日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー[U]
 「印刷品質維持・管理手法について」

  講師 知識 三富
 氏
その1
東洋インキ製造株式会社 オフセット技術部

2006年1月10日 


 ただいまご紹介いただきました東洋インキ製造(株)オフセット技術・技術サービス課の知識です。
 よろしくお願いいたします。
本日は多数ご来場いただきましてありがとうございます。今日は実際私がお客さまの所にお邪魔し生産性向上・品質安定化への業務改善を実施し足で稼いだ生の情報を私なりにまとめました内容にて来られた方々にお土産として工場に持ち帰られ、お役に立てていただける資料を作成いたしました。プレス中心に数値管理できないと思われがちですが、試行錯誤を繰り返し実施して行く中、成功事例が数多有り具体的実務改善に結びつく内容に仕組みを考案しました。この様な考え方・手法にて印刷コア技術が確立できる体系に活用されれば幸いです。では、さっそく始めさせていただきます。
 
 現在、印刷業界の経営環境は非常に厳しい状況です。本格的なサバイバルの時代の到来。一層の企業努力、生産コストや品質、納期、環境への取り組みなど、技術的な対応が必要になってきている現状ではないかと思います。さらに需要は、連続印刷を中心とする一般フォームの印刷量が伸び悩んでいる現状下です。

 
 
 この状況のなかで「いかに生き抜くか」という事で、明確な経営戦略と生産戦略がかなり重要になってきているのが今般と思います。
 「自社の風土づくり」が特に重要であます。全ての面で品質、納期、コストが、顧客から選ばれ、認められることが重要です。そのなかで競争力のある技術企業への構築が一様に迫られてくるのではないかと思います。
 
 
 

 競争力のある企業としては、利益追及型の技術企業への展開という事です。
 まず1番目に「高付加価値化への印刷技術基盤の構築」。高付加価値とは、印刷技術土台の構築。細かくいいますと、印刷の基礎技術、応用技術、それらの蓄積した情報の共有化。これはプロの方々のお集まりの中で、この様な話をするのも何ですが、やはり基礎技術というのは印刷会社さんに取っては非常に重要かと思います。
 2番目に「生産技術力・管理技術の構築」 やはり印刷物というのは工業製品であり、統一した基準に基づくトータルの管理が必要ではないかと思います。
  3番目に「実務担当者の意識改革」 物を作る側の実務担当者のプロ意識が技術の深度を深め日常業務遂行

 
  や長期経営資源確保の人材育成が必要です。
 4番目に「利益の追及と確保」 特化技術、競争力体制の構築、運営の仕組みづくり、この様な事が総合的に利益追求型の技術企業への展開に必要と思います。
 本格的サバイバル時期に入り今を生き抜く為に一層の企業努力、体質改善が現在、急がれるのではないでしょうか?
 
 
 

 印刷技術の土台は、印刷品質管理や標準化への具体的手法が必要になります。
 つまり、明確で具体的な印刷品質の維持と管理手法を持ち、自社の印刷物について製造基準と出荷基準を一環した数値による管理を実施し品質、コスト、納期の三要素が重要です。
 ここに「生産性」とありますが、印刷のプレスまわりは長年培われた感覚を頼りとし、数値で表せないプロ意識や経験があり個人のマンパワーがこの生産性に大きく影響しています。
 人間の集団ですので失敗はないとは言い切れません。社損事故により、本来利益として得られる数字が確保出来ない事は経営に大きく影響する重要な事です。

 
   印刷物製造における共通した認識と統一した情報管理が必要です。  
 
 

 具体的数値管理とは、現状はどうなっているのか?まず現状把握。それは、管理手法、製造基準、社損事故の現状がどうであるか。特にムリ・ムダ・ムラ、あらゆるバラツキがどう出るか。それからミス・ロス・クレームの品質の不安定はどうであるか。「管理すると見えてくる」というキーワードで、問題と利益との関係をもう一度見直さなければなりません。
 社内の運営管理の盲点はどこにあるか? 自社の社損事故の詳細の把握、営業、製版、印刷、加工、各部署で問題と事故の把握。この状況を確実に把握しなければなりません。
 またその件数や金額、発生理由、そこに歯止めをかける再発防止策やルールも大きな要素ではないでしょうか

 
  この様に詳細把握を実施すると印刷部署の事故発生率が高い傾向が見えてきます。ユーザ様との信頼関係が出き状況把握調査させていただくと、この様な隠れた所に品質問題や管理の盲点が有り会社全体的に利益が出せない問題が潜んでいるのではないか。やはりこういった詳細な把握を徹底していく必要があり今回の資料作成致しました。  
 
 

 表示したデータは、あるユーザー様の社損事故の部署別の統計です。
 全体的な各部署の比率からみると印刷部門は全体の約3分の1、仕上げが2番目、DTP(製版)、それから営業、工場生管、出力、刷版の順序になります。社全体で現状がどうであるかが重要です。
 またこの比率も、社内での影響力や力関係もあり、正確な件数・金額の現状。要するに部署で起きた所の枠組みをしっかり把握しデータ収集と管理がポイントです。


 
 

 「プレス部門と問題の詳細」として、印刷機を複数台保有する印刷会社さんで、問題発生の特徴は人に関わるスキルの問題です。年代の若い方々・熟練の年配者のプロ意識が高い方等、社員の構成によって、この比率も内容も変わってきますが、一つの事例として。印刷事故で地汚れ、色むら、ゴースト、濃度不足、ヒッキー等、UV特有とか、油性特有のいろいろなトラブルが出てきています。それには何らかの原因があります。
 例えば、間違った手順や作業を日常管理として行っていたり、諸先輩方からの指導で何も疑問視しないまま、言われてそのままやったとか、水回りの環境が悪いのにルールに違反してそのまま刷っていたとか、事故が起きてから対応しているのが現状ではないでしょうか。
 これらの状況を含め印刷機種別・ライン別の事故詳細データ収集が管理ポイントです。

 
 

 印刷部門の問題の詳細把握として印刷オペレーターもしくは管理者に対してアンケートを採らせていただいております。意識調査としてのA社資料です。
 「よく発生している印刷トラブルは何ですか」の内容で、1〜4が、ローラー剥げ、地汚れ、乳化、ゴーストです。この傾向をみまして私どもは何を予測するかというと、これは水まわりの原因による調整不良だ、と判断いたします。

 
 
 今度はB社です。同じような形で「現在よく発生する印刷トラブルは?」の内容で、やはり地汚れが出ています。乳化も出ています。水棒絡み、ゴースト、壺逃げ。これもいろいろな問題が出てきています。これもオペレーションに関する印刷条件の不備による問題発生と予測されます。
 問題解決の為の状況把握は実務担当者の生の声を聞く事が重要です。
 
  (次号へつづく)  



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