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 日本フォーム印刷工業連合会 業務委員会主催
       平成21年度 第3回講演会 (平成21年8月27日開催)
     
「感動を呼ぶサービスの真髄」  
       CS.ホスピタリテイ総合プロデューサー 
       株式会社HAYASHIDA-CS総研 代表取締役 林田 正光 氏
 このあいさつがなぜ重要か、あいさつが人にいかに好印象を与えるか、そして品格をつくるか。その一人ひとりの品格は、ホテルの品格もつくっていくのです。私たちは、そういうふうにして丁寧なあいさつからスタートいたします。
 しかし、たかが2、3秒のあいさつすらできない毎日が、理屈はわかれどが続く。3、4カ月かかりました。それでも私の目で見たら3分の2です。しかし、3分の2の人たちが丁寧なあいさつをし始めると、その残りの3分の1の人たちは、やらざるを得ない職場風土になっていきます。
 まさに戦略的に職場風土をそうやって一つひとつ変えていきました。私は、職場風土というのは自然にできるものだ考えていましたが、私たちは改めてそうやって、あいさつから雰囲気をどうつくっていくか考えました。
 しかし いよいよそうやって出来上がった600人の社員はみんな価値観が違います。いろいろなホテルから、外国から、異業種から来るその人たちの心を一つにするためには、どうすればよいか。そこがリッツ・カールトンのノウハウです。
 ここに1枚のクレドカードがあります。「クレド(credo)」というのは、ラテン語で「信条」「志」という意味です。この1枚のクレドカードに基づいて、みんながいかに価値観を共有する仕組みをつくり、意識改革をさせるか。これは正直いって至難の技です。
 この1ページ目には、お客さまへの約束事が書いてあります。「CS(Customer Satisfaction /顧客満足度)」の部分です。そして2ページ目には、その「CS」を高めるためには絶対条件として「ES(Employee Satisfaction /従業員満足度)」が必要です。従業員一人ひとりが心から喜びと誇りを感じ、そして将来に夢と希望を持って働けるような職場環境をつくらないかぎりは、CSなんかありえません。
 そんな位置づけのなかで、経営陣から従業員への約束ということがここに書いてあります。
 従業員満足というのは、当然、経済的な満足であり精神的な満足であります。経済的な満足は、これは釈迦に説法です。売上を上げ、利益を確保する。そして私たちはまず最初に、精神的にお互いが心から信頼し合い、尊敬し合い、愛し合えるような信頼の職場をどうつくるか。そこからスタートし、そういう位置づけのなかで仕事をスタートしました。3ページ目には「モットー」があります。
 “We Are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen”「紳士・淑女をおもてなす私たちも紳士淑女であれ」。
 モットーも含めて、このクレドカードは、今から約50年前にリッツ・カールトンがアメリカに初めて産声をあげたとき、そのとき経営幹部が集まって、そのころは残念ながらホテルの社員は社会的な地位が低うございました。召使です。ボーイだ、ウエイトレスだ、コックだ、バーテンダー、ドアマンだ、お客さまから信頼もされない、尊敬もされない、愛されることもない、そんな状況のなかで心からのおもてなしができますか。
 お客さまから信頼され、尊敬され、愛される社員になるためには、まず我々社員が紳士・淑女としての要件を整え、そして心からのおもてなしをする。そういう位置づけのなかに経営陣がその「モットー」をつくったのです。
 そして経済的な満足を勝ち取るために私たちは座談会をやりました。そして我々の権利を主張する前に、我々の義務は何だろうか。我々の義務は、経営陣が売上を上げるんですか。幹部が売上を上げるんですか。それは「ノー」でした。
 我々社員がチームとして、部署を超えてお互いが協力し合って、そして一つになってお客さまを心から大切にし、リピーターをつくり、売上を上げていく。それが我々の最大の義務ではないでしょうか。
 みんなが理解してくれました。併せて売上を上げ、利益を上げ、正々堂々と権利は主張していこう、それまで義務は、我々はみんなで辛抱して頑張って働き、果たそう。そんな気持ちはみんなに伝わっていきました。精神的にも信頼をつくっていこう、そして義務を果たしていこう、そういうふうにしてスタートするのです。

 そしていよいよ紳士・淑女の勉強会で部署ごとに座談会をしてくれました。人間として、社会人としてのあるべき姿、ありたい姿、何十項目も出ていました。私たちは、ありふれた一つひとつの言葉を胸に手をあてて考えたとき、本当に自分が紳士・淑女としての行動をとっているだろうか。誠実な人、陰ひなたがない、裏表がない、実直に、まっすぐに、いつも笑顔が素敵な人、そして清潔感をもって、いつも品格のある服装をしている、感性を持っている、思いやりの心を持っている、感謝の心でいつも心から「ありがとう」といえる社員、何十項目と出てきました。
 改めて胸を手をあてて考えてくれました。本当に自分が、理屈はわかれど、そのとおり行動できているだろうか、そんな思いをもってお客さまに接しているだろうか、社員に接しているだろうか、業者さまに接しているだろうか、そういう気持ちをみんなが抱いてくれました。しかし、自分の行動ができていない現実を改めてみんなが知りました。
 そしてこのように指導していったのです。
 「リッツ・カールトン・マンとしてのあるべき姿、ありたい姿を徹底的にイメージしてください。外見面はどうだろうか、品格のある服装しているだろうか、清潔感があるだろうか、センスのある服装をしているだろうか、あいさつをしているだろうか、内面的に、今申しましたように、多くの要件をホテルマンとしての最高のあるべき姿を整えているだろうか、イメージをしてください、そして、それをノートでもいいから、忘れないように書きましょう」。
 みんな書いてくれて、そしてそれをまた意識させました。そういうことを意識して、次は、「いよいよ日常のなかで実践行動してください。その実践行動は習慣化してください」。
 それからあっという間に1年半、2年過ぎたような気がいたします。まさに「継続は力なり」。ありふれたそういうことを、理屈はわかれど変わらない姿も、1年半くらい見させていただいたとき、私の目でみたら、やはり3分の2くらいはそれに近い行動をするようになってくれるのです。そうすると、また戦略的に一つの風土ができてきます。3分の2の人たちがそういう気持ちになったとき、あとの3分の1の人たちもまたやらざるをえない。
 やらなかったら、次は、厳しい言葉ですが「どこか別の職場を探されたほうがいいですよ」と。そこまで私たちは徹底して、みんなの意識改革、行動改革をしていきました。それでも2年半か3年半くらいかかりました。
 それだけ人は変わらない。私もそのときもう53歳くらいでしたでしょうか。それから私はまた2年くらいかかったような気がします。

 いよいよ紳士・淑女の社会人としての風土が出来上がってくる。ゼネラルマネジャーは、46歳のアメリカ人です。彼は、日本に来たこともありません。そして日本の文化もわかりません。しかし、すばらしいリーダーでした。
 この1枚のクレドカードを持ってきました。クレドカードは印刷され、そのときは英文でした。そして彼は、600人の社員を束ねていくためにどういう戦略をとったか。このクレドの精神を末端の社員にまで伝えるために、彼はすばらしいリーダーシップ、扇の要になったのです。
 このクレドを推進するためにクレドの伝道師を育てました。「CS」のトレーナーです。一つひとつの部署に、小さな部署は1〜2人、大きな部署は5〜6人、そうやって「CS」のトレーナー、伝道師を育てて、その伝道師たちがまた一生懸命勉強してくれました。
 プロジェクトをつくりました。朝の6時に来て、パンと牛乳を飲みながら頑張ってくれることもありました。仕事が終わって、夜10時くらいから電車のあるまで頑張ろう、そんなプロジェクトもありました。
 そうやってクレドの理解テストをやったり、暗記テストをやったり、朝礼の次第がアメリカの本部から毎月流れてきます。「来週の月曜日は、クレドのベーシックの何番をリーダーは指導してください」「あなたの部署で、クレドの何番に沿った行動してお客さまからお喜びいただいた、お褒めいただいたことを大いにPRしてもらってください。PRしてお喜びいただいたことをお互いに共有しましょう」、そういういろいろな策を練りながら、このクレドカードは徐々に浸透していく姿をみました。
 そしてみんな暗記テストされます。私は、ある日、ゼネラルマネジャーから呼び出しを受けました。「ミスター・ハヤシダ、君は、このクレドカードをどのように実践していますか。ほかにどのように指導していますか」。
 なぜ呼ばれたか。その原因は、1枚のクレドカード。サービス業ですから、そんな難しいことは書いてありません。1回読めば「わかった、わかった」で、つい机の引き出しに入れっ放しです。
 そんな状況だったものですから、呼び出しを受け、「ミスター・ハヤシダ、君はこのクレドを理解しているとは思わないんだけど」、そんなことを言われながら「この1ページ目のお客さまへの約束事を3分の1でいいから読んでくれないか」。
 私は読み上げました。「リッツ・カールトン・ホテルは、お客さまへ心のこもったおもてなしと快適さを提供することが最も大切な使命です」と書いてあります。
 もう皆さんご存じのとおり、読めば「わかった、わかった」で、ポケットに、名刺入れに入れてしまうという状況です。
 彼は私に突っ込んできたんです。「ミスター・ハヤシダ、『心のこもったおもてなし』と書いてあるけれども、君は具体的に心のこもったおもてなしをどのようにお客さまに提供していますか。どのようにお客さまに心がけて接していますか。具体的な例を2、3話してくれないか」といわれたとき、私は動揺しました。即、具体的にどのように心のこもったおもてなしをしているか、申し上げられなかったのです。
 また突っ込んできたんです。「『快適さを提供することが最も大切な使命です』と書いてあるけれども、快適さとは何ですか」。
 ホテルは、一般的な公の部分は24℃くらいが標準だとされています。ですから、そんな話をしましたら、「君の言うとおり、24℃、ホテルの標準だ。でも、それだけじゃないよ」。
 そんな話のなかから、「それじゃ、君にとってはこのクレドカードは紙切れに等しいね。それじゃ、部下にも指導できないね。自らも実践できないね」。
 そのとき、彼はにっこり笑って、「ミスター・ハヤシダ、心からのおもてなし、ドアマンの話をするので、聞いてくれないか」と、ドアマンの話をしてくれたのです。

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