その範囲内での問題は起こっておりません。そういうフォントです。したがって、従来からあるいわゆるPostScriptだとか、TrueTypeだの、MacintoshでTrueTypeを使ってはいけないどうのという話はもうないです。
 そういうふうな形で動いていくことが考えられます。そういうふうにご理解いただいた上で、図2のWindows ベースのDTPシステムを見ていきたいと思います。

図2 WindowsベースのDTPシステム
WindowsベースのDTPシステム

 まずWindows側でDTPを考えるときに決めていただかなければいけないのは、一つには、レイアウトソフトです。どういうものを中核にして、そこからどう出力をしていこうかという話にしています。
図2の左側にQuarkXPressとEDCOLORとFrameMakerを置きました。FrameMakerなんて使うのかという話があると思いますが、あとでXMLの話のときにこの話をしていきますので、とりあえずここに置いておいてください。
 それとInDesignというソフトと二つに分けました。
なぜ分けたかといえば、現状では、左側のグループ(QuarkXPress、EDCOLOR、Adobe FrameMaker)は、従来のDTPの流れを組むフローをとります。したがって、文字データはテキスト。最近はワードのデータが入ったり少しはするようになってきました。しかし、基本的には従来のDTPのような形での入力フローをとります。したがって、Illustratorなんかでつくったデータは、やはりEPSになるし、Photoshop からつくったデータはEPSのほうがいいですよ、というような流れになります。たぶんこちら(QuarkXPress、EDCOLOR、Adobe Frame Maker) を決めると、ある程度外側で周辺のソフトが決まっていくのかなという考え方をしてもいいと思います。
 IllustratorとかPhotoshopがあれば、いろいろなデータの吸収ができます。例えばWindows のほうで使えるDrawデータというのがあります。Drawデータをつくるソフトというのは、Windowsでは、標準では添付されないです。
 標準で添付されないというのはどういうことかといえば、Windowsを買えば必ずついてくるプログラムがあります。それがアクセサリーのなかに入っている、一つはワードパッド、それからメモ帳。これは場合によると、MSワードを買わなくても、ワードパッドがあれば、文章はできる。メモ帳で文章というのはきついところがあるが、入れないことはない。
 それから画像に関しては、いわゆるMS-PaintとImaging。Imagingはあまり画素をどうのこうのではないですが、少なくともこういうソフトはついてくる。でも、いわゆるベクトルグラフィクスのソフトはついてこない。だからこれは買わなければならない。使えるソフトというのは実はそんなにない。
 Corel Drawというのがあります。これは今どうなっているのか、まだつぶれていないのかとか、いろいろなうわさがあるので私もわからないのですが、一つは Corel Drawというソフトがある。これも比較的高級のものです。それからもうちょっと安いソフトだと、Windows Drawとか、何種類かのベクトル系のグラフィックソフトがあります。こういうソフトを使って図版をつくることもできるようになっています。
 その場合、こういうもの(Corel Draw・Windows Draw) つくった場合でも、例えばIllustratorがあれば、こういうデータを吸収することができます。ですので、Illustratorがあれば、少なくともDTPのレイアウトソフトに結び付けていくことができます。吸収できるというのは、具体的には何かちょっと起こせばいいのでしょうけれども、マイクログラフィック、これはCorelは入れていないので、Windows DrawというDrawソフトをちょっとあげてみます。これはとても安いソフトです。私はたしかワゴンセールで3,000円で買ったのです。そのあとでちょっとバージョンアップをしたのです。
 これは、基本的にはIllustratorほどうるさそうな気はしないでしょう。できることは、Illustratorと結構似ている。例えば線を描くのだったら、見てのとおり、ベジェスプラインという曲線で描けます。そしてくっつけて完了します。必要があればこういうポイントを引っ張りだし、コントロールを考えて色を変えたりできます。慣れてくると、この上で、Illustrator なんかいらないで、数千円でベクトルグラフィックスは描けます。
 では、出来上がったデータはどうすればいいのでしょうかというのですが、「名前をつけて保存」のところで、いわゆるDrawデータではなくて、Illustratorデータ。IllustratorのEPSもAIも両方はき出せますし、場合によって画像にするので、PSD、要するにPhotoshopデータにすることもできる。そういうようなやり方ができますし、これは Corelでも似たような形ができますし、入力のほうで何を使っていただいても、基本的にはIllustratorがあれば大して困らない。そういうようなことはこんなものを見ていただいてもおわかりにいただけるかなと思っています。
 すでにAdobe Illustratorというのは、Macintoshの世界でもそうですしWindowsの世界でもそうですが、かなり代表的なソフトだし、ごく一般的なソフトになってしまっておりますので、こういう対応になっています。したがって、少なくともWindows版のIllustratorを置いていけば、その他のさまざまなソフトのデータを取り込み、それを印刷用データに加工することはできます。
 この絵でも、もちろんいろいろある程度処理をしなければいけません。 Corel DrawにしてもWindows Drawにしても、他のDrawデータにしても、必ずしも印刷用のCMYKのデータになっているわけではなくて、基本的に全部RGB ですから、特色データになってしまうわけですから。その場合は、Illustratorデータ側で基本的な色指定をやり直す。若干そういうことは必要になりますが、そんな形で処理していくことができます。したがって、Illustratorがあれば何とかなるということになるでしょう。
 同様のことがPhotoshopにもいえます。画像処理ソフトというのは、Windowsの世界は非常に膨大に存在します。ここには「MS-Paint Imaging」と書いてあって、「etc.」というのは非常にたくさんあります。いろいろなところで出ているパソコン雑誌で、最近はだいたいCD-ROMがついてきて、そのなかにいろいろなツールが入っていて、そのなかに画像処理ソフトがものすごくたくさん入っています。そういうものを使ってしまう方もやはりいるのです。いるのですが、画像のデータ形式というのはそんなに膨大にあるわけではないものですから、ほとんどのものはPhotoshopが対応できるので、どういう形でデータをつくったとしても、Photoshopがあればとりあえず困らないという形になります。


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